理学療法

脳卒中片麻痺患者に必要な検査項目と意義・目的。ブルンストローム・ステージ・テストの評価方法を解説

投稿日:2017年5月1日 更新日:

僕は現在回復期リハビリテーション病院に勤務しているのですが、入院している患者さんの約半数は脳卒中(脳血管障害)を発症した方です。

脳卒中では、一側の上下肢の運動麻痺を呈することが多く、理学療法士は運動麻痺の程度を評価し、リハビリ方法を示唆することが求められます。

ここでは、脳卒中片麻痺患者にはどのような検査項目が必要なのか、また片麻痺運動機能検査(ブルンストローム・ステージ・テスト)についても詳しく解説します。

 

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脳卒中片麻痺に必要な検査項目。評価の意義・目的とは

片麻痺とは、一側の上下肢が運動麻痺を呈した状態をいいます。

運動麻痺とは)

 

その原因疾患は様々ありますが、錐体路(皮質脊髄路)が障害されている場合に片麻痺を呈します。

 

客観的にみられる錐体路障害の兆候としては、

●筋萎縮を伴わない痙性麻痺

(痙性の詳しい説明はこちらを参照

腱反射亢進

病的反射の出現

が挙げられます。

 

ですので、各種検査を用いて錐体路が障害されているかどうかを判別していくことが意義・目的になります。

 

錐体路障害を断定するための検査としては、以下のものがあります。

●画像所見

反射検査(深部腱反射、病的反射)

●片麻痺運動機能検査(ブルンストローム・ステージ・テスト)

周径(必要に応じて)

 

まずはCTやMRIなどの画像所見から、錐体路の通り道のどこかに障害がないかを確認します。これは患者さんと対面する前に確認しておくと良いです。

錐体路の障害では、深部腱反射の亢進や病的反射が出現しているため、画像所見と統合して解釈していくことが大切です。

注意したいのは、錐体路単独で障害されただけでは筋緊張は亢進せず、弛緩性麻痺を呈することは知っておいてください。

つまり、深部腱反射亢進 = 筋緊張亢進ではないということです。

筋緊張の亢進は、錐体路近くを通る皮質核路が障害されているために起こります。

筋緊張評価の詳しい説明)

 

片麻痺運動機能検査の質的変化とは

運動麻痺には中枢性と末梢性があり、その回復過程では前者は質的変化、後者は量的変化がみられます。

図にすると以下の回復過程を辿ります。

中枢性麻痺の程度を調べる際に用いられる検査方法としては、ブルンストロームテスト(Brunnstrom  Recovery  Stage  Test:BRS‐T)があり、上図のようにⅠ~Ⅵの6段階で評価されます。

中枢性麻痺は発症初期には、弛緩性麻痺から始まり質的変化の頂点である痙性となり、その後に正常な運動へと変化していきます。

質的変化とは、筋力低下のように段階的に回復していくものではなく、病態や回復度によってはあるstageは介さない変化をみせることもあり、それが片麻痺の大きな特徴です。

ブルンストローム・ステージ・テスト(Brunnstrom  Recovery  Stage  Test:BRS‐T)

片麻痺運動機能検査の一つとして、ブルンストローム・ステージ・テストがあり、stageⅠ~Ⅵの6段階で評価されます。

以下にその特徴を記載しています。

stageⅠ

発症初期であり、弛緩性の完全麻痺の状態です。運動の発現や誘発もなく、随意運動や連合反応もみられません。

stageⅡ

連合反応や共同運動の要素がみられ始める時期です。筋緊張はやがて亢進し始め、上肢では大胸筋や僧帽筋、下肢では股関節内転筋の随意的運動がみられ始めます。

【連合反応】

一側上下肢を動かした際に、その力が別の部位に派生し筋収縮が起きること。

【共同運動】

個別筋の分離した収縮が難しく、一定の決まったパターンで運動してしまうこと。

stageⅢ

共同運動の要素が強まり、痙性が顕著な時期をいいます。

共同運動を外れた自由な運動は難しく、屈筋共同運動パターンや伸筋共同運動パターンを起こすようになります。

【四肢の共同運動パターン】

●上肢

屈筋共同運動 伸筋共同運動
肩甲帯 挙上、後退 前方突出
肩関節 屈曲、外転、外旋 伸展、内転、内旋
肘関節 屈曲 伸展
前腕 回外、※臨床上は回内も多い 回内
手関節 掌屈 背屈
手指 屈曲 伸展

●下肢

屈筋共同運動 伸筋共同運動
股関節 屈曲、外転、外旋 伸展、内転、内旋
膝関節 屈曲 伸展
足関節 背屈、内反 底屈、内反
足指 背屈(伸展) 底屈(屈曲)

 

また、stageⅢは連合反応や原始的反射(把握反射)などの影響も強く受けやすい時期でもあります。

stageⅣ

共同運動パターンから一部分離した動きが可能にな状態を指します。

例えば、屈曲パターンを残しつつ、一部伸展運動の要素も可能になります。

stageⅤ

共同運動パターンから分離度が高く、各関節の独立した動きが可能になります。

stageⅥ

ほぼ正常ではあるが、協調運動に問題が残り巧緻性や動作のスピードが若干低下した状態を指します。

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ブルンストローム・ステージ・テストの注意点

このテストは片麻痺運動機能評価であり、質的変化を評価しています。

片麻痺以外にもぎこちなくなる運動を呈する疾患は多くあります。

例えば、小脳の障害でも協調運動障害がみられますが、この場合もBRS‐TでstageⅥとしてしまうのはテストの本質とは違ってきます。

なぜなら、小脳障害は運動失調により協調運動障害を呈しているため、仮にBRS‐Tをしたとしても軽症から重症までstageⅥということになるからです。

これでは変化は追えず評価の意味がありません。

小脳障害の評価)

 

同様に錐体外路障害の代表であるパーキンソン病もBRS‐Tをしたとしても、変化を追うことはできません。

ブルンストロームテストは、質的変化を評価するテストであることを念頭に置きながら評価していくことが大切です。

ブルンストローム・ステージ・テスト【上肢・下肢・手指】

上肢

具体的なテスト方法
stageⅠ 弛緩性麻痺で、筋収縮を認めない
stageⅡ 共同運動が一部可能、連合反応の出現
stageⅢ 共同運動パターンの最も強くなった状態
stageⅣ 共同運動パターンから分離し始める ①手を腰に回す

②肘関節伸展位で肩関節90°まで屈曲

③肘関節90°屈曲位で前腕回内・外ができる

stageⅤ 共同運動パターンからの高い分離 ①肘関節伸展位で肩関節90°まで外転

②肘関節伸展位で肩関節を頭上まで屈曲

③肘関節伸展位で前腕回内・外ができる

stageⅥ 分離運動が自由に可能だが協調性運動が苦手

下肢

具体的なテスト方法
stageⅠ 弛緩性麻痺で、筋収縮を認めない
stageⅡ 共同運動が一部可能、連合反応の出現
stageⅢ 共同運動パターンの最も強くなった状態
stageⅣ 共同運動パターンから分離し始める ①背臥位で膝関節伸展位のまま股関節を屈曲

②座位で膝関節を90°以上屈曲

③座位で踵を床につけたまま足関節背屈

stageⅤ 共同運動パターンからの高い分離 ①背臥位で膝関節伸展位のまま足関節背屈

②立位で股関節伸展位のまま膝関節屈曲

③座位で股関節内旋が可能

stageⅥ 分離運動が自由に可能だが協調性運動が苦手

手指

具体的なテスト方法
stageⅠ 弛緩性麻痺で、筋収縮を認めない
stageⅡ 自動的に手指屈曲がわずかにできる
stageⅢ 手指の集団屈曲が可能 鉤型に握ることができる
stageⅣ 集団進展の一部が可能 横つまみができる
stageⅤ 集団伸展が十分に可能 ①対向つまみ

②筒握り

③球握り

stageⅥ 手指の自由な分離が可能

ブルンストローム・ステージ・テストの評価手順

まず最初にstageⅢを評価してみましょう。

運動が可能ならⅣ以上の評価を、不可能ならⅡ以下を評価すると最短でstageを判断することができます。

片麻痺でも筋力は見ておくべき

片麻痺運動機能検査では、運動のぎこちなさ、滑らかさを評価しています。

片麻痺を呈した場合、中枢である錐体路の神経線維が損傷を受けているわけですが、その先の末梢であるα運動ニューロンや筋線維も侵されています。

ですので運動単位数の多い大きな筋群は筋力を発揮しやすく、運動単位数の少ない小さな筋群は筋力低下も同時に起きています。

stageが低く分離が難しい状態でも筋力には個人差がありますので、共同運動パターンがあっても重力や抵抗に抗することができるのかも診ておいたほうが良いでしょう。

また、stageⅤ以上では分離が進んでいますので、個別筋の筋力テストも可能になりますので、合わせて確認しておくと良いです。

 

徒手筋力検査法(MMT)について)

ブルンストローム・ステージ・テストからある程度の予後予測も可能

片麻痺患者さんの場合、将来的に歩行ができるかどうかを判定することは非常に重要なことです。

発症直後に、背臥位で下肢を空中に浮かしながら屈伸または伸展挙上ができる場合には歩行ができる可能性は高いといわれています。

また、二木の予後予測は有名ですので参考にしていただけると良いかと思います。

下肢の場合ですと、発症後2週間で47%、1ヵ月で72%、2ヵ月で86%、3ヵ月で94%の回復に達します。

発症後2週間以内にstageⅣ以上なら年齢問わず6ヵ月以内にほとんどがstageⅥまで回復しています。

6ヵ月程度までは緩やかに回復すると言われていますが、実際には2~3ヵ月までが最大の回復であるため、その期間に集中的な機能訓練が求められます。

逆に回復が頭打ちになってくると機能訓練よりも、代償手段を用いながらも日常生活をより楽に過ごせるように提案してくことも非常に重要なことです。

まとめ

ブルンストローム・ステージ・テストは片麻痺を評価するテストなのですが、このテスト単独では片麻痺を詳しく評価することが難しので、意義・目的から書かせてもらいました。

最初の方に記載していますが、錐体路障害の有無や程度を診るための一つにそれぞれの評価バッテリーがあります。

ブルンストローム・ステージ・テストは何を評価しているのかですが、運動のぎこちなさと質的変化です。

ですので、適応となる症状を見誤らないようにしなければいけません。

また、過去の統計的データからstegeがわかれば、ある程度の予後予測も可能になります。

しかし、あくまでも統計によるものですので、目の前の患者さんの変化をしっかり追っていくことが非常に大切です。

 

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