理学療法

失語症のまとめ。症状や分類、評価、リハビリ方法を詳しく解説

投稿日:2017年6月5日 更新日:

高次脳機能障害の一つに失語(症)という症状があります。

ここでは、失語症とは何か?どんな種類やリハビリ方法があるのかを詳しく解説しています。

 

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失語症とは

人は普段、喋ったり、聞いたり、読んだり、書いたりして他の人とコミュニケーションをとっています。

脳の障害でそれらができなくなった状態を失語(症)といいます。

つまり、失語症とは、

・話す

・聞く

・読む

・書く

ということが困難になる症状をいいます。

失語症にはどのような症状があるの?

失語症には、具体的にどのような症状があるのかを解説します。

話す

大きく分けて流暢型と非流暢型とがあります。

失語症で用いられる流暢型とは、喋ることは可能だが、言葉の内容や文法に支障を来すという意味があります。

非流暢型とは、脳内で言葉が作り出せず、口数が減ってしまうことをいいます。

 

「話す」には以下の症状があります。

保続

少し前の言葉をそのまま引きずってしまうことをいいます。

例えば、時計を見せて「時計」と答えてもらい、その後鉛筆を見せても「時計」と前の言葉を言ってしまう。

錯語

いわゆる言い間違いのことをいいます。

例えば、「タバコ」を「タビコ」と言ってしまうなど。

喚語困難

頭の中ではイメージが出来ているが、それが言葉として思い出せないことをいいます。

通常でも「あの名前なんだっけ?」といったことはありますが、失語症では普段よく使うようなことも思い出せなくなります。

新造語

現実にはない言葉を作り出すことをいい、音韻性錯誤ともいいます。

例えば、椅子を「チフ」と言ったりします。また、繰り返し使用されることもあります。

ジャーゴン

錯語や新造語ばかりの会話で、かつ流暢な発話がみられることをジャーゴンといいます。

例えば、「あれは、エンピイとケシノリです」(あれは、鉛筆と消しゴムです)などと話したりします。

純語性失語障害

文法を作ることが困難になることをいいます。

非流暢型の失語であり、単発的な単語のみの発話が目立ちます。

復唱困難

他の人が言った言葉を同じように発話することが困難なことをいいます。

聞き取りが困難でも発話のみ可能な場合には、他の人の言葉をオウム返しに繰り返す反響言語という症状もみられます。

聞く

言語性短期記憶障害

耳から入った言葉を一時的には保持できてもすぐに忘れてしまうことをいいます。

語音弁別障害

単語の認知・理解の前に、まるで外国語のようでわからない、聞き取とれないという症状をいいます。

純粋語聾(じゅんすいごろう)ともいう。

理解障害

音として聞き取れてはいるが、それが何を意味するのかわからなくなることをいいます。

読み書きの障害

会話に支障がなくても、読み書きが困難になることもあります。

字が読めないことを失読といいます。平仮名やカタカナの意味理解は難しく、漢字の理解は比較的保たれています。

(漢字には文字自体に意味があり、平仮名やカタカナには一文字に意味はないからです。)

音読した際に、違った言葉で発話することを錯読といいます。

また、字が書けなくなることを失書といい、書けても書字の誤りがあることを錯書といいます。

失語症の分類と症状

下図のウェルニッケ-リヒトハイム(Wernicke-Lichtheim)の失語図式がわかりやすくよく用いられています。

失語症の分類と各症状

自発語 復唱 言語理解 文字理解 音読 書字 書き取り
ブローカ失語 × × × × ×
皮質下性運動失語 × × ×
ウェルニッケ失語 流暢 × × × × 錯書 ×
皮質下性感覚失語 × × ×
超皮質性運動失語 ×
超皮質下性感覚失語 錯語 × × 錯語 錯書
伝導失語 錯語 × 錯読 錯書 錯書
全失語 × × × × × × ×
健忘失語 語健忘

 

上記の図や表は病態を整理するのに適していますが、これらはあくまでも概念的なことであり、実際にはこの通りの症状でないことも多々あります。

そのため、その人がどのような失語症状がみられるのかを評価することが大切です。

代表的な失語症状と責任病巣

失語症状と責任病巣について解説します。

失語症は、優位半球の障害で起こります。例えば、右利きの人では左の脳が優位半球になります。

下の脳解剖を確認しながら読んでいただけると理解しやすいと思います。

 

失語に関わる脳解剖▼

ブローカ失語

症状

非流暢型の失語であり、喚語困難、発話開始の遅れ、発話量の低下がみられます。

聞き取りは可能ですが、発話が困難なためストレスになりやすいことから、発話意欲が低下する場合も多いです。

責任病巣

前頭葉のブローカ野の障害、中心前回下部をはじめとする広範囲の障害で起こります。

ウェルニッケ失語

症状

流暢に発話できますが、聴き手にとっては理解が難しい発話になります。

音韻性錯語、新造語、ジャーゴンなどがみられます。聴理解は障害され、復唱も困難です。

責任病巣

下頭頂小葉(角回、縁上回)、側頭葉下部の障害で起こります。

伝導失語

症状

理解と発話はほぼ可能ですが、音韻性錯誤がみられ、正しい言葉出なくなります。

特に復唱が苦手になり、聞いた言葉を脳内で統合して同じ言葉に置き換えることが難しくなります。

責任病巣

聴覚中枢と言語中枢を結ぶ弓状束という回路の障害で起こります。

超皮質性運動失語

症状

非流暢型で、自発言語は極めて少なく、復唱は可能ですが反響言語がみられることがあります。

ブローカ野からの回復でこの失語に移行することが多いです。

責任病巣

前頭葉のブローカ野上部の障害で起こります。

超皮質性感覚失語

流暢な発話で復唱は可能ですが、言語・文字理解は障害されています。

錯語、錯書、錯読などがみられることもあります。

ウェルニッケ失語からこの失語に移行することが多いです。

責任病巣

ウェルニッケ野の後方の側頭葉や頭頂葉の障害で起こります。

皮質下性運動失語

症状

発話と復唱は障害されていますが、言語・文字理解や書字は侵されていません。

ブローカ失語の回復期にみられることが多いです。

責任病巣

中心前回下部の障害で起こります。

皮質下性感覚失語

症状

言語理解や書き取り、復唱は侵されていますが、発話には問題はありません。

ウェルニッケ失語の回復期にみられることが多いです。

責任病巣

ウェルニッケ野の障害で起こります。

その他

健忘失語は、比較的軽度の失語であり、錯語や遠回りな言い回しがみられます。病巣は角回やび漫性の脳障害により起こるといわれています。

全失語は、言語の発話・理解、復唱、読み書きが障害されており、中大脳動脈の広範囲の梗塞でみられます。

失語症の鑑別。構音障害、失声症、学習障害との違い

構音障害は、同じように話すことが困難になるのですが、口唇や舌、咽頭などの器官に障害が起きていることが原因になります。

失声症は、心的ストレスによって、声を発することが困難になる症状がみられます。

失語症は後天的な脳障害により、話す・聞く・読む・書くなどの障害がみられるのに対して、学習障害は先天的な脳機能の障害でコミュニケーションに支障を来します。

これらのコミュニケーション障害とは区別しながら、失語症の検査・評価をしていくことが大切です。

失語症の検査と評価

検査

・標準失語検査(SLTA)

・ウェスタン統合失語検査(WAB)

・トークンテスト

などがあり、これらの検査から症状の特徴を見つけていきます。

日常会話から評価

前述した症状の有無を見つけていくには、日常会話からの評価も有効です。

評価のポイントとしては、

・自発言語の流暢性・非流暢性を確認

・言い間違い(錯誤)、言葉の詰まり(喚語困難)

・物品を見せてそれを答えてもらう(語想起)

・復唱は可能か

・言語理解は可能か

・読み書きは可能か、錯読・錯書はないか

などを見ていきます。

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失語症のリハビリと支援・援助

失語症のリハビリは、まずは聴理解と発話の改善に重きをおきます。

先の評価で、「話す・聞く」がどの程度可能なのかを評価してリハビリプランを立てていきます。

訓練では、静かな環境の中で1対1で行われるのが望ましいです。

リハビリ方法

訓練では、高頻度語(日常よく使う言葉)の単語を中心に訓練し、徐々に低頻度語へと移行していきます。

発話が難しい場合には、口真似をしてもらいます。

「タバコ」という単語であれば、「タ」「バ」「コ」と一文字ずつ分けて発音し、最後に「タバコ」とつなげます。

また、絵カードを見せて、それが何かを呼称してもらったり、絵の説明をしてもらったりします。

 

歌を歌うことも効果的です。歌を歌うことと話すことでは脳の活動部位が異なるため、普段発話が困難な人でも歌ならスムーズに歌える人もいます。

 

基本的には言語聴覚士が訓練にあたることが多いですが、周囲の人は日常会話も訓練だと思い関わってみても良いかと思います。

支援・援助

ある程度コミュニケーションが可能になれば、他の人とのコミュニケーションの場をつくることで症状が改善していくことは多いです。

言い間違いや言葉が出てこないなどの後遺症はあっても、家族や周囲の人は焦らずコミュニケーションをとっていくことが大切です。

失語症の人とのコミュニケーションで気をつけること

失語症は、脳の障害により言葉が作り出せない、認知できない状態をいいます。

決して、記憶障害や物忘れなどではないということを覚えておきましょう。

なので、言葉が思い出せないからといって、「ア」から始まる言葉ですよ。とヒントを出しても余計にストレスを与えるだけです。

なぜなら、本人の頭の中ではイメージができているのです。ただ、それを言葉にできないだけです。

先走って言葉を言ってしまうことも、本人の発話意欲を削いでしまうため、聴き手は落ち着いて待つようにしましょう。

質問するときは、「はい」「いいえ」で答えられるように工夫すると答えやすくなります。

また、普段よく使う言葉は、ノートにまとめておくのも良いです。

まとめ

失語症についてまとめてみました。

重度の失語症の場合には、後遺症が残ることが多く、本人にはどのような代償手段で意思疎通を図ることができるのかを提案していくことも重要です。

また、周りの人も失語の症状を理解し、快適にコミュニケーションがとれるように工夫していくと良いかと思います。

 

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