訪問リハビリで起こる感染症一覧と評価|どんな症状?何を評価すべき?

訪問リハビリは、利用者の自宅という「生活の場」で行うため、病院より感染症に気づくのが遅れがちです。
家族が気づかないまま症状が進行していることも多く、療法士が異変の“最初の発見者”になるケースも珍しくありません。
この記事では、訪問リハビリで遭遇しやすい感染症を
- どういう症状なら疑うか
- 訪問リハで何を評価すべきか
まで分かりやすくまとめました。
目次
呼吸器系の感染症
● 肺炎(誤嚥性肺炎を含む)
疑わしい症状
- 発熱(特に37.5℃〜38℃以上)
- せき・痰が増える
- 呼吸が荒い、息切れ
- 食欲低下
- なんとなく元気がない
- 誤嚥後のむせが増えた
評価すべきポイント
- 呼吸数(20回以上は要注意)
- SpO₂(92%以下は危険)
- 声のかすれ、湿った咳
- 胸郭の動きの左右差
- 浮腫・脱水の有無
- 嚥下時のむせの増加
● 気管支炎
疑わしい症状
- 軽い発熱
- しつこい咳
- 痰が増える
- 歩行で息が上がりやすい
評価すべきポイント
- 咳の回数
- 喀痰量・色(黄色、緑色は要注意)
- 呼吸音の異常(ヒューヒュー音)
- 呼吸数
● インフルエンザ
疑わしい症状
- 急な高熱(38℃以上)
- 関節痛・筋肉痛
- 全身倦怠感
- 悪寒
- 食欲低下
評価すべきポイント
- 体温
- 水分摂取量
- 活動量の変化
- 隔離環境が整っているか
● 新型コロナ(COVID-19)
疑わしい症状
- 発熱
- 咳
- 倦怠感
- 味覚・嗅覚異常
- 呼吸苦
評価すべきポイント
- 呼吸数
- SpO₂
- 同居家族の状況
- 訪問時の換気状況
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胃腸系の感染症
● ノロウイルス/感染性胃腸炎
疑わしい症状
- 嘔吐
- 下痢
- 腹痛
- 脱水症状(口渇、尿量低下、めまい)
評価すべきポイント
- 嘔吐回数
- 下痢の回数と性状
- 皮膚の乾燥
- 尿量(濃い尿は要注意)
- 活動量の低下
皮膚・軟部組織の感染症
● 蜂窩織炎(ほうかしきえん)
疑わしい症状
- 足の赤み
- 腫れ
- 熱感
- 圧痛
- 皮膚が突っ張る
- むくみが急に増えた
評価すべきポイント
- 左右差(左右比較は絶対)
- 触診での熱感
- 痛みの程度(10段階)
- 皮膚の色調
- 浮腫の増悪
● 帯状疱疹
疑わしい症状
- 片側だけの帯状の赤み・水ぶくれ
- 強いヒリヒリ痛
- 衣服が触れるだけで痛い
- 前日からの神経痛様の痛み
評価すべきポイント
- 発疹の位置(左右片側か)
- 発疹の広がり具合
- 水疱の状態(破れているか)
- 触れた時の痛みの程度
- 全身倦怠感の有無
※疑わしければ リハ中止 → 受診が基本
● 褥瘡の感染(創感染)
疑わしい症状
- 強い臭い
- 黄色〜緑の浸出液
- 発赤の広がり
- 痛み増強
- 発熱
評価すべきポイント
- 創部の色・臭い・滲出液の量
- 周囲皮膚の状態
- 体温
- 栄養状態
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尿路・泌尿器系の感染症
● 尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎)
疑わしい症状
- 発熱
- 尿が濁る
- 強い尿臭
- 頻尿
- 残尿感
- なんとなく元気がない
高齢者は症状が出にくく、“急に元気がない” だけでも疑う。
評価すべきポイント
- 尿の色・におい
- 体温
- 活動量の低下
- 陰部の清潔状態
- カテーテルの有無
口腔内の感染症
● 口腔カンジダ
疑わしい症状
- 口の中が白い
- 痛みで食べられない
- よだれが増える
- 食欲が落ちる
評価すべきポイント
- 舌や頬の白苔の有無
- 食事量
- 嚥下時の痛み
- 義歯の清潔度
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眼・耳の感染症
● 結膜炎
疑わしい症状
- 目の赤み
- かゆみ
- 目やに
評価すべきポイント
- 充血の程度
- 涙・目やにの量
- 痛みの有無
● 中耳炎
疑わしい症状
- 耳痛
- 発熱
- ぼーっとする
- 耳だれ
評価すべきポイント
- 体温
- 痛みの程度
- 注意力低下の有無
慢性疾患と関連した感染症
● 糖尿病による創感染
疑わしい症状
- 小さな傷が治らない
- 靴ずれが悪化
- 足の黒色変化(壊疽)
評価すべきポイント
- 足の皮膚状態
- 浮腫
- 傷の大きさ・深さ
- 下肢の温度
● 免疫低下による日和見感染
ステロイド、抗がん剤使用者は感染症が重症化しやすい。
評価すべきポイント
- 全身状態
- 体温
- 活動量
- 発疹・浮腫・倦怠感など
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訪問リハで感染症を疑ったらどうする?
● すぐにリハ中止
無理に動かすと悪化する可能性。
● 家族・訪問看護へ連絡
症状の共有と受診の検討。
● ケアマネへ情報提供
サービス調整や医療連携の必要性あり。
● 必要なら受診を強く促す
特に肺炎・蜂窩織炎・帯状疱疹は早期治療が重要。
まとめ
訪問リハビリでは、呼吸器、胃腸、皮膚、泌尿器、口腔内など、さまざまな感染症に遭遇します。
重要なのは、
- どんな症状が“怪しい”のか
- 何を観察・評価すべきなのか
- リハを続けていいかどうかの判断
これらを素早く行うことです。
在宅では医療者が少ないため、“療法士が早期発見につなげる” ことが利用者の安全に直結します。

