大腿骨頚部/転子部骨折は高齢者に多い骨折の一つであり、僕の病院でも関わることの多い疾患の一つです。
今回は、大腿骨頚部/転子部骨折の時期別リハビリの目的について解説します。
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大腿骨頚部/転子部骨折後のリハビリの流れ
大腿骨頚部/転子部骨折を受傷した場合、そのほとんどが手術を行います。
手術やリハビリ方法については、こちら↓で詳しく解説しています。
参考記事)
大腿骨頚部骨折の手術について
大腿骨転子部骨折の手術について
手術が無事に終われば骨癒合を待つだけではなく、同時に筋力が衰えないようにしたり、関節を動かしやすくするためのリハビリを行います。
その役目を担うのが理学療法士や作業療法士です。
骨折後のリハビリの時期としては、急性期、回復期、維持期(生活期)があります。
その時期に従って、リハビリを受ける病院やサービスも変わります。
急性期のリハビリ
急性期とは、骨折や手術の影響で全身管理が必要な時期のことをいいます。
痛みや手術したところがまだ落ち着いておらず、それらを考慮してリハビリを進めていくことになります。
急性期リハビリの目的
①日常生活動作の早期の自立
過度な安静は、廃用症候群や合併症を引き起こし、そのための治療が必要になったり、回復が遅れることもあります。
急性期においては、まずは早期離床を念頭にリハビリを進めていくことが大切です。
ただし、手術の影響を強く受けている時期でもあるため、痛みが強かったり、貧血や起立性低血圧に注意しながら段階的に進めていきます。
急性期にみられる炎症反応について)
術側の荷重許可がでているようなら、痛みの程度をみながら徐々に荷重訓練を開始していきます。
ある程度の骨癒合が得られれば、骨の長軸方法への荷重はむしろ骨強化を図ることができるため、前述した通り過度な安静は避けるべきです。
また、人工骨頭置換術をしている場合、特に急性期は脱臼のリスクが高い時期でもあります。
そのため、医師や理学・作業療法士などから脱臼リスクについての説明や動作指導を行います。
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回復期のリハビリ
回復期とは、症状が安定に向かっている時期をいいます。
この時期になると、患者さんは急性期病院(または病棟)から回復期病院(または病棟)へ移動します。
回復期リハビリの目的
①移動能力の再獲得
②自宅または施設退院に向けた生活の構築
大腿骨頚部/転子部骨折後にみられる機能障害は、主には痛み、関節可動域制限、筋力低下の3つです。
急性期に比べて、痛みの程度は軽減しているものの、まだ痛みを強く訴える患者さんも多いです。
そのため、痛みの程度を確認しながら関節可動域訓練や筋力増強訓練、歩行訓練を段階的に進めていきます。
歩行訓練では、平行棒歩行から開始し、歩行器や歩行車、杖、可能なら独歩へと進めていきます。
また、回復期では退院後の生活環境を確認するため家屋調査というものを行います。
家屋調査について)
患者さんが退院してからも安全に、そして安心して暮らせるように、理学療法士や作業療法士から退院後の生活指導やサービスの提案をします。
維持期(生活期)のリハビリ
維持期(生活期)とは、症状の回復スピードが緩やかになる時期のことをいいます。
通常、半年経過した場合は維持期にあたります。
回復期の病院から自宅に退院したり、施設または療養病院に移動します。
維持期リハビリの目的
①生活の再建
②活動の質と量の維持・向上
③転倒予防
維持期のリハビリは、回復期と違ってリハビリの回数が極端に少なくなり、1回のリハビリでストレッチや筋トレをしても、他の時間に動かなければリハビリの効果は薄れてしまいます。
そのために、機能を維持するための自己管理が大切になってきます。
中には、回復期でリハビリを完結され、退院してからも自分でストレッチをしたり、筋トレをして機能維持や生活の質を保てている人もいます。
しかし、全員がそのように自己管理できる人ばかりではないのが現状であり、維持期においては外来や訪問、通所リハビリなどを利用し、自主トレを指導または確認することもあります。
また、転倒して骨折してしまった恐怖心から極端に活動性が低下する「転倒恐怖感」に陥る人もいます。
訪問リハビリでは、理学療法士が利用者さんと一緒にスーパーまで行き、安全面や体力面を評価することもあります。
このように、理学・作業療法士は利用者さんの精神面もみながら、生活を再建していくことになります。
まとめ
高齢者に多い大腿骨頚部/転子部骨折について、時期別リハビリの目的を簡単に解説しました。
時期によって、症状も違えばリハビリを受ける場所も時間も変わります。
その時々にやっておかないといけないこともあり、リハビリをする側も受ける側も、今どの時期にあるのかを知っておくことはとても大切なことです。
リハビリをスムーズに進めていくためには、時期ごとのリハビリの目的をしっかりと把握しておきましょう。