インテックス大阪で開催されていた「バリアフリー2017/慢性期医療展2017/看護未来展2017」に行ってきました。
今年は第23回になるよう。
展覧会の会場はこんな雰囲気です。(場内写真撮影禁止なので、細かいところは撮影できないですが・・・)
この催しは、西日本最大級の介護・福祉・医療の総合福祉展です。
バリアフリー、慢性期医療、看護の3つのブースに分かれていて、各企業が最新かつ改良を重ねた日常用品や生活用品を展示し、紹介するイベントです。
僕自身「今年は行こう」と毎年考えてはいるものの、いつもながらすっかり忘れてしまってました。今年はたまたま休みだったので「行ってみるか」といった緩い感じでフラフラ行ってみることにしたのです。
いやー企業さんはほんとよく考えているなぁと感心するものばかりでしたので、少しばかりどんなものがあったのか紹介したいと思います。
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歩くことを諦めない歩行器「たぁーくん」
引用)http://www.tsm-tk.com/kaigo.html
僕は理学療法士なので歩行機器に関して最初に目がいってしまいます。
この歩行器のいいなと思った点ですが、起立や着座の際に肘置きの高さが手動で調節できます。
動画だとわかりやすいので、こんな感じ↓です。
歩行って移動する準備として立ち上がる必要があるのですが、そこが上手くできない高齢者の方は非常に多いです。
重心を上方へ移動させるわけですので、それだけ筋力も要しますのでね。
着座も同様に苦手は人は多く、ドスンと尻もちを付くように座ってしまうこともよくあります。
起立と着座が安全かつ楽にできるので、良いところに目をつけているなぁと感心してしまいました。
ただ、欠点を一つ挙げるとすれば、この歩行器は介助者が傍にいるものとして考えられていますが、介助者は歩行器の前方に居ないといけなさそうですね。
これだと筋力の衰えた高齢者がもしグリップを離してしまった際に後方へ転倒してしまう恐れがあります。
ですので、サイド側からセッティングできるように改良されればより良いんじゃないかと思いました。
Ta-Da Chair 杖と椅子がセットになった
杖と椅子がセットになったこの杖、良いんじゃないかと思いました。
押し車だと椅子になって座って休憩することができるんですが、杖で外出した場合休憩しようと思っても立って休憩するか、どこか腰掛けるところを探さないといけません。
もう少し頭を柔らかくして、「杖も椅子にできるんじゃないか」ってノリで開発されたような杖ですね。
椅子なんかにしたら重たいじゃないかと思いますね。
重量は920g。
一般的な杖の重さは300gくらいです。約3倍の重さになっていますが、持ち上げてみるとそんなに重たく感じなかったですね。
この杖が適応になりそうな人
・連続歩行はしんどいが休憩しながらなら歩ける高齢者
・間欠性跛行がみられる人
※間歇性跛行:途中から殿部や足が痛くなり歩けなくなる。休憩すれば再び歩けること
洗わない入浴法「ライスパワー」
洗わない入浴法とは、どういうことかというと、お風呂に入るときでも石鹸を付けたタオルで身体をゴシゴシと洗わないということです。
高齢者の場合、ゴシゴシ洗うことで皮膚にダメージを与えたり、入浴後に乾燥するなどしてかゆみの原因にもなります。
お米を原料にした入浴液を入れて浸かるだけで、
①清浄、②保温・美肌、③スキンケア、④温浴持続、⑤リラクセーションの効果をもたらすよう。
お米なので、当然口に入っても全くの無害です。
この入浴液、良いんじゃないかと思ったポイント
・高齢者の入浴の負担軽減(身体洗うのは結構体力を使う)
・病院施設では、身体を洗う時間と労力の削減
従来のポータブルトイレの欠点を補う「ラップポン」
作業療法士などでは、排泄動作の際に患者さんにポータブルトイレの使用を勧めることは多いと思います。
ポータブルトイレを勧めたけれど、実際に自宅で使用しているケースは、実はかなり少ないという事実をご存知でしょうか。
その理由として、
・臭いが気になり、部屋で排泄をしたくない
・毎回の後始末がめんどくさい
などがあり、大半はポータブルトイレを使用しなくなります。
そんな欠点を補ってくれているのが「ラップポン」です。
その名の通りで、排泄物を自動でラップに包んでポンとトイレの下から出てくる商品です。
引用)http://www.wrappon.com/about/index.php
まず、この凝固剤を入れておけば、排尿したときに尿を固めてくれて、液体感がなくなり後で処理しやすくなります。
自動ラップ式トイレ「ラップポン」▼
リモコン操作で簡単に排泄物を袋に包んでくれます。
パナソニックの「デジタルミラー」。リハビリに面白さと効果の実感を!
ただ単に立位バランス訓練や座位で上肢訓練などやってもちょっとつまらないなって思う患者さんは多いんですよね。
療法士も楽しませようとその場を盛り上げたりもしますが、お互い飽きるのも時間の問題というものです。
あと、効果あるのかも不透明で患者さんのモチベーションをキープするのも大変。
リハビリに面白さと効果の実感を!
パナソニックは介護用品なども色々販売している会社ですが、リハビリ分野にも参入してきています。
僕達療法士としては、ありがたいことこの上ないです。
デジタルミラー
引用)http://sumai.panasonic.jp/agefree/products/rehabilitation/digital_millor/
デジタルミラーは、ミラーに映る自分の姿を見ながらゲーム感覚でバランス訓練や上肢訓練ができる機器です。
立位で重心移動をして、映像に映っている金魚をすくう▼
引用)https://persol-tech-s.co.jp/i-engineer/product/panasonic
上肢を動かして、映像のシャボン玉を割っていく▼
引用)https://persol-tech-s.co.jp/i-engineer/product/panasonic
他にもいろんなゲームや運動方法があるみたいで、しかも測定結果が数字で表されるので効果判定がしやすいのが良いですね。
病院や施設向けに開発されているようですので、こういった機器がどんどん普及していけばいいなと思います。
生活のちょっとした不自由を各企業が懸命に改善しようとしていると感じた
ここで紹介しきれないくらいの機器や商品があったのですが、以下に僕が感じたことを書いていきます。
各企業がこれだけ改良に改良を重ねて商品の開発に取り組んでいて、時代とともに環境もどんどん変化していっているなぁと感じた展覧会でした。
僕らが行うリハビリって、実は10年前とやつてることはほとんど変わってないんですよね。
そのことにちょっと危機感すら覚えてきて怖くなりましたね。
療法士は人を対象にする仕事ですので、人の手でできることはたかが知れています。いくら最新の徒手療法を取り入れたところでそれほど効果が見込めないのが現状です。
ゴットハンドなんてものはほんとはなくて、例えば高齢者が100m10秒台で走るようにするなんてできないですよね。それと同じように難しいものは難しいんです。
高齢化が進む日本においては、身体の改善よりも環境を整備してより安全で安楽に生活できるようにしていくことのほうが大切なんだと思います。
高福祉大国のデンマークやスウェ―デンなどの欧州では、何年も前から介護・福祉用具が充実していますからね。
日本もそうなれば、介護される人、する人にとってより良い生活になるんじゃないでしょうか。
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療法士は身体を熟知した専門家としての立場から意見を言えると良い
しかし、便利な道具に頼りすぎると、下手すれば一日ベッドから動かなくても食事をして、排泄をして、お風呂入れてってできてきそうですね。
そんなことも可能な時代になってくるんじゃないか。
便利な道具に頼りすぎるのは、人間の退化を招くので、頼るにしても必要な人に使うといった選択肢の幅として見ていけば良いかと思います。
そんなときに重要な立場なのが、僕達療法士なんじゃないでしょうか。
療法士に求められるもの
療法士は、患者さんのできること、できないことを明確に分けることができます。
更に、今後訓練すれば回復するのか、しないのかも根拠を持って説明することができる専門家です。
療法士は、その患者さんには何が不足しているかがわかるので、各企業と密に連携できれば更によい生活を提案できるようになるのではないかと思います。