理学療法

【認知神経リハビリテーション】自分を知る(認知する)には外部手がかり(道具)を活用する

投稿日:2017年7月4日 更新日:

ここでは、認知神経リハビリテーション(以下、認知神経リハ)について概要とリハビリ方法の一部をご紹介します。

 

認知神経リハを勉強する以前に、運動学習について勉強していたので、何となくすんなりと理解できる部分もありました。

 

認知神経リハを最初から学ぼうと考えている人は、まずは運動学習理論について勉強してみると良いかと思います。

 

ところで、認知神経リハって道具を使っているイメージがありますよね。

 

何で道具を使うかご存知でしょうか?

 

認知神経リハの軸となる理論的なところをわかりやすく解説し、最後にはリハビリ方法もご紹介しますので、是非参考にしてください。

 

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情報の差を感じることで自分がどうなのかがわかる

唐突な質問ですが、あなたは自分の外見をどのように思っていますか?

 

カッコいい(もしくはカワイイ)と思っていますか?

身長は高いと思っていますか?低いと思っていますか?

 

いきなり何の質問かって感じに思うもしれませんが、この考えと認知神経リハはとてもよく似ています。

なぜ、自分がカッコいいや身長が高いかがわかるかというと、比べる対象があったからです。

それを今まで生きてきた中で経験してきたからこそ、自分自身がどうなのかがわかるのです。

 

「あ、周りよりチヤホヤされるから自分はカッコいんだ~(カワイイんだ~)」

「あ、あの人より目線が高いから自分は身長が高いんだ~」

と周りとの情報の違いを感じることで自分はどうなっているのかがわかるのです。

 

こうしたことを経験してきて、自分はどういう状態にあるのかという「基準」が完成していきます。

もし、比べる対象がなく一人で生きてきたなら、自分がカッコいいのか身長が高いのかすらわからないはずです。

情報の差から「自己の基準」を構築していく

脳損傷の患者さんでは、今までの経験から構築された「自己の基準」が破綻してしまった状態にあります。

 

脳卒中片麻痺患者さんで座位をとっているときに、正中軸が非麻痺側に偏っているのをよくみますよね。

脳内ではどうなっているかというと、損傷した脳を補う形で反対側の脳の過活動がみられるようになります。これを半球間抑制といいます。

この際に、療法士から「左に傾いているから真っすぐに座って!」と言われても、患者さんの脳の中ではそれが真っすぐなわけです。

つまり、身体と脳内の情報にズレが生じているのです。

前述したように、僕たちはこれまでの情報の違いから自己の身体がどうなっているのかがわかるようになってきました。

ですので、もう一度自己の身体の位置関係を認識し、再学習を図る必要があります。

認知神経リハビリテーションとは「生きている脳を一緒に探す旅」である

講義である先生が良い言葉を言ってましたので、引用させていただきます。

一旦死んでしまった神経細胞が再び生き返ることはなく、生きている脳でもう一度神経ネットワークを繋ぎ合わせていく作業が必要になります。

どこの脳で補うことができるのかは、患者さんの反応をみながら探していくことが大切です。

道具という比べる対象物を使い、自分自身の身体がどうなっているのかを認知してもらいます。

道具とは

認知神経リハでは道具をよく使うのですが、この道具には以下の3つがあります。

●訓練器具

●運動イメージ

●言語

 

認知神経リハでよくみられる道具は訓練器具を指す場合が多いのですが、訓練器具自体に情報が組み込まれているわけではありません。

訓練器具を通して、セラピストは「患者さんがどのように感じ、何を考えているのか」を探っていくことがとても重要です。

 

また、運動に先駆けて必ず運動イメージがあります。予測ともいえるでしょうか。

例えば、喉が渇き水を飲みたいという「不快な感覚」を覚えたとします。今までの経験上水を飲むと「不快な感覚が消失した」という記憶をもとに行為が成されるわけですが、水の入ったボトルを持ち上げる前にも過去の経験上これくらいの重さだろうかという予測が先行します。

もし、思っていたよりも軽るければその情報はフィードバックされ、だんだんと修正されていきます。ただし、これは脳が正常に機能している場合に限ります。

 

脳卒中の場合には、生じたエラーを具体的にフィードバックさせることが大切です。

運動を行う前に「重そうですか?(軽そうですか?)、どのくらいの重さだと思いますか?」

 

そして、運動を終えたあとに、

「腕はどのようにに動きましたか?」

「どのくらい動きましたか?」

「どの方向に動きましたか?」

言語化していくことで、何をどう感じたのかがより具体化されていきます。

ポイントは、情報の違いを患者さん自身で認知してもらうことです。

患者さんには「あ、わかった、わかった」と思ってもらうことが非常に重要になります。

まずは、わかりやすく簡単なことから始めて、情報の差を感じてもらいます。

行為と言語の関係性

行為とは、単一の関節運動や歩行などの動作を複合したものであり、それには注意や認知、予測などが絡みます。

どういうことかというと、床をただ歩いているだけではただの動作に過ぎませんが、床の形状が変化した際に歩き方を変化させる場合には、そこに注意を向ける必要があるということです。

 

行為は動作の集まりであり抽象的になりやすいのですが、言語化することで行為に意味を与え、記憶が定着しやすくなります。

 

頭頂葉に障害がある人に対して、感覚的に身体がどうなっているかを掴んでもらうのは非常に難しいのです。

側頭葉処理である言語野を使い、別のルートから頭頂葉にアクセスし、自己の身体イメージをもう一度再学習していくということです。

運動の再学習を阻害する特異的病理

運動学習をしていく際に重要なのが感覚を認知することです。

以前にも同じような記事を書いていますので、こちらを読んでいただくと理解が深まります。

中枢神経系の特異的病理

脳卒中などの中枢神経疾患では、自分の意思とは関係なく筋緊張が高まるいわゆる痙縮がみられます。

治療者はこの痙縮をいかにして出さずに、患者さんに意図した運動をしてもらうかが鍵を握ります。

痙縮を誘発する4つの因子

①伸張反射の異常

②異常な放散反応

③原始的運動スキーマ

④運動単位の動員異常

①の伸張反射異常は、急激に筋を伸張した際にみられる反射であり、②の放散反応は目的以外の関節運動が起こること、つまり代償運動を指しています。

③の原始的運動スキーマは共同運動パターン、④の運動単位の動員異常は適切な筋収縮の量や方向付けが成されているかを指しています。

整形外科疾患の特異的病理

整形外科疾患で運動学習を阻害する因子を以下に挙げています。

①疼痛と防御収縮

②関節の硬さ

③筋萎縮

④代償運動

⑤運動単位の動員異常

求められる関節機能の特徴

各関節によって、求められる関節機能は異なります。

肩甲帯 手を体感・頭部から自由にするカウンターバランス
肩関節 上肢の運動方向付け
肘関節 身体と物体の距離を測る
前腕 手の構え
手関節
手指 把持・操作
体幹 対称性
股関節 下肢の運動方向付け
膝関節 重心移動、衝撃吸収
足部 床への適応(水平性・摩擦・圧)

空間認知を修正するリハビリ方法

空間認知を修正する際のリハビリ方法として、自己中心座標系(egocentric)物体中心座標系(allocentric)があります。

自己中心座標系(egocentric)

例えば、座位姿勢で麻痺側に身体が傾いている場合。

「自分の右側に壁がある。しかもその距離は遠い。だから自分は左側に傾いているんだ。」

といったように、自己の身体と物体の関係性から身体がどうなっているのかを認知していきます。

物体中心座標系(allocentric)

空間・方向・距離などを認知する際に用いられます。

例えば、上肢を外側方向へリーチする際に共同運動パターンが出現してしまう場合。

「肩と手首の間に肘がある。肘は手首よりも内側にある」というように認知していきます。

 

このようにして、物体と比べて自己の身体がどうなっているのかを経験をしていくことで、その人にとっての「基準」がもう一度再構築されていきます。 

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TKA術後によるアライメント変化に対応するためのリハビリ方法

元々変形性膝関症のある患者さんでは、左図のようにO脚により股関節は外転位、足関節は外反し下肢アライメントを保っています。

しかし、TKA術後では右図のように股関節や足関節は中間位に必然的に矯正されます。

それにより元々の身体イメージが崩れ、患者さんは「かなり内股(股関節内転位)に感じる」と言われることがあります。

また、足関節に関しても、外反位がその人にとっての真っすぐであり、身体イメージと実際の身体の間にズレが生じてしまいます。

感覚のズレを修正し、身体イメージを再構築していく

背臥位になり、下図のように股関節を動かした際に「中間位はどこなのか」を認知する課題を行います。

背臥位

 

足関節に対しては、不安定板を用いて中間位を認知してもらいます。

座位

 

これらを聴覚的、視覚的にフィードバックを入れながら、最終的には体性感覚のみでも中間位がわかるように繰り返し訓練を行っていきます。

最後に

少し難しかったと思いますので、簡単にまとめたいと思います。

外部手がかり(道具)を頼りすることで、自分がどうなっているのかが認知できます。それが「自己の基準」になります。

基準を構築していくには、情報の差を感じることです。

整形外科疾患の患者さんでは、脳に障害はないので運動学習されやすいのですが、脳卒中の患者さんではどの外部手がかりが良い反応を示すのかは色々試してみないとわかりません。

失語症や認知症を呈する患者さんでも同じことで、脳のどこが生きているのかを探りながら訓練をしていく過程が認知神経リハということです。

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