小脳性の運動失調について、基礎知識を解説します。
小脳の機能ってホント難しいなぁと僕自身も思っています。なぜなら、小脳と連絡する部位が多いからですよね。
まずは小脳性運動失調の基礎知識について、原因や代表的な疾患を解説します。
スポンサーリンク
小脳の構造と機能
構造
小脳は、脳幹(中脳・橋・延髄)の後方に位置しています。面積は大脳の1/10ほどですが、神経細胞は大脳よりもはるかに多いといわれています。
小脳は大きく分けて、両側の小脳半球と虫部に分けられます。
機能
小脳は、上・中・下の小脳脚によって脳幹と結合しており、求心性にも遠心性にも神経線維を伸ばしています。
平衡感覚や筋緊張・随意運動の調節に関与しています。このことから小脳の機能を簡単に説明すると、知覚と運動の統合が主な働きになります。
小脳半球の障害では同側生に障害がみられるのですが、虫部では体幹に機能不全が起こります。
かつては小脳は運動機能のみの障害といわれていましたが、現在では高次脳機能障害を呈することもあるといわれいます。
主に運動の企画や抽象的思考、視覚的記憶、情動障害や脱抑制などがみられるといわれ、そのための評価も必須になってきています。
小脳の血液供給はこの3つ
引用)http://oikomarenaika.seesaa.net/article/397198802.html
小脳を灌流する血管は、上小脳動脈(SCA)、前下小脳動脈(AICA)、後下小脳動脈(PICA)の3つです。
SCAは脳底動脈から分岐しています。SCAの還流領域が最も広く、小脳の上部や深部(主に虫部)に分布しています。
AICAも脳底動脈から分岐しており、小脳の側面に分布しています。最も細く狭い領域を支配しており、しばしば欠如していることもあります。
PICAは椎骨動脈から分岐しており、小脳の後下面に分布しています。小脳梗塞ではPICAに好発しやすく致命的になりやすいです。その65%は椎骨動脈の閉塞といわれています。
スポンサーリンク
小脳性の運動失調をきたす代表的な疾患
①血管障害
小脳、脳幹、視床、大脳(前頭葉・頭頂葉)などの病変により、運動失調を呈することがあります。
視床は小脳とも繋がっており、視床の障害でも運動失調がみられます。また、視床は感覚を統合する部位でもあり、自覚的な感覚の低下から感覚性の運動失調がみられることもあります。
②腫瘍
成人に多いのが血管芽腫や転移性腫瘍、小児・若年者に多いのが髄芽腫、星細胞腫、上衣芽腫、脈絡叢入頭芽腫などがあります。
③脱髄
多発性硬化症などが有名ですが、これは自己免疫機序で発生すると考えられている中枢神経の脱髄疾患です。視力障害や脊髄の障害に加え、しばしば運動失調も呈します。
④変性や遺伝
運動失調を主症状とする変性・退行生の疾患として、脊髄小脳変性症(SCD)があります。
SCDは非遺伝性の割合が多く、このうちオリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)や線条体黒質変性症(SND)、シャイドレーガー症候群(SDS)などは多系統小脳萎縮症としてまとめられています。
この3つの疾患は、主症状として前者から小脳性運動失調、パーキンソニズム、自律神経障害があります。SNDやSDSは運動失調に対する運動療法の効果は高いとされています。
⑤中毒や感染
アルコールの大量飲酒や薬物の長期服用によっても小脳の機能障害を引き起こします。また、細菌感染による小脳腫瘍や直接小脳を侵す髄膜脳炎やウイルス感染(麻疹・ムンプスなど)に続発するものもあります。
まとめ
小脳性の運動失調を伴う基礎疾患はこのように多数あります。
小脳に障害が起きると、運動がぎこちなくなったり、ふらつきやすくなり転倒する危険も出てきます。
詳しい評価とリハビリ方法はこちら↓