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理学療法

後十字靭帯(PCL)損傷の原因とリハビリ

投稿日:2016年5月27日 更新日:

後十字靭帯(Posterior Cruciate Ligament:PCL)は、前十字靭帯(ACL)と同じく関節内にある重要な靭帯です。

後十字靭帯のほとんどが交通事故によるもので、時にスポーツ活動中でもみられることがあります。

 

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後十字靭帯とは

構造

※前外側より観察

ⒸteamLabBody-3D Motion Human Anatomy

大腿骨内側顆外側面から脛骨顆間隆起後方に付着します。

後・下・外方に斜めに走行し、前十字靭帯と後十字靭帯の長さを比較すると5:3であり、前十字靭帯の方が長いです。

後十字靭帯の強度は、前十字靭帯の約2倍とされています。

膝関節屈曲に伴い緊張する前方線維伸展位で緊張する後方線維があります。

役割

脛骨が後方へ移動する場合には前方・後方線維どちらも緊張します。

また、下腿内旋位でも緊張します。

受傷機転

典型的な受傷機転は、膝関節屈曲位で脛骨粗面を強く打ちつけた際に生じます。

引用)1

また、交通事故ではダッシュボード損傷と呼ばれる現象により生じます。

※ダッシュボード損傷とは、自動車の正面衝突により膝を前方から強く打ちつけることで後十字靭帯が損傷することをいいます。

後十字靭帯損傷に用いられる簡易テスト

サギング徴候

膝関節90°屈曲位で足底をベッドにつけリラックスさせます。健側と比較して、脛骨上端の陥凹が確認されれば陽性です。

後方引き出しテスト

膝関節45°屈曲で脛骨近位を両手で持ち、前後の動揺を調べます。後十字靭帯損傷の場合はすでに脛骨が後方に落ち込んでいる場合があるので、サギング徴候を確認してから行うのが良いです。

膝関節屈曲時の膝不安定感

引用)2

上のグラフをご覧ください。

後十字靭帯損傷の場合では脛骨後方移動量は10°以上の膝関節屈曲では脛骨後方動揺がみられるようになり、屈曲するほど移動量が大きくなります。

前十字靭帯損傷の場合は脛骨前方移動量が15~45°屈曲位で約2倍になるのに対して、後十字靭帯損傷の場合は75~90°屈曲位において脛骨後方移動量が約3倍になります。

さらに、内側側副靭帯や外側側副靭帯の複合損傷の場合は、膝関節伸展位でも膝関節後方動揺がみられるようになります。

これらのことを踏まえると日常生活においては、椅子への着座、階段の降段時など膝関節を徐々に曲げていく動作で不安定感が生じます。

後十字靭帯の治療

再建術を行うか保存療法を行うかは意見が一致していません。

前十字靭帯再建術と同様二重束再建術で良好な成績が認められたと報告されている反面、保存的治療でも後十字靭帯が修復され不安定性が改善するとの報告もあります。

後十字靭帯単独損傷の場合は、第一に保存療法が選択されます。複合損傷や保存療法で膝折れ感などが改善しない場合には再建術が選択されます。

急性期(1~2週)

受傷直後に炎症症状(腫脹・熱感・発赤・疼痛)がある場合は、早期鎮静目的に15分程度のアイシングを行います。

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荷重時に痛みが強い場合は、松葉杖などで免荷します。

日常生活でも膝関節の不安定感がある場合には、装具を着用します。

 

こちら↓は、脛骨後方動揺を制動するための装具です。

亜急性期(2~4週)

荷重訓練

疼痛を目安に部分荷重から全荷重へと可及的に進めていきます。

膝関節の関節可動域訓練

膝関節の関節可動域訓練を開始します。

※注意:膝関節の完全屈曲は脛骨後方移動を助長するため、膝窩部に痛みを伴うことがあります。

膝窩部にタオルを挟み関節可動域訓練を行うと良いです。

引用)3

筋力増強訓練

大腿四頭筋、下腿三頭筋、ハムストリングスを重点的に鍛えます。

 

大腿四頭筋

大腿四頭筋は、脛骨の後方動揺を制動する作用があり、保存療法後のスポーツ復帰は大腿四頭筋の筋力の回復に左右されるともいわれています。

弾性バンドを使用した大腿四頭筋の訓練

※脛骨後方動揺を制動するため、膝裏にクッションなどを挟んでおくと良いです。

引用)3

 

下腿三頭筋

下腿三頭筋も脛骨後方動揺を抑制する作用があるといわれています。

下腿三頭筋とは、腓腹筋とヒラメ筋の総称です。

踵上げ

 

ハムストリングス

ハムストリングスの単独収縮は脛骨の後方動揺を起こすため、下腿近位から弾性バンドなどで前方に向けて抵抗する必要があります。

弾性バンドを使用したハムストリングスの訓練

腓腹筋の同時収縮も図るため足関節を背屈位にするとより効果が期待されます。

引用)3

スポーツ開始時期(4~5週)

装具を外しても、日常生活で膝関節の動揺や疼痛、不安がなくなったのを目安にスポーツ復帰に向けたのフットワークを開始します。

主に、サイドステップ、ターン、ステップなど各競技特有のフットワークを行います。

スポーツ復帰(約2ヵ月)

大腿四頭筋など膝周囲の筋力が十分回復した時点で競技復帰とします。

引用画像

1)宇屋秀繁後十字靭帯損傷、宇屋秀繁・編、部位別スポーツ外傷・障害、2、膝、南江堂、東京、p72-74.1998

2)緒方公介:後十字靭帯再建のバイオメカニクス.骨・関節・靭帯2(9):1989

3)細田多穂・柳澤健:理学療法ハンドブック第3版 疾患別・理学療法基本プログラムp350-352.2010.2

 

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