今回、若手理学療法士や作業療法士に向けて情報発信をしようと思います。
理学療法士や作業療法士なら家屋調査って聞いたことありますよね。
学生時代にも、家屋調査に行ったことがある人もいると思います。
僕は回復期リハビリテーション病院に勤務していますので、家屋調査に行く機会が多いです。
僕の経験から、教科書には載っていない家屋調査の重要なポイントをお伝えします。
これで家屋調査に対する不安が解消されることを期待しています。
是非参考にしてください。
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家屋調査とは
家屋調査とは、患者さんの家もしくは施設に理学療法士や作業療法士が訪問することをいいます。
患者さんが退院しても安全に生活ができるのかを見たり、必要であれば手すりの設置や段差解消の提案をします。
家屋調査って、慣れないうちはどう動いたらいいのか、何を知っておけばいいのかわからないことが多いと思います。
特に若手理学療法士や作業療法士、もしくは今まで家屋調査に無縁だった療法士もいろいろ不安になると思います。
家屋調査において、重要なのは事前準備です。
家屋調査をスムーズに行うには、事前準備で9割決まると言ってもいいでしょう。
情報収集
まずは、患者さん、家族から可能な限り情報収集をしておきましょう。
介護保険や介護サービスの有無
元々買い物や掃除はヘルパーがしていたのか、それとも患者さんや家族がしていたのかを聞いておきましょう。
患者さんの役割を明確にしておくと患者さんの元々の行動範囲がある程度わかります。
家屋環境
できるだけ細かく聞いておいた方が良いです。
患者さんや家族に良く質問するのが、
●「家の中に手すりはありますか?」
●「手すりはどこにどのように取り付けていますか?」
●「段差はありますか?」
※特に玄関は必ず聞いておいたほうが良いでしょう。
●「階段はありますか?よく昇りますか?昇る必要はありますか?」
※洗濯干しは2階でするケースは多いです。
もっと動ける患者さんは、屋外の情報も聞いておきましょう。
●「買い物へはどのくらいの距離をどうやって行きますか?」
日頃の訓練で退院後をイメージしておく
脳卒中片麻痺の場合
例えば、手足に重度の運動麻痺、高次脳機能障害も顕著、起きたり、車いすに移るのも全介助が必要な場合、慣れた理学療法士の頭の中では、「歩行の自立は難しいなぁ~、車いすで退院することになるかなぁ~」となっています。
大腿骨頸部骨折、認知症を伴う場合
「元々家事もしていたって言う割に認知機能は低下しているなぁ、火の後始末とか難しいかも。痛みもなかなかとれず臥床傾向だし、屋外を一人で歩くのは危ないかも」とイメージしておきます。
現在の身体機能や動作能力から、退院後の生活をイメージしておきましょう。
理学療法士や作業療法士が知らない情報は他部署から情報収集する
看護師や社会福祉士は、理学療法士や作業療法士の知らない患者さんや家族の一面をみている場合があります。
看護師から
夜間の排泄状況や薬の管理が患者さん本人でできているのかを聞きましょう。
社会福祉士から
家族は介護に協力的か?
患者さんの状況を理解しているか?
(以外とわかっていない家族も現実います。)
などを聞いておきましょう。
よくあるのが、あまり経済的に裕福でない家庭の場合、迂闊にホイホイと住宅改修や福祉用具を提案できないので合わせて情報収集しておきましょう。
家屋調査時の見るべき視点を明確にしておく
事前情報を元に手すりや段差解消を検討しておく
どこに手すりが必要なのか、段差の解消が必要なのかを予め決めておきましょう。
家屋調査前に患者さんの移動手段をある程度決めておく
伝い歩き?手すり歩行?歩行補助具?車いす?
どの移動手段になりそうか予めイメージしておきましょう。
自立度をイメージしておく
病院は床がフラットでスペースもかなり広くとられています。
そのため、身体に障がいをもった患者さんは病院の環境に合わないことがあります。
病院では、歩行の自立が難しい場合でも家の中が狭い場合は伝い歩きのほうが安定していることも多くあります。
重度介助が必要な患者さんの場合
家族は在宅に退院させるべきか、施設に退院させるべきか迷っていることがあります。
施設へ入所するにしても、部屋の空きがなければ申請しても入所するまで時間がかかります。
そんなときは、早めに家屋調査を実施し、家の中を車いすでも暮らせるのか見ておくようにしましょう。
在宅が難しいとなれば、すぐに施設入所の手続きができるようにしておきます。
在宅に応じた訓練をしておく
元々室内は伝い歩き、屋外はシルバーカーを使用していた患者さんの場合
杖歩行の練習をするよりか、伝い歩きやシルバーカー歩行の練習をしておくほうがより実用的です。
たとえ屋外歩行の練習が進んでいなくても、家屋調査前に数メートルくらいは練習しておくとよいでしょう。(デイサービスなどで使用するかも)
ベッドなんか置きたくない!と強く希望する患者さんの場合
こういう患者さん結構しますね。
その場合は、床から立ち上がる練習も必要です。
借家で手すりが取り付けられない
トイレやお風呂、玄関を手すりなしでも動作が可能か確認しておきましょう。
借家でも大家さんによっては、手すりの取り付けを許可してくれることもあるので事前に聞いておくと良いでしょう。
もし、どうしても手すりが必要なら、ベストポジションバーやたちあっぷなども取り付け可能です(これは住宅改修ではありません)。
手すりが取り付けられなくても、こうして福祉用具を上手く利用すれば大丈夫です。
もちろん介護保険を持っていれば割引きされます。※自己負担額については後述
●ベストポジションバー
●たちあっぷ
他にもたくさん福祉用具はありますよ。
ケアマネジャーに聞いたり、業者にカタログを依頼すると良いでしょう。
家屋調査に行ったときの理学療法士・作業療法士の動き
導線を確認
ベッドからトイレ、リビングなど主に移動する範囲を把握しましょう。
実際に患者さんに動いてもらい安全性を確認します。
また、庭に出るのが日課の患者さんもいますので、動作を確認しておきましょう。
写真を撮る
患者さんや家族に説明し、室内(場合によっては自宅周辺も)の写真を撮っておきましょう。
後で見返したり、ケアマネジャー用の書類作成に使われます。
メジャーで測定
便座やベッド、椅子の高さ、段差などを測定していきます。
慣れていないと関係ない個所も測定しがちですが、時間がかかってしまいますので優先順位を考えて測定してくださいね。
家屋調査に行くと患者さんは動き回ることが多い
久しぶりに家に帰ると大半の患者さんは、病前に戻った気になり動き回ります。
かなり危険です。必ずどこかに座ってもらいましょう。
常にそばにいるなどの対策も必要です。
自己負担額
介護保険制度について、ここでは自己負担額について簡単にお伝えしておきます。
基本的には自己負担は1割です。
ただし、第1号被保険者(65歳以上)で、一定以上の所得がある方は2割負担になります。(2015年4月以降)
この一定所得というのが、合計所得金額160万円以上で、尚且つ単身で年金収入のみの場合年収280万円以上、2人の世帯で346万円以上の場合を指しています。
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福祉用具には購入と貸与がある
介護保険をお持ちですと、自己負担額に応じて割引きされます。
購入
年間10万円を制限として、購入費用が支給されます。(自己負担の1割または2割を含む)
以下の福祉用具は購入が原則です。
なぜ購入が原則なのか?→使い回しは不潔だからです。
入浴や排泄に使用する腰掛け座、腰掛け便座底上げ、特殊尿器、入浴補助用具、簡易浴槽、移動用リフトのつり具は購入が必要です。
貸与(レンタル)
費用の1割または2割を負担します。
一定の例外を除いて、要支援1・2、要介護1は下の青色の福祉用具のみレンタルが可能です。
ベストポジションバーやたちあっぷ、スロープなど住宅改修を伴わないもの、歩行器、歩行補助杖(T字杖は購入になる)
車いすや車いす付属品、特殊寝台付属品、床ずれ防止用具、体位変換器、認知症徘徊感知機器、移動用リフト(つり具以外)、自動排泄処理装置
まとめ
家屋調査は、場数を踏めば慣れてきますが、初めての場合や数回しか訪問したことがないような場合は不安でいっぱいだと思います。
ここですべての段取りをお伝えするのは難しいですが、退院後の生活をイメージして事前準備をしておけば間違いなくスムーズに進みます。
若手理学療法士や作業療法士は是非参考にしてください。
そして、患者さんに還元していただければ幸いです。