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リハビリ評価

階段・段差昇降の動作観察と分析。理学療法士なら患者さんに合った方法を提案するべき!

投稿日:2017年5月12日 更新日:

入院している患者さんや施設へ入所している利用者さんでは、階段や段差昇降はほとんど必要ないかもしれませんが、自宅に退院する患者さんには必要になるケースが多いかと思います。

昔ながらの日本家屋の場合は、玄関に数十センチの段差があったりもして、自宅に帰る際そこで難渋してしまうことをよく経験します。

自宅に退院してもらうことが理想の中で、理学療法士でも階段や段差昇降のリハビリについて考える機会が少ないのではないかと思います。

そこで今回は、階段・段差昇降の動作観察・分析のポイントを解説します。

また、僕の経験から患者さんに合った昇降手段を提案したいと思います。

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階段・段差昇降の特徴。動作観察と分析(相分けについて)

階段昇降の特徴

階段や段差昇降は、移動のための手段であり、皆が必ずしも必要というわけではありません。

エレベーターや昇降機を使って昇降すれば良い場合もあります。

しかし、そういった環境が整備されているところばかりではありません。

特に屋外での活動範囲を広げていくには、自ら階段や段差を昇降できるほうが良いです。

通常であれば階段に対して正面を向いて昇降します。

それが難しなら手すりを持って、後ろ向きや横向きで進んでもいいわけで、昇降動作のバリエーションは様々です。

動作観察と分析(相分けについて)

階段・段差昇降には、決まった相分けというのもありません。

なので、それぞれ3つの相に分けて観察と分析をしていきます。

昇段の相分け

Ⅰ相:一側足を床から離し、段に足を乗せる区間

Ⅱ相:一側足が段に乗り、反対足が床から離れる区間

Ⅲ相:反対足も段に乗る、又は段を通過するまでの区間

Ⅰ相:一側足を床から離し、段に足を乗せる区間

まず、段に片足を乗せていくわけですが、このとき支持している足の荷重は後方へ移動する場合とそうでない場合とがあります。

これは持ち上げた側の股関節が余裕をもって屈曲できているかどうかにかかっています。

十分に股関節が屈曲できているなら支持側の荷重位置は変化しませんが、十分に屈曲できていない場合には骨盤を後傾させ、重心を一度後方へ移動させる必要があります。また、段の高さが高い場合も後方重心になります。

そして、持ち上げた側の足関節は底屈した後、段に引っかからないようにすぐに背屈を始めます。

Ⅱ相:一側足が段に乗り、反対足が床から離れる区間

支持していた足が床から離れ、段乗っている下肢で体重を支えます。

このとき必要な機能としては、下腿部の固定と協調的な股関節・膝関節の伸展です。

下腿部は、前脛骨筋とヒラメ筋の同時収縮により固定されます。

そして、身体を持ち上げる際に強力に作用するのが大殿筋(股関節を伸展)や大腿四頭筋(膝関節を伸展)です。

Ⅲ相:反対足も段に乗る、又は段を通過するまでの区間

段差昇段としての動作は終了していますが、階段であれば再び反対下肢を段に乗せる必要がありますので、身体重心を前方へ移動させていきます。

降段の相分け

Ⅰ相:一側足を段から降ろす区間

Ⅱ相:降ろした足が下段に接地する区間

Ⅲ相:反対足も段から降ろす、又は下段を通過するまでの区間

Ⅰ相:一側足を段から降ろす区間

このとき、股関節伸展筋の活動はそれほど認めておらず、わずかに筋活動がみられる程度です。

段に残っている下肢は大腿四頭筋の遠心性収縮で膝関節をゆっくり曲げていきます。同時にヒラメ筋が働き下腿の前傾(足関節の背屈)を制動しながら重心を下降させていきます。

重心はやや後方に残しつつ、一側足を降ろしていき、足が下段に接地する手前で少し前方重心になります。

上記筋群の活動で身体にブレーキをかけることで、前後・下方への重心移動をコントロールしています。この重心移動ができないと、足が下段に接地した瞬間に後方へ転倒しそうになります。

Ⅱ相:降ろした足が下段に接地する区間

降ろした足は、多くの場合爪先から接地します。

降ろした足は、下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)や前脛骨筋が働き、前後の重心位置をコントロールしながら、残っている足を降ろす準備をします。

Ⅲ相:反対足も段から降ろす、又は下段を通過するまでの区間

降段動作は終了し、下段に反対足を降ろす場合はⅠ相からの動作を繰り返します。

一側下肢に障害がある場合は「行きは良い良い、帰りは怖い」が基本

何も考えずにスタスタ階段を昇り降りできればよいですが、脳卒中の片麻痺や骨折などで片脚に何かしらの障害を持ってしまった場合は、一段ずつ昇降したほうが安全です。

これを二足一段の昇降といいます。

そのときによく言われているのが、「行きは良い良い、帰りは怖い」です。

要するに・・・

昇り → 良い方の足を先行

降り   →   悪い方の足を先行

にすると良いということです。

 

なぜこの順番が良いのかですが、昇段のときには段に乗せた下肢で強く踏ん張り身体を持ち上げ、降段のときは段に残している下肢で踏ん張りながらゆっくり身体を下降させていきます。

つまり、段に乗っている下肢のほうがより負担がかかるのです。

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脳卒中片麻痺患者さんには、いろんな昇降パターンが考えられる

「行きは良い良い、帰りは怖い」の昇降パターンの適応は、

・片足の力が弱い

・痛みがある

などで、できるだけ負担をかけたくない場合に限ります。

 

しかし、脳卒中片麻痺で運動麻痺がある場合には、必ずしもこの方法がやりやすいというわけではないです。

運動麻痺とは、筋力がある・ないに関わらず、筋緊張をうまくコントロールできないのが問題になっているのです。

昇段時に麻痺しているが下肢を後方に残していると、下肢が突っ張ってしまい、その後麻痺側下肢が上がりにくくなります。

もし、患者さんが股関節を屈曲することができ、先行した麻痺側でも十分に身体を持ち上げることができるのであれば、悪い方(麻痺している下肢)を先行するほうがやりやすいです。

 

また、降段でも麻痺側から降ろしたほうが良い場合もあります。

麻痺している足を先に降ろすと、足を空中保持しなければいけません。

下図のように、運動麻痺の患者さんでよくみられるのが、股関節の内転筋を強く活動させてしまい、足が内側に入ってしまうことがよくあります。

麻痺側下肢が内転してしまう

それだと足が着地したとしても、身体より内側に足があるので支えが効かなくなります。

ですので、麻痺している足で支えて、良い足を先に降ろしたほうがやりやすいです。

重度の片麻痺でも階段・段差昇降はできる。その方法は?

重度の片麻痺でも、非麻痺側下肢や体幹の筋力がしっかりしていれば、階段・段差昇降はできます。

片麻痺の場合、下肢は抗重力伸展活動で足が突っ張りやすい分、「行きは良い良い」のパターンで昇段は比較的楽にできます。

重度の運動麻痺では、下肢を屈曲するほうが苦手なことが多いです。そのため、麻痺側下肢を曲げて足を降ろすというのが難しくなります。

無理に麻痺側下肢に力を入れて降ろそうとすると、前述したように股関節が内転してしまいます。

後ろ向きで降段はすると良い

移動方向とは逆を向き、後ろ向きになって降りていくとやりやすいです。

手すりを持ち、身体を少し前傾させ、麻痺側下肢を後ろにゆっくり降ろしていきます。

足が接地すれば、非麻痺側も降ろしていきます。

重度の麻痺では、玄関の上がり框に苦渋することが多いと思います。

なので・・・

昇段 → 前向きで

降段 → 後ろ向きで

そうすると、手すりを設置する際にも片側だけで済みます。

自宅に帰ることを想定してリハビリをしている場合は、いろんなパターンで試してみてその患者さんがやりやすい方法を提案してみてはどうでしょうか。

高齢者の多くは降段が苦手。リハビリ方法は?

筋力低下やバランス能力が低下している高齢者の場合、昇段よりも降段を苦手としていることが多いです。

そのため、一側下肢を降ろしていく際に恐怖心で後方へ転倒しそうになる人もいます。

まず筋力をつけていくことは大前提にしていかないといけません。

降段の練習としては、低い段差から開始します。

そして、前述した動作観察・分析のポイントを意識し、問題となる相の前後・下方方向の姿勢制御を学習していくように進めていきます。

まとめ

教科書的にも一般的にも「行きは良い良い、帰りは怖い」のパターンを教えらますが、今回のように別の手段のほうがやりやすい場合もあります。

実際には、教科書にのってないようなイレギュラーなことばかりですので、患者さん一人一人に合った方法を提案していきましょう。

 

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