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リハビリ評価

リハビリでみる歩行動作の観察と分析。理学療法士は何を評価しているのか?

投稿日:2017年5月10日 更新日:

歩行動作は、リハビリを行う上で患者さんのニーズは非常に高く「歩けるようになるため」にリハビリをしている患者さんはとても多いです。

歩行動作は、左右下肢の連続動作であることや多様性に富んだ動作であるため、理学療法士などの専門家でも歩行観察や分析は難しく感じることがあります。

そこで、今回は歩行動作の観察と分析ポイントをわかりやすく解説していきます。

 

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エネルギー効率の良い歩行とは?

歩行を単純化すると、下図のように倒立振り子運動に例えることができます。

倒立振り子運動

床に接地している支点を中心に、上部にある重りが前方へ回転することでエネルギー効率の良い歩行を可能にしています。

棒が垂直位になった位置が最も位置エネルギーが高く、重りを前方に傾けると運動エネルギーに変換され、前方への推進力が生まれます。

歩行では、再び一側下肢が床に接地することで、加速していた身体にブレーキをかけ、運動エネルギーを位置エネルギーに効率良く変換しています。

歩行動作の特徴

歩行動作は個人の特徴がよくでますが、健常人が用いる歩行には高い類似性があります。

歩行は、左右下肢が対称的な交互運動を周期的に繰り返しているのが特徴です。

 

歩行動作を大きく分けると、以下の2相から成り立っています。

・足部が接地している立脚相

・足部が床から離れている遊脚相

に分けられます。

 

一連の歩行動作を1周期とすると、立脚相は60%遊脚相は40%を占めています。

また、両足が接地していることを両脚支持期といい、この時間は20%(左右下肢接地が10%ずつ)あります。

歩行周期について

ランチョ・ロス・アミーゴ方式の歩行周期がわかりすいので、以下に立脚相と遊脚相の相分けを解説します。

立脚相

立脚相は5つに細区分されます。

初期接地(Initial  Contact)

引用画像)

初期接地は踵が接地した瞬間を指しています。

初期接地の役割、足関節背屈による関節の「締りの位置」をつくることで下肢の剛性を高め、接地後の衝撃に備えています。

運動方向 筋活動
骨盤 前方回旋5°、前後傾中間位
股関節 屈曲20~30° 伸筋群
膝関節 屈曲0~5° 大腿四頭筋(大腿直筋以外)
足関節 底背屈0° 前脛骨筋、足趾伸筋群

荷重応答期(Loding  Response)

引用画像)

荷重応答期は、大腿四頭筋の働きで加速した身体にブレーキをかける役割があり、膝関節は少し屈曲しています(Double  Knee  Actionという)。

また、前脛骨筋の遠心性に働きにより踵を中心に下腿をゆっくり前傾させ、身体重心を前方へ滑らかに回転させています。

運動方向 筋活動
骨盤 前方回旋5°、前傾5°
股関節 屈曲20~30° 伸筋群、外転筋群
膝関節 屈曲15~20° 大腿四頭筋(大腿力筋以外)
足関節 底屈5° 後脛骨筋、前脛骨筋

立脚中期(Mid  Stance)

引用画像)

反対下肢は地面から離れ、一側支持のみの区間を指しています。

身体重心は頂点に達し、支持している下肢の安定性が求められます。

足関節を中心にさらに下腿を前傾させ、身体重心は前方への回転を続けます。

このとき、中殿筋が働き骨盤の側方動揺を抑制しています。

運動方向 筋活動
骨盤 回旋0°、前傾10°
股関節 屈伸中間位 外転筋群
膝関節 屈曲5° 早期のみ伸筋群が活動
足関節 背屈5° 底屈筋群、後脛骨筋、足趾屈筋群、腓骨筋群

立脚後期(Terminal  Stance)

引用画像)

支持している下肢の踵が離れる瞬間を指しています。

下腿三頭筋(膝が曲がり出せば主にヒラメ金の働き)や足趾屈筋群により足関節・足趾の背屈が制動させ、中足趾節関節を軸に身体の前方回転を続けます。

運動方向 筋活動
骨盤 後方回旋5°、前傾5°
股関節 伸展20°
膝関節 屈曲5°
足関節 背屈10° 底屈筋群、後脛骨筋、足趾屈筋群、腓骨筋群

前遊脚期(Pre Swing)

引用画像)

支持している爪先が床から離れる瞬間を指しています。

荷重はほぼ反対下肢に移動し、振り出しのための準備を始めています。

遊脚前期の役割は、荷重位からのスムーズな振り出しと反対側への体重の受け渡しであります。

運動方向 筋活動
骨盤 後方回旋5°、前傾5~10°
股関節 伸展10° 内転筋群
膝関節 屈曲40°
足関節 底屈15° 足趾屈筋群

遊脚相

遊脚相は3つに細区分されます。

遊脚初期(Initial  Swing)

引用画像)

爪先が床から離れた瞬間を指しています。

遊脚初期をスムーズに実現させるためには、立脚後期でしっかりと股関節を伸展させることです。このことで腸腰筋が伸張され、その張力で股関節を少ない筋活動で屈曲させることができます。

足関節は前脛骨筋の働きで背屈を保持し、遊脚中は常に前脛骨筋が活動している状態になります。

運動方向 筋活動
骨盤 後方回旋5°、前傾10°
股関節 伸展15° 屈筋群
膝関節 屈曲60° 屈筋群
足関節 底背屈0° 前脛骨筋

遊脚中期(Mid  Swing)

引用画像)

両下肢が交差し、下腿が床と垂直位になった時点を指しています。

股関節屈筋群は最初だけ働き、膝関節は受動的に伸展していきます。

遊脚中期の役割は、下肢を前方へ運ぶことと足と床の距離(クリアランス)を確保することです。

運動方向 筋活動
骨盤 前傾10°
股関節 屈曲25° 最初だけ屈筋群
膝関節 屈曲25° この相の終わりにハムストリングス
足関節 底背屈0° 前脛骨筋

遊脚後期(Terminal  Swing)

引用画像)

遊脚中期から踵が床に接地するまでを指しています。

この区間では、立脚の準備をするためにハムストリングスと大腿四頭筋の同時収縮により徐々に膝を伸ばしていきます。

運動方向 筋活動
骨盤 前方回旋5°、前傾10°
股関節 屈曲20~30°
膝関節 0~屈曲5° ハムストリングス、大腿四頭筋
足関節 底背屈0° 前脛骨筋

ロッカーファンクション「揺りてこ」の原理

歩行時は、足底で作られた支点を中心に身体が前方へ回転することで、滑らかな前方への推進力が生まれます。

正常歩行では、踵、足関節、中指趾節関節の3つの回転軸で歩行をスムーズなものにしています。

Perryにより、これらをヒールロッカー(heel  rocker)、アンクルロッカー(ankle  rocker)、フォアフットロッカー(forefoot  rocker)と名づけられています。

ロッカーファンクションがあることで、前述した倒立振り子運動を可能にエネルギー効率の良い歩行を実現しています。

ヒールロッカー(heel  rocker)

初期接地から荷重応答期にあたり、踵を中心に下腿が前方へ回転していきます。

このとき前脛骨筋により急激な底屈を抑制しながら下腿が前傾していきます。

アンクルロッカー(ankle  rocker)

足関節を中心に前方への回転を続けます。

立脚中期から立脚後期にあたり、このとき膝関節は軽度屈曲しているため、下腿三頭筋のうちのヒラメ筋が強く働くことで過度な下腿の前傾(足関節の背屈)を抑制しています。

フォアフットロッカー(forefoot  rocker)

立脚後期の蹴り出しに相当し、中足趾節関節を中心に身体の前方回転を続けます。

下腿三頭筋のうち、腓腹筋が強力に働き踵を持ち上げています。

また、足趾屈筋群が働くことで、左右どの方向へも身体の向きを変えることができます。

 

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歩行観察や分析が難しく感じる理由

・歩行は連続動作であること

・動きが早いこと

・数か所の関節が同時に動くこと

などで、どこを観察すれば良いのかわからなくなることがあります。

まずは、前述した正常歩行を覚えておくことです。

すると、正常歩行から逸脱している異常動作がみえるようになってきます。

歩行動作の観察ポイント

歩行は立脚相と遊脚相に分けられますが、遊脚相では強い筋力は求められておらず、ほぼ受動的に筋収縮が起きているに過ぎません。

遊脚相も実は立脚相に問題があることが多く、歩行観察のポイントとしては立脚相のどの相に異常があるのかを見極めることが大切です。

立脚相の評価(観察と分析)

立脚相の評価ポイントを解説します。

踵から接地できているか

最初に踵から接地できているかを確認してください。

踵から接地することが良い理由はいくつかあります。

まず、初期接地で足関節底背屈0°のポジションを確保できると足関節は締りの位置になります。すると土台となる足関節の剛性が高まりますので、足関節の可動域の確保は必須です。

 

また、踵から接地すると腓腹筋が伸張位になることで、連結するハムストリングス(主に大腿二頭筋)ー仙結節靭帯ー多裂筋の筋活動を強めます。この連結により、仙腸関節の圧縮力が強まり、下肢と骨盤・体幹を安定させます。

立脚中期は安定しているか

上記の正常歩行は横からの観察ですが、立脚中期においては前後から観察しておくことも重要です。

よくあるのが、中殿筋の筋力低下で骨盤の傾斜が起こることです。

トレンデレンブルグ兆候

デュシャンヌ兆候

 

次に、足部にも注目しておきます。

正常歩行では、初期接地時には距骨下関節は回外位で接地し、荷重応答期から立脚中期には回内します。そして前足部に荷重がのると再び回外しています。

距骨下関節の回内・外

(右足、後方から観察)

もし、荷重応答期から立脚中期のタイミングで距骨下関節が回外位のままになると、外側の縦アーチが崩れ、足部や膝の外側動揺がみられるようになります。

また、正常では荷重応答期にはダブル二―アクションにより膝が軽度屈曲し不安定なポジションになります。このタイミングで距骨下関節が回内することで、運動連鎖で大腿骨に対して下腿の内旋が起こり、十字靭帯(ACLPCL)の緊張を高め、膝関節を安定させます。

このことで膝への負担も軽減させることがができます。

変形性膝関節症の人は足部に問題があり、上記のようなメカニズムで膝関節の安定性を作ることができない場合が多いです。

足部のアーチについてはこちらで詳しく解説しています。

ロッカー機能は十分か

ロッカー機能は前述したように、3つの軸を中心に身体を前方へ滑らかに回転させる役割があります。

ヒールロッカーが欠落している片麻痺患者さんの場合では、一旦動作が停止するため、その後能動的に前方への回転運動を起こさないといけなくなります。

踵から接地しているのに、「パタン」と足底が接地している場合には前脛骨筋が遠心性に収縮できていないと分析することができます。

また、フォアフットロッカーが破綻すると、足趾の内側や外側へ自由に荷重をのせることができず、よって進行方向を変換できなくなり、転倒するリスクも高まります。

立脚後期の股関節伸展は確保できているか

ここで、股関節が十分に伸展すると腸腰筋が伸張するので、その力を利用して受動的にその後の股関節屈曲を可能にします。

股関節伸展制限、足関節背屈制限、フォアフットロッカーの破綻などの問題があると股関節は伸展せず、その次の遊脚相では股関節が屈曲しずらくなります。

実は遊脚相では足関節背屈はほとんど必要なく(底背屈0°)、足が床に引っかかる原因の多くは遊脚相に股関節が屈曲しないことにあります。

片麻痺の人で多いですが、股関節屈筋群が働かないと代償的に股関節内転筋を使うようになるので、分回し歩行にもなってしまいます。

腕の振りはみられるか

歩行だと足ばかりに注目してしまいますが、腕の振りがあるかは転倒しやすいかどうかの指標にもなります。

腕がガチガチに固めている人は、身体全体が拘束されたような状態になり、バランス能力は低下してしまいます。

その理由とリハビリ方法は、「姿勢制御系から考える転倒しない身体とは?」でも詳しく解説していますが、バランスをとるためには手足の力はできるだけ抜けているのが良いです。

腕の力が抜けることで、体幹のインナーマッスルが働きやすくなり、姿勢制御がしやすくなります。

まとめ

歩行について長々と解説しましたが、これだけでも書ききれないくらい歩行は複雑で多様な動きをしています。

正常歩行から異常動作を見つけるようにと書きましたが、大切なことはその歩行が実用的どうかということです。

実用性とは、安全なのかや疲れないかなどのことですが、その歩行で何か不具合があるのかを見極めることが大切です。

また、どうしても改善しない動きもあります。

特に脳卒中片麻痺では、正常歩行とは違う特徴的な歩行になってしまいますが、それが改善するのか、もし改善しないなら代償方法で歩けるのかも考えていかないといけません。

理学療法士は歩行が観れるだけでなく、患者さんの歩行をどのように改善することができるのかまでを考察していくことが求められます。

引用画像)

観察による歩行分析p41 2007.6

 

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