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高次脳機能障害

高次脳機能障害「感情(情動)・行動障害」のメカニズムと評価、リハビリ支援をわかりやすく解説

投稿日:2017年6月11日 更新日:

人が行動を起こすとき、感情が先か、行動が先かの異論はありますが、いずれにしても感情と行動は密接に関係しています。

ここでは、高次脳機能障害の一つ、感情(情動)・行動障害について詳しく解説しています。

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感情(情動)・行動障害とは

感情とは喜怒哀楽のことで、人間が持つ気持ちを表しています。

情動とは、一過性の強い感情とそれに伴う行動(反応)のことを指し、情動反応ともいいます。

こうような情動反応は大人になるにつれ、ある程度コントロールできるようになります。

少々の事では怒らなくなるし、場違いな状況下で笑ったりもしません。

つまり、相手の気持ちを考えたり、場違いな言動をしないようになっていきます。

いわゆる「空気が読める」ようになるということです。

 

感情(情動)と行動障害とは、このような空気が読めない、大人げない言動をしてしまう症状のことをいいます。

 

感情(情動)と行動障害を呈すると、

・脱抑制

・易怒性

・感情失禁

・自発性の低下・抑うつ

などの症状がみられるようになります。

脱抑制

気持ちが抑えられずに言動してしまうこと。

易怒性

些細なことや関係ない場面でも怒りやすくなること。

感情失禁

大したことでもないのに、泣きや笑いなどの感情が誘発されること。

自発性の低下・抑うつ

何もやる気が起きないこと。

情動反応のメカニズム

ここでは、情動反応のメカニズムを理解しやすいように解説しておきます。

 

情動反応は、脳の中の大脳辺縁系が関与するといわれており、その中でも重要なのが扁桃体です。

扁桃体は快・不快を感じる場所であり、人間以外の動物にも認められる進化論的には古い部分であります。

ここが発動することで様々な情動反応が起こります。

 

見たり、聴いたりした情報は扁桃体で快・不快の振るいにかけられ、行動や反応として表出されます。

扁桃体が障害されると恐怖心を感じなくなる

扁桃体は、特に不快や恐怖心に対して敏感に反応します。

なぜ不快や恐怖心に敏感かというと、生命を脅かす情報をいち早くキャッチしておく必要があるからです。動物的勘ともいえるでしょうか。

 

もし、扁桃体に障害を負うと不快や恐怖心を感じにくくなります。

例えば、ライオンが目の前に現れた場合。

普通であれば恐怖心を感じ、どう逃げようかと考えると思いますが、全く恐怖を感じず平気で近づこうとしてしまいます。

 

また、扁桃体は痛みの経路でもあり、記憶形成にも関与しています。

つまり、痛みや恐怖心などの刺激は、記憶を強化することにもなります。

扁桃体は前頭葉のコントロールを受けている

人間と動物の違いは大脳の発達にあり、特に思考・判断・意思決定に関与する前頭葉の発達が目立ちます。

たとえ扁桃体で不快や恐怖心を感知したとしても、前頭葉でそれが本当に危険なものなのかの判断がなされます。

先ほどのライオンの例でいえば、飼育しているライオンで何度も世話をしている場合には、近づいても大丈夫だと前頭葉で判断がされるということです。

前頭葉障害とは

前頭葉の中でも、前頭連合野(特に前頭眼窩野や帯状皮質前部)が深く関与し、快・不快を評価しています。

前頭葉が機能することで、認知行動や社会的行動の調節、人格の発現などが適切に表出されます。

扁桃体が単独で障害されることは比較的少なく、感情(情動)・行動障害がみられる場合は、ほとんどが前頭葉の障害によるものです。

前述したことを踏まえると、前頭葉に障害が起きると感情(情動)がコントロールできなくなります。

社会的行動障害といわれる「空気の読めない」行動を起こしてしまうことになります。

引用画像)ぜんぶわかる脳の事典p125.2011.9

小脳も感情の微調整に関与している

小脳は、運動の微調節に関与することで知られていますが、認知機能や感情の微調節にも関与しています。

実際、小脳の障害ではしばしば感情のコントロールが苦手?性格にちょっと癖がある?と思うようなケースに出会います。

このような症状は小脳性認知・情動症候群といわれています。

小脳の正中にある虫部と呼ばれる場所が感情のコントロールを担っています。

自発性の低下や抑うつは、ドーパミンやセロトニンが不足している

快刺激を誘発する経路ですが、大脳辺縁系の側坐核と呼ばれる場所でドーパミンが放出され、ドーパミンが脳全体に行きわたることで喜びや幸福感を感じるといわれています。

こういった幸福感なども前頭葉からのコントロールを受けており、過剰にドーパミンが放出されないように調節されています。

前頭連合野で特に帯状皮質前部に障害があると、自発性の低下や抑うつ症状がみられるようになります。

また、ストレスが過剰かかるとセロトニンの代謝異常を来し、攻撃性が増したり、活動意欲が低下したりもします。

感情(情動)・行動障害の評価

感情(情動)・行動障害に対する定例的な評価バッテリーはなく、主に観察から正常範囲内か病的かを判断していきます。

判断基準

その場に即した喜怒哀楽かで判断します。

例えば、

葬式中に笑い出す。

何もしていないのに話しかけただけで怒り出す

などは病的であると判断できます。

 

しかし、喜怒哀楽の感情には元々の個人差があります。

昔からよく笑う人や怒りやすい人もいます。

ですので、家族などに昔の性格を聞いておき、現在と比べてみるとそれが病的なのかが判断しやすくなります。

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感情(情動)・行動障害のリハビリと支援

感情(情動)・行動障害で大きな問題になるのが、脱抑制や易怒性、自発性の低下・抑うつです。

脱抑制のリハビリ支援

脱抑制の場合、あまり考えずに行動してしまうことが多く、周囲の人の声掛けで注意喚起をしていきます。

易怒性のリハビリ支援

過去の不快・怒りなどの感情が強化されてしまい、怒りの抑制が効かずに発動してしまっているケースもあります。

 

例えば、

オムツ交換の仕方が雑だった。

以前リハビリで痛いこと、しんどいことをさせられた。

など、本人はそういった事実を記憶していなくても、何となく嫌だったという感情だけ残っているのです。

 

まずは、そういった不快な感情の連鎖を断ち切り、不快刺激を排除していくことが大切です。

無理に説得して課題を進めようとするのではなく、本人が落ち着く刺激を模索し、少しずつでも良いので課題を遂行できるように関わっていきます。

自発性の低下・抑うつのリハビリ支援

本人は「やらない」のではなく、「やれない」のだと周囲の人が認識して関わることが大切です。

無理に行動させても不快感を与え、余計に行動しなくなってしまいます。

まずは、本人が好きなこと、できることをいくつか選択してもらい、その中から興味のあることに取り組んでもらいます。

また、行動を起こした後には褒めることも有効です。

褒めることで脳内で神経ネットワークを繋ぐドーパミンやセロトニンが放出されて、行動が強化されることも期待できます。

まとめ

感情(情動)・行動障害ついて解説しました。

行動の根源は、感情や意欲といった部分になります。

ここを知っておけば、介護やリハビリ拒否などの人にも対応しやすくなるはずです。

 

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