理学療法士の実習生は、症例患者さんを担当すれば症例レポートというものを作成していくと思います。
そのレポートの中で、理学療法評価「全体像」を記載すると思いますが、実習生はこの全体像というものが上手く捉えきれていない場合が多いと感じます。
僕自身、全体像はとても重要視していて、おそらく臨床で働く理学療法士もしくはその他医療従事者も同様に、全体像を重要視しているのではないかと思います。
今回は「患者さんの全体像」に焦点をあて、どのように全体像を把握していけば良いのかを解説します。
また、実習生の間でも「患者さんの全体像」をレポートにどう書いたら良いのかわからないという人が多いので、その書き方についても解説します。
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全体像とは
辞書で調べてみると、全体像とは一つのまとまりとしてみた物事の姿や形のことをいいます。
これを患者さんに当てはめてみると、性格や身体機能、そのときの精神状態などの一つひとつがその人自身を形作っているといえます。
全体像を客観的に把握すること
全体像を把握する場合に注意したいのは、主観や分析を挟まないことです。
見たままの事実を捉えること、つまり客観的であることが重要です。
理学療法評価には、観察→分析→原因という一連の流れがありますが、これをごちゃ混ぜに考えてはいけません。
患者さんに興味を持つこと
患者さんの全体像を上手く捉えることができない理由として、患者さんのことを知ろうとしていないことが挙げられます。
少し語弊がある言い方なので、言い方を変えると患者さんのことを知ろうとする余裕がないように思います。
実習生の場合、身体機能の評価や治療のことで頭がいっぱいになりがちです。
あなたの親しい友達や家族の特徴を挙げるとしたら?
もし、あなたが親しい友達の特徴を挙げるとしたらどんな特徴を挙げるでしょうか?
親しい友達でなくても親や兄弟はどんな特徴があるのでしょうか?
友達や家族は、どんな人物でどんなことに興味があるのでしょうか?
このように考えてみれば、その人らしい特徴を挙げることができると思います。
注意深く患者さんの言動を観察してみてください。
沢山の特徴ある言動を集めることができれば、親しい友達や家族と同じように、患者さんもどんな人なのかを判断することができるはずです。
実習生が悩む「患者さんの全体像」の書き方
実習生のレポートを読んでみると、患者さんの全体像がこのように記されていました。
「明るくお話好きな方で、リハビリには積極的に取り組まれている。」
ちなみに僕が勤めている病院は、入院患者さんが50人くらいいます。
ある程度入院患者さんのことはわかるのですが、この文章を読んだけではどの患者さんのことをいっているのかわからないですよね。
ほとんどの患者さんがこの文章に書いてある人物に当てはまるでしょう。
しかも、「明るくお話し好き」というのは主観や分析が含まれています。
明るいかどうかは受け手の主観であり、お話が好きかどうかも分析にあたります。
もしかしたら、気を使って笑顔でお話をしているのかもしれませんし、少々穿った見方をすると何でも話を聞いてくれるように巻き込んで患者さんペースに引き込もうとしているのかもしれません。
そこまでは考えすぎで、本当に見たまんまお話し好きなのかもしれません。
会って間もない人がどういう人なのかを判断するには時間がかかります。
「どういう人」かが判断できるまでは、特に丁寧かつ毅然とした態度を貫き、注意深く言動を観察するようにしましょう。
実習生が挙げた全体像に、特徴を足してみたらどうなるでしょう?
「いつも身だしなみを整えており、笑顔でお話をされ、リハビリには積極的に取り組まれている。」
少し患者さんの特徴が見えてきましたね。
もう一つ特徴を足してみましょう。
「いつも身だしなみを整えており、笑顔でお話をされ、リハビリには積極的に取り組まれている。担当セラピストの名前は覚えておらず、部屋やトイレの場所を間違えることがある。」
結構具体的になりましたね。
先ほどの例では、精神面のみ全体像を説明しましたが、身体機能の全体像も付け加えるとよりその人の特徴が見えてきます。
例えば、杖で移動しているのか、車いすを使っているのかなどを足してみましょう。
身体機能の特徴を足してみると
「いつも身だしなみを整えており、笑顔でお話をされ、リハビリには積極的に取り組まれている。担当セラピストの名前は覚えておらず、病棟では一人で車いすを使用しており、部屋やトイレの場所を間違えることがある。」
さらに、疲れやすいなどの特徴があるなら付け加えてみると良いでしょう。
レポートにもこのように書かれていれば、おそらくどの患者さんのことを言っているのか判断できると思います。
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まとめ
患者さんの全体像について解説しました。
全体像は、大きく分けると身体機能と精神機能に分けられます。
精神機能は、ICF(International Classification of Functioning Disability and Health)でいうところの個人因子に当たりますね。
個人因子はとても重要であり、治療効果にも大きな影響を与えます。
全体像を把握するには、まずは患者さんに興味を持つことです。
少ない情報から分析を始めるのではなく、より多くの客観的情報からその人らしさを見い出せれば良いのではないでしょうか。