転倒予防

【高齢者の転倒予防】動作と筋力低下の関係性。筋力トレーニングの方法についても解説

投稿日:2016年12月21日 更新日:

高齢者の転倒には、いつくかの要因が重なり合い起きると考えられます。

その中でも転倒との相関性が高いといわれているのが筋力低下です。

今回は、転倒しやすい高齢者によくみられる動作と筋力低下の関係性、筋力トレーニングの方法について解説します。

 

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高齢になっても筋力増強は可能である

骨格筋を形作るのはタンパク質であり、成人の場合ではタンパク質の合成と分解がほぼ同等なため急激に筋肉量が減少することはありません。しかし、合成と分解のバランスは加齢とともに徐々に崩れていきます。

筋力は30歳をピークに50歳代までは緩やかに低下しますが、60歳代70歳代では1年に1.5%ずつ低下するといわれています。

このような加齢による筋力低下をサルコペニアといいます。

 

サルコペニアについては、こちら↓で詳しく解説しています。

サルコペニアを詳しく解説。原因や診断方法、予防のための効果的な運動は?

 

若い頃から運動習慣のある人は、運動習慣のない人に比べて運動パフォーマンスを維持することが可能です。

また、高齢になっても筋力増強は可能です。

リハビリでは筋力トレーニングをよく行いますが、高齢者でも筋力増強は可能であり、それに伴い転倒リスクも軽減します。

ただし、気をつけなければいけないことがあります。

筋力増強のメカニズムは、一度筋線維が傷つき修復する過程でトレーニング前よりも更に筋肥大が起こるといわれています。

このメカニズムを考えると、高齢者は筋線維や体力が回復するだけの栄養状態や全身状態が備わっているのかも大事な要素になります。

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膝が「ガクッ」と折れる

歩行時や立ち上がり、階段昇降時に膝に力が入らず「ガクッ」と膝が折れてしまう場合は、大腿四頭筋の筋力低下があると考えられます。

大腿四頭筋とは

大腿四頭筋は太もも前にあり、膝を伸ばす働きがあります。

※前方より観察

 

歩行時、足が接地した直後に大腿四頭筋による緩衝作用が働き、スムーズに足に体重を乗せていくことが可能となります。

もし、大腿四頭筋に筋力低下があると、足が接地した際に膝が折れてしまいます。

また、椅子に座る際にもドスンと座ってしまい、転倒や脊柱圧迫骨折に至るケースもあります。

研究報告でも大腿四頭筋の筋力が弱い人ほど転倒するリスクが高いといわれており、転倒との相関性も認めています。

大腿四頭筋のトレーニング方法

椅子に腰かけ、図ように膝を伸ばしていきます。

歩行時に骨盤が前傾する。または後方に重心が残ってしまう

歩行時、写真のように足が接地した際に骨盤が前傾したり、お尻が引けてしまい後方重心になる場合は大殿筋の筋力低下を疑います。

このような歩行を大殿筋歩行といいます。

大殿筋とは

大殿筋はお尻の筋肉であり、股関節を後ろへ伸ばす(伸展)する働きがあります。

※後方より観察

 

大殿筋は、歩行時に足が接地するとすぐに働く筋肉です。

もし、大殿筋に筋力低下が起きていると大殿筋歩行がみられます。

歩行は連続動作であり、歩行初期からこのような姿勢になってしまうと、その後動きにも影響を及ぼします。

重心が後方に残り、後方へ転倒するリスクにもつながります。また、歩幅が短くもなる要因にもなります。

大殿筋のトレーニング方法

うつ伏せに寝て、太ももを床から離します。

お尻の筋肉が盛り上がるのを感じれば大殿筋が働いている証拠です。

 

太ももが上がっていない

歩行時に太ももが上がらず、ちょっとした段差に足が引っかかる場合には腸腰筋の筋力低下が考えらえます。

腸腰筋とは

腸腰筋は、大腰筋、腸骨筋、小腰筋の総称であり、主に太ももを上げる(股関節を曲げる)働きがあります。

※前方より観察

 

腸腰筋は太ももを上げだけでなく、歩行周囲の後半から骨盤と体幹を直立に保つためにも働いています。

もし、腸腰筋が働かないとヘッピリ腰の姿勢となり、足が上がりにくくなります。

腸腰筋トレーニング方法

このように膝をお腹のほうへ近づけていきます。

 

可能であれば、骨盤や体幹を直立にした立位で行うとより効果的です。

歩行時、骨盤や体幹が左右に動揺する

写真のような現象を中殿筋歩行(トレンデレンブルグ兆候・デュシャンヌ兆候)といい、中殿筋の筋力低下でよくみられます。

トレンデレンブルグ兆候

デュシャンヌ兆候

中殿筋とは

中殿筋は股関節外に開く(外転)する働きがあります。

※左後方より観察

 

歩行中に中殿筋が働かないと、骨盤や体幹が動揺してしまい、バランスを崩しやすくなります。

中殿筋のトレーニング方法

横向きに寝て、足を後方へ持ち上げていきます。爪先は床へ向けておくと中殿筋が働きやすくなります。

歩行時に爪先が上がっていない

歩行時、爪先が上がらないと足が床に引っかかり転倒しまいます。

転倒の多くは躓きによるものが多く、これは前脛骨筋の筋力低下によるものが多いです。

前脛骨筋とは

前脛骨筋は、足首を上げる働き(足関節の背屈)があります。

※前方より観察

 

足関節の柔軟性と前脛骨筋の筋力を測定する研究においても、背屈角度が少ない人ほど転倒率は高いと報告されています。

また、前脛骨筋は身体重心が後方に移動した際に足首を上げ、バランスをとる重要な筋肉でもあります。

前脛骨筋のトレーニング方法

小刻みな歩行

小刻みにちょこちょと歩いている人をみかけますが、このように歩幅が短くなる原因の一つとして下腿三頭筋の筋力低下が挙げられます。

下腿三頭筋とは

下腿三頭筋は、腓腹筋(外側頭・内側頭)とヒラメ筋の総称で、主に爪先立ちをする際に働く筋肉です。

※後外側より観察

 

下腿三頭筋は、歩行時接地している足が後方にいくと、最後の蹴り出しをするのに働く筋肉です。

下腿三頭筋が働かないと、蹴り出しが弱くなり、歩幅は短くなってしまいます。

歩幅が短くなると、反対足を上げている時間が短縮し、足が床に引っかかりやすくます。

また、下腿三頭筋は重心が前方に移動した際に動揺を止める働きがあります。

下腿三頭筋のトレーニング方法

図のように爪先立ちをします。転倒しないように何かに掴りながらすると良いです。

最後の一蹴りが弱い

歩行の最後には足の指を使って最後の一蹴りをすることで、歩幅が大きくなります。

その際に働く筋群が足趾屈筋群です。

足趾屈筋群とは

足趾屈筋群には、長母趾屈筋、長趾屈筋、短母趾屈筋、短趾屈筋、虫様筋があります。

これらの筋肉は、主に足の指を曲げる際に働きます。

身体が前方へ動いた際に下腿三頭筋同様に足趾屈筋群が強く働くため、もし筋力低下があれば上手くバランスをとることが難しくなります。

足趾屈筋群のトレーニング

タオルギャザーが効果的です。足の指でタオル引き寄せます。

高齢者はどのくらいの負荷量が適切なのか

筋力増強には、一般的に1RM(頑張って1回だけ持ち上げることができる負荷量)の70~80%の高負荷で実施するのが良いとされています。

しかし、高齢者では高負荷のトレーニングは疲労が強く出たり、関節を痛める危険性もあります。

高齢者は、1RMの60%の負荷を10回実施するだけでも効果があるといわれています。

例えば、12Kgの重りを10回持ち上げるのがやっとの場合1RMは16Kgとなります。

16Kgの60%は10Kgとなります。10Kgを10回、週2~3回、筋肥大までには少なくとも2週間以上はかかります。

また、筋力が増強したらその都度負荷量を見直していくことも大切です。

実施後2~3日で超回復により筋力が増強するため、週に2~3日の実施が望ましいでしょう。

ネットでRMについて調べてみると、早見表や便利な計算ツールなどもありますので、検索してみるとすぐに負荷量がわかるかと思います。

 

ただし・・・

僕の経験上、1RMを正しく計測して負荷量を設定している高齢者をみたことがなく、実用的な設定方法ではないといえます。

高齢者の筋力トレーニングにおいては、習慣化することが大切であり、たとえ軽負荷でも毎日行うほうが良いと考えられます。

負荷量のおおよその目安は、次の日に疲労が残らない程度としておくと良いでしょう。

高齢者が高負荷の筋力トレーニングを行うと、次の日に動けないくらい疲労することもありますので、負荷量にはくれぐれも注意しましょう。

まとめ

高齢者でもできる転倒予防のための筋力トレーニングをまとめてご紹介しました。

転倒原因のすべてが筋力というわけではなく、感覚系や姿勢反射などその他の要因も転倒に関与しています。

筋力は足から衰えるといわれるように、転倒には加齢に伴う下肢の筋力低下は大きく影響しています。

筋力は感覚系や姿勢反射を作用させる土台でもあり、筋力なくしてそれらの機能を上手く使うことはできません。

まずは、土台となる筋力をしっかりと鍛えて、転倒しない身体を作っていきましょう。

 

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