理学療法

廃用症候群とは?理学療法士が考える予防とリハビリの進め方

投稿日:2016年10月7日 更新日:

以前に、サルコペニアロコモティブシンドローム、フレイルなどの記事を書きました。

 

これらを簡単に説明すると、動かないことで身体及び精神に様々な支障を来すことを意味する用語です。

今回は、廃用症候群とは何か?、理学療法士が考える予防とリハビリの進め方をお伝えします。

 

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廃用症候群とは

廃用症候群は、疾患などのために動かないことで生じる二次的障害のことをいいます。この用語に特別定義といったものはありません。

サルコペニアロコモティブシンドローム、フレイルなどは、廃用症候群の中に含まれるイメージになります。

廃用症候群は、様々な疾患から来る二次的な機能障害という意味合いがあり、「廃用症候群」という病名で入院することもあります。

例えば「尿路感染症後の廃用症候群」などのように診断されます。

昔は病気になったらできるだけ「安静」にするようにいわれていましたが、最近ではむしろ動かないことで生じるデメリットのほうが多いといわれています。

それは、健康な人も病気になった人も同じです。

廃用症候群の原因

廃用症候群は活動性の低下や寝たきりにより引き起こされます。

廃用症候群の筋力低下の研究では、Mulerの臨床報告が有名であり、寝たきりにより筋力は1日に1~1.5%、1週間で10~20%低下すると報告されています。

また、転倒との関連性の高い膝関節伸展筋力に関する報告もあり、Bammanらの研究では2週間で約15%、Bergらは6週間で約25~30%筋力低下を起こすと報告しています。

ただし、これらの筋力低下は寝たきりによる結果であり、その根本にその原因が隠れています。

 

要介護度者の割合が多い脳卒中や高齢者に多い骨折(特に大腿骨頚部骨折)などが、廃用症候群の原因になることが多いです。

また、認知症や精神疾患などが合併すると活動意欲が低下してしまい、さらに活動性が低下してしまいます。

高齢者の場合では、少し風を引いたりするだけでも寝込んでしまい、それが引き金で動くことができなくなることもあります。

まずは、廃用症候群の原因になる疾患の予防に努めることが大切です。

廃用症候群にはどんな症状がある?

以下に考えられる廃用症候群の症状を記載します。

●関節拘縮

●筋萎縮または筋力低下

●褥瘡(床ずれ)

●骨萎縮

起立性低血圧

●排泄障害

●精神の異常(認知症やうつ、閉じこもり症候群など)

●肺炎

などがあります。

 

これらの症状があると、寝たきりを引き起こす悪循環に陥りやすく、場合によっては深刻化することもあります。

高齢者の場合では、寝たきりにより関節が固まったり、筋力が落ちたり、いざ起き上がろうとすると起立性低血圧を起こしたりすることもあります。

また、ベッドの天井だけを見て過ごす時間が多くなると、外界からの刺激量も減り、視覚・聴覚も刺激されず、脳の機能も衰えてしまいます。

特に高齢者の死因で上昇傾向にある肺炎を引き起こすのも、寝たきりが原因になることが多いので、まずは寝たきりにならないための予防が大切になります。

まずは寝たきり予防が大切

上記でも説明したように廃用症候群には特別定義がなく、寝たきりになったらだれでも起こると思っていただいたほうが良いです。

まず第一に脳卒中急性期や骨折の免荷などの指示がある場合には、安静にする必要があります。

 

ただし、安静にすること=横になって寝ておく。ではありません。

 

寝たきりは、起立性低血圧や肺炎、褥瘡などを引き起こすことがあります。

肺炎に関しては、日本人の死亡原因の第3位になるくらいです。

動きたくても動けない人もいる

寝たきりはいけないとわかってはいるけど、何かしらの原因により動けずにいる人もいます。

実際には動きたくても動けない人のほうが多いのではないかと思います。若い人ではむしろじっと寝ていることのほうが苦痛なわけで、元気な高齢者でも活発な人は寝たきりとは無縁です。

 

なぜ寝たきりになってしまうのか?

その原因を探っていくことがとても大切です。

 

「○○さん、少しは椅子に座って起きていましょう」と言っても、自発的に起きていられない原因があるはずです。

体幹筋力が低下していて座っているだけでも疲れる。

食欲がない。

座っているだけでは何も面白くない、しんどいだけ。

など、本人が意欲的になれない原因があるはずです。

 

理学療法士はこれらの原因を探りながら、少しづつでも寝たきりにならないように関わっていくことがとても大切です。

日常生活から廃用症候群の予防に努める

①まずは、ベッド上で座位をとる

理学療法士などが行うリハビリでは、まずはベッド上で座ることを第一目標に掲げ、廃用症候群の予防に努めています。

もちろん、血圧や心拍数をモニタリングしながら実施します。また、患者さんの自覚症状にも注意を払いながらできる限りに抗重力位を目指します。

抗重力位をとるだけで、誤嚥性肺炎や起立性低血圧の予防になります。

②できるだけベッドから離れること

重度の障害を持った患者さんは、まともに食事が食べられず経鼻栄養などをしていることもあります。また、排泄をオムツの中でするなんてこともあります。

食事や排泄などは、誰しもが共通する人間の欲求であります。患者さんの食事や排泄意欲がない場合には、寝たきりになりやすい傾向にあります。

無理な経口摂取は誤嚥性肺炎のリスクがありますので、言語聴覚士などの専門職が訓練にあたり、慎重に進めていく必要があります。

可能であれば経鼻栄養中の離床を検討することも大切です。ただし、経鼻栄養をしている場合、胃や腸の動きも弱っている人が多く、消化に時間がかかることを考えても1時間半~2時間くらいの離床が必要になります。

 

次は、排泄に関してです。

寝たきり原因の1位は脳卒中なのですが、この病気は排泄障害を併発することもあります。特に重度の障害であれば発症初期にはほとんどの患者さんでみられます。

患者さんの排泄パターン(時間的タイミング)を把握し、早期よりトイレでの排泄を目指していくことが大切です。

③意欲の出る活動の提供

廃用症候群では、精神的異常を来すことがあります。認知機能の低下やうつ、閉じこもり症候群などがそれにあたります。

例えば、病前好きだったこと(音楽や編み物など)を提供し、目的をもって離床を進めていきます。ただし、生理的欲求(食欲や排泄など)が満たされていない場合には、患者さん一人で行う活動は難しい場合があります。

そのようなときは、やはり「人」ですね。

一番身近な家族に協力を依頼し、離床の機会に会話を楽しむなどは有効です。

最も予防しておきたいのが関節拘縮

廃用症候群の症状をいくつか紹介しましたが、理学療法士が最も予防しておきたいと思うのが関節拘縮です。

もちろん、肺炎や褥瘡などは感染症から命に関わることがあるので予防するのは当然のことです。

意外と見逃しがちなのが関節拘縮に対する予防です。

関節拘縮とは関節に可動域制限を起こす状態のことをいうのですが、その原因は筋や靭帯、関節包、皮膚などです。

Evansら(1960)のラットを使った研究では、膝関節の不動が30日以内では可逆性であるが、30日以上では不可逆性であったと報告されています。

いくつかの研究報告を見ていても、大方30日以上不動の肢位をとり続けると元には戻りにくいようです。

僕の経験を踏まえても、これ以上の寝たきりで関節拘縮が改善した人を見たことがありません。なので、僕の中では関節拘縮が改善するかしないかの1つの指標にしています。

 

下肢(股・膝・足関節)の関節が固まってしまうと、足底が床に接地しない、膝が曲がりすぎてうまく体重を支えられないなどで、立ったり歩いたりすることが非常に難しくなります。

そうなると、患者さんは援助者がいないと動くことが難しくなり、廃用症候群を助長する結果となり、悪循環に陥ってしまいます。

もちろん、臥床が必要なときもありますので、こまめに足を動かしたり姿勢を変えることが大切です。

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リハビリで最も重要な抗重力位

寝たきりの原因の上位である脳卒中では、血圧などの全身状態が落ち着けば早期よりチルトテーブルや長下肢装具を用いた立位・歩行訓練が効果的といわれています。

立位が難しければ、座位でも良いのですが、可能であれば立位・歩行で荷重刺激を入れていくことが良いでしょう。

抗重力位をとることのメリット

抗重力位をとることで廃用症候群の症状とは逆のメリットがあります。

 

関節拘縮と筋力低下の予防が挙げられ、寝たきりになると足関節背屈の制限がみらやすく、可逆的になると足底が接地せず、歩くことも難しい状態になる場合もあります。

 

循環器系のメリットとしては、頭まで血液を送るために心臓のポンプ機能が必要になり、心機能の低下を予防します。

(心臓の機能が低下している人は負荷量に注意してください。)

 

また、下肢静脈の収縮により、下肢から重力に逆らって血液を還流する働きを促進します。

これには、歩行でふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)の収縮による筋ポンプ作用も手伝い、循環動態の改善に作用していきます。

早期からリハビリをすると、廃用症候群は比較的回復しやすい

廃用症候群には予防が大切だとお伝えしました。

実は廃用症候群は、脳卒中や骨折などと比べると早期に対応すれば比較的速やかに回復します。

その理由として、脳卒中や骨折は一次性の問題であり、直接身体に障害を呈するものなので回復には時間を要します。

一方、廃用症候群は直接的には身体に障害を呈さないので、廃用症候群をうまく予防できれば元ある身体の状態に戻りやすいです。

そのため、廃用症候群と診断された場合には早期に活動量を増やしていく取り組みが医療者に求められます。

まとめ

理学療法士の視点から廃用症候群の予防とリハビリについてお伝えしました。

僕も病院では、「廃用症候群」と診断された患者さんを受け持つことがあります。

そういった患者さんには二通りあって、比較的速やかに回復する患者さんと回復しにくい患者さんがいます。

回復しにくい患者さんの多くは、寝たきり期間が長すぎることによる症状の複雑化がみられます。

廃用症候群は第一に予防が大事です。もし、寝たきり期間が余儀なくされた場合には関節をしっかり動かしておくかどうかが、今後の回復を左右すると思っていたほうが良いでしょう。

 

高齢者に陥りやすい症状)

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