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理学療法

脳卒中片麻痺患者のバランス評価とリハビリ訓練を徹底解説

投稿日:

脳卒中により片麻痺を呈すると運動麻痺や感覚障害などの機能障害を患うのに伴い、座位や立位、歩行におけるバランス能力も低下していることが多いです。

今回は、脳卒中片麻痺患者のバランス評価やリハビリ訓練の方法ついてわかりやすく解説します。

 

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バランス能力とは?おさらい

以前にもバランス能力の定義とは?構成要素のまとめという記事を書いていますので、詳しく知りたい方はそちらを読んでいただくと理解が深まると思います。

 

バランス能力には、

・身体機能(筋力や感覚系、認知系)

・課題(座位や歩行)

・環境(不安定な路面など)

などの3つの要素が影響し合っています。

「支持基底面」と「重心」、「安定性限界」について

なぜ人はバランスを保つことができるのかを説明しておきます。

例えば、両足で立っていたとしたら、足の接地面が支持基底面となり、重心は支持基底面内に必ず収まっています。

ただし、同じように両足で立っていても、すぐにバランスを崩してしまう人がいます。

そのような人は安定性限界が低いといいます。

 

もし、安定性限界を超え、重心が支持基底面から外れるとその姿勢を保つことができなくなります。そのまま転倒するか足を踏み出し、新たな支持基底面をつくる必要があります。

脳卒中片麻痺の重心位置と安定性限界について

脳卒中片麻痺では、立位姿勢においては非麻痺側に偏っている場合が多いです。

左:非麻痺側、右:麻痺側

 

安定性限界の範囲も小さく、当然その中でしか重心移動はできません。

片麻痺患者さんではこの安定性限界をいかにして広げ、また限界を認知してもらうかが重要になります。

脳卒中片麻痺でバランス能力が低下するのはなぜ?

脳卒中片麻痺では、身体的特徴として左右非対称性がみられます。

その非対称性や運動麻痺を含む筋力低下により、麻痺側に荷重がうまく乗らないという問題もあります。

たとえ筋力があったとして、

・筋緊張異常

・協調運動障害

・不随意運動

などで十分に筋をコントロールできずに、姿勢バランスが取りづらくなります。

 

加えて、筋緊張異常などで二次的に引き起こされる

・関節可動域制限

・疼痛

などがあるとさらに身体の自由度は低下してしまいます。

 

そして、バランス能力には感覚機能は欠かせません。

感覚系の機能障害としては、

・体性感覚の低下または過敏

・視覚異常

・前庭機能の低下

などがあると姿勢調節が難しくなります。

 

高次脳機能障害の影響も見逃せませんね。

認知・知覚系では、注意障害、見当識や記憶、問題解決能力の欠如があると容易に安定性限界を超え、バランスを崩す原因にもなります。

また、pusher  syndrome(プッシャー症候群)により、身体図式の崩れ、視野障害・空間把握異常、失行なども姿勢制御に関わりす。

※プッシャー症候群の詳しい説明は後述

バランスを保つための無意識の感覚

脳機能は実は複雑で、単一なインプット(感覚)とアウトプット(運動)で運動が成り立っているわけではなく、互いに影響し合っています。

姿勢制御には、運動ー感覚(認知)ー運動といった流れがあり、それを担うのが内側運動制御系が関与しています。

内側運動制御系

内側運動制御系は、意識の感覚に関与する神経により成り立っており、以下の4つがあります。

これらの神経によりバランス能力が担保されています。

経路 感覚情報 働き
網様体脊髄路 あらゆる感覚(固有感覚などその他) 両側の体幹及び四肢近位の固定
前皮質脊髄路 固有感覚 同側の体幹及び四肢近位の安定に関与
視蓋脊髄路 眼球 反対の頭頸部の安定に関与
前庭脊髄路 眼球・前庭・固有感覚 同側の下肢伸筋を促通

小脳系

バランスの能力が低下しやすいものとして小脳の障害があります。

小脳は、大脳との入出力、脊髄や前庭系からの入力に関与しています。

小脳は運動学習にも大きく関係しており、ここの障害によって微妙な筋のコントロールができなくなってしまいます。

 

四肢からの感覚情報が、

・前・後脊髄小脳路(下肢の無意識の深部感覚)

・副楔状束核小脳路(上肢の無意識の深部感覚)

を通り、小脳に送られます。

つまり、小脳に障害が生じると、無意識の深部感覚障害が起こり、よってバランス能力も低下してしまいます。

予測メカニズム(フィードバック、フィードフォワード)について

姿勢・動作においてバランスをとるためには、随意的に運動を行う前に準備的な姿勢調節が必要になります。

これを予測的姿勢調節といいます。

例えば、足を一歩前に踏み出す直前に体幹のインナーマッスル(腹横筋や多裂筋)が働くとされており、このことをフィードフォワードといいます。フィードフォワードはほぼ無意識です。

そして、得られた結果から「もっとこうすれば良かった。」などと認知することをフィードバックといいます。

例えば、脳に異常がないような脊髄の不全麻痺では、上記のようなフィードバック、フィードフォワード機構に異常はありません。

そのため、たとえ片側の運動・感覚機能に障害が生じたとしても、比較的運動学習が構築されやすく、よってバランス能力も向上しやすくなります。

脳卒中により、大脳や大脳基底核、小脳などに障害が起きるとフィードバック、フィードフォワード機構が破綻するためにバランス能力が低下してしまいます。

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脳卒中片麻痺患者は、環境の変化に対して身体を適応できない

脳卒中では、前述した身体機能の問題により、環境の変化にも弱くなります。

脳卒中片麻痺では、安定性限界が縮小しているため、例えば悪路(砂利道や傾斜)などでは容易に安定性限界を超えてしまいます。

また、一定した路面ではフィードフォワード・フィードバック機構が機能したとしても、悪路や新たに経験する環境では、素早く身体を適応するのが難しくなります。

 

まずは脳卒中による損傷部位や程度を把握しておくこと、そして機能障害と残存機能を評価してリハビリを進めていくことが大切です。

脳卒中患者のバランス評価

脳卒中片麻痺患者のバランス評価について解説します。

バランス能力に影響しうる機能障害を評価

バランス評価が低下しうる機能障害を突き止めておく必要があります。

転倒原因の第1位に筋力低下が挙げられています。

特に、

・体幹(脊柱起立筋、多裂筋、腹横筋)

・下肢(大殿筋、中殿筋、大腿四頭筋、ハムストリングス、前脛骨筋、下腿三頭筋、足趾屈筋群など)

これらの筋は姿勢・動作の土台となるものですので、必ず確認しておきましょう。

 

そして次に大切なのは、感覚系です。

筋力に異常がなくても、その姿勢保持や制御に関わる上記の筋群を動作や環境に合わせて自由に動かせないと容易にバランスを崩してしまいます。

視覚障害、前庭系、体性感覚(深部感覚、表在感覚)も評価しておきましょう。

 

脳卒中片麻痺では、単純に片側の手足が動かしにくくなっているわけではありません。

脳損傷によって、筋緊張をうまくコントロールできないこともバランス能力に影響してきます。

 

注意障害、見当識や記憶、問題解決能力の欠如などの高次脳機能障害の有無も合わせて診ておきましょう。

静的バランスを評価

脳卒中片麻痺では、姿勢の左右アンバランスがみられることが多いです。

静的バランスとは、支持基底面内に重心を保つことをいいます。

 

どの方向へ重心や安定性限界が傾いているかを評価しておきましょう。

 

座位や立位で重要なのは、

・どの部分に荷重が乗り

・重心はどの方向へ傾いているか

・どこが崩れているか(骨盤?体幹?肩甲帯?)

の3点です。

これらを前額面、矢状面、水平面より観察します。

 

座位では、殿部や両足に荷重がかかっているはずですが、

・左右どちらの殿部に荷重がのってるのか

・麻痺側足でちゃんと支持できているのか

・左右、前後どの方向へ倒れそうなのか

・倒れそうなのはどこが崩れているのか(肩甲帯が下制している?骨盤が左へ傾ている?)

 

立位も同様に、

・左右どちらの足に荷重がのっているのか

・左右、前後どちらに倒れそうなのか

・どこが崩れているのか(骨盤?体幹?肩甲帯?)

 

もし、左右・前後どこかに偏っているとすれば、重心や安定性限界もそちらに傾いていることを意味しています。

そして、姿勢観察より崩れいてる原因が、筋力なのか、感覚なのか、高次脳機能障害なのかを仮説・検証をしていきます。

動的バランス評価

動的バランスとは、支持基底面内ギリギリまで重心を保つこと、または支持基底面が重心かから逸脱し、足を踏み出すなどで新たな支持基底面をつくることいいます。

 

動的バランスの評価としては、外乱刺激、内乱刺激とがあります。

外乱刺激 両肩甲帯、骨盤帯に各方面から加え、どのように方向に崩れやすいかを観察。
内乱刺激 座位または立位などで、左右、前後への上肢のリーチ動作を行う。

そのときの

①立ち直り反応

②平衡反応

③ステップ反応(保護伸展反応)

などをみていきます。

これら3つの方略についての詳しい解説は転倒しないための3つの方略とは?をご参照ください。

 

また、立位では

①足関節戦略

②股関節戦略

③ステップ反応

があったのかを観察します。

そのときの、反応の速さもタイミングもみておきましょう。

片麻痺患者のバランス検査(テスト)

脳卒中片麻痺では、支持基底面内の安定性限界は小さく、重心移動も苦手になっています。

どの程度までなら姿勢を保持できるのか、耐えうるのかを包括的・客観的に知っておくことも大切です。

カットオフ値も参考にしておくと良いでしょう。

①ファンクショナル・リーチ・テスト(Functional  Reach  Test:FRT)

両足を肩幅ほどに開いて立ち、一側上肢を90°挙上させ、そこからできるだけ遠くへ手を伸ばします。

FRTの実際

脳卒中片麻痺患者のカットオフ値

院内自立 25cm
転倒リスク 15cm未満

②タイムド・アップ・アンド・ゴー・テスト(Timd  Up  and  Go  Test:TUG)

椅子座位になり、合図で立ち上がり、3m席の目標物をできるだけ速く回り、もとの椅子に座るまでの時間を計測します。

TUGの実際

脳卒中片麻痺患者のカットオフ

院内自立 20秒以上
屋外自立 17秒以上
高齢者の脳卒中の転倒リスク 14秒以上

④ベルグ・バランス・スケール(Berg  Balance  Scale:BBS)

座位、立位、台昇降、ターンなどのバランスに関する14項目を評価します。(詳細はクリックしてご確認ください。)

PDFはこちら ☞ Berg Balance Scale

カットオフ

高齢者では45点以上が転倒リスクとされています。

脳卒中でも45~50点がカットオフとされていますが、軽度の運動麻痺患者さんには向かない場合もあります。

脳卒中片麻痺ではプッシャー症候群の評価

脳卒中片麻痺では、麻痺側ではほぼ支持しておらず、非麻痺側上下肢で床面を強く押している現象がみられます。

このことから「押す人症候群(プッシャー症候群:pusfer  syndrome)」といわれ、脳卒中急性期に多い症状の一つです。

プッシャー症候群は左片麻痺や感覚障害、半側空間無視、病態失認などの高次脳機能障害を合併していることが多く、バランス能力の不良になってきます。

プッシャー症候群

姿勢は、非麻痺側で床を強く押し、体幹・頸部は麻痺側に傾いています。

座位

立位

 

ボディイメージは崩れており、本人は傾いた軸が真っすぐと認知してしまっています。そのため、非麻痺側へ傾斜することに恐怖心はあるのですが、麻痺側に崩れることには恐怖心がないとった特徴があります。

実際の日常生活動作を観察

前述したように、バランス能力は身体機能だけでなく、課題環境の影響を強く受けるため、実際の日常生活動作もみておく必要があります。

座位

課題:座位でベッド横のものをとるなどで、容易に安定性限界を超え転倒に繋がる危険があります。

環境:座面が硬いほど姿勢が安定し、不安定な座面ほどバランスを崩しやすくなります。

立位や歩行

バランスを崩しやすい動作の特徴も把握しておきましょう。

歩行では、直進は安定しているけど、

課題:進行方向を変えたときにバランスを崩しやすい。後方移動の際にバランスを崩しやすいなど。

普段の生活では真っすぐだけ歩行することはむしろ少ないため、方向転換や後方移動などの応用動作もみておきましょう。

環境:屋外では、段差や傾斜、砂利道などの悪路な環境でバランスを崩す場合にありますよく通る道などの環境もみておく必要があります。

 

また、持久力が低下してくることで動作のパフォーマンスが落ちてくる場合もありますので、合わせて確認しておきましょう。

脳卒中片麻痺のバランス訓練

脳卒中片麻痺でよく行うバランス訓練のリハビリについて解説します。

脳卒中片麻痺の評価とリハビリの詳しい解説は、こちら▼を参考にしてください。

機能障害へのアプローチ

バランス能力の低下が何から起こっているものかでアプローチの方法は変わってきます。

バランス能力の原因に、筋力低下や感覚障害があるならそれらに対する機能改善を図ることが最優先です。

例えば、筋力低下があるなら筋力増強訓練を行います。

 

感覚障害がバランンス能力に影響しているのであれば、

・体性感覚入力を強化

・視覚的な代償を利用

装具を使う(荷重感覚を入れていく、または支持脚を補助)

安定性限界を認知させる訓練

脳卒中片麻痺では、安定性限界が縮小しているのに加え、安定性限界がどこまでなのかがわからない場合は多いです。

とはいっても、安定性限界をただ広げれば良いというわけではありません。

安定性限界を広げる行為は、身体機能の高め、自由度を広げる手段になりが、後遺症が残り、筋力や感覚障害が治らない場合もあります。

その際は、むしろどこまでが自分の安定性限界なのかを認知できることのほうが大切です。

リーチング訓練

座位

立位

 

このリーチ動作の目的は、「どこまでなら自分の姿勢を崩さずに保てるかを認知すること」です。

ですので、脳卒中の方ではただ単に目標物に手を伸ばすだけになっていないか、注意してみておきましょう。

非麻痺側へのリーチ動作は、プッシャー症候群への訓練にも効果的です。

不安定版を用いたバランス訓練

このようなバランスディスクの上に座位または立位で乗り、バランスを保持する訓練を行います。

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立位でバランスディスに乗ると、下肢の体性感覚情報を遮断するため、前庭機能や視覚の感覚訓練にもなります。

こちらは、脳卒中でも比較的軽度でバランス能力の高い人に向いている訓練です。

動的バランス訓練

通常、座位や立位ではバランスを保とうと静止しているわけではなく、多少揺れながらもその揺らぎの中で姿勢制御を行っています。

例えば、筋緊張がガチガチに高まっている人は、身体を拘束した状態となり、姿勢バランスを保つのが難しくなります。

ですので、筋緊張をニュートラルの状態にして、感覚を認知しやすい身体にしておきます。

そうすることで、身体の揺れを認知しやすくなり、バランス能力も向上していきます。

壁を利用した左右の重心移動

立位では、壁を目標物として左右への重心移動を促していきます。

(壁を利用することで、患者さんの恐怖心も軽減することかがあります。)

応用的なバランス訓練

脳卒中でも、比較的歩行能力の高い方では、

・片脚立位

・継ぎ足歩行

・方向転換

・後方移動

・側方移動

など、あらゆる訓練をしておきましょう。

 

重度の片麻痺の方では、長下肢装具を装着下でのリズムカルな歩行訓練も効果的です。

当然療法士による介助は必要になるのですが、リズムカルな荷重感覚により脊髄中枢パターン(Central  Pattern  Generator:CPG)が刺激され、無意識下での姿勢保持を促通する効果があります。

バランス能力が低下した人は福祉用具を使う

脳卒中片麻痺患者では、中等度から重度の片麻痺を呈している場合には、T字杖や四杖を使用してバランスを補助することは多いです。

安定性限界が認知できれば、杖を使用するなどして支持基底面、安定性限界を代償的に広げることも考えていく必要があります。

T字杖は室内外使用可能ですが、四点杖は屋外などの凸凹道には適しておらず、室内専用の杖です。

 

また、軽度の運動麻痺で両手が使える場合には、歩行器や歩行車を使用することもあります。

まとめ

脳卒中片麻痺患者のバランス評価やリハビリ訓練を中心に解説しました。

脳卒中片麻痺では、非対称性の姿勢になっていることを念頭に置いておくべきです。

リハビリでは、左右対称姿勢に整える訓練を考えがちではありますが、片麻痺患者では非対称性に身を置くことで動作の安定性を獲得できるケースも多いです。

どの機能が使えて、どのようなバランス戦略をとれば、日常生活を安全に過ごせるのかを見極めていくことが重要です。

おすすめ書籍

こちらは、バランス評価について詳しく解説されている書籍ですので、勉強してみてください。

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