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理学療法

前庭機能の構造と働きについて。高齢者の転倒はめまいが原因かも?

投稿日:2016年8月31日 更新日:

前庭器は、耳の内耳にあり頭部の動きや眼球の動きによって、身体のバランスを保つ重要な機能です。

前庭機能は視覚や体性感覚に並びバランス能力に関わり、前庭機能の低下が原因で転倒に至ることもあります。

例えば、歩行中に何気なく頭の向きを変えたとき、上にある物を取ろうと上を向いたときなどにバランスを崩した場合は前庭機能の低下が疑われます。

前庭機能のリハビリは、欧米などでは盛んに行われている分野ですが、日本のリハビリテーションではそこまで浸透していない印象を受けます。

前庭機能は、転倒しないためにとても重要な機能ですので、基礎知識をしっかり押さえておきましょう。

 

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前庭器の構造

引用)http://kanri.nkdesk.com/jibika/memai.php

 

前庭は耳の内耳にあり、蝸牛を除いた耳石器と三半規管で構成されています。

※クリックで拡大してご覧ください。

耳石器や三半規管には有毛細胞の感覚毛が並んでおり、リンパの流れで有毛細胞が刺激されると動的加速度を感知します。

耳石器(球形嚢・卵形嚢)の働き

球形嚢は垂直位に有毛細胞の感覚毛が並んでおり、その有毛細胞がリンパの流れで刺激されることで垂直加速度を感知します。

卵形嚢は水平位に感覚毛が並んでおり水平方向への直線加速度、重力方向(頭部の傾き)を感知する。

有毛細胞の感覚毛のイメージ図(絵は下手ですが、感覚毛の生え方に注目してください)

三半規管(前半規管・外側半規管・後半規管)の角度と働き

それぞれの半規管には角度がついており、その角度を覚えておくことはとても大切です。

三半規管の角度

前・後半規管は矢状面に対し45°の角度があり、互いの前半規管と後半規管の傾きは平行になっています。

外側半規管は水平面に対し30°後方へ傾斜しています。

引用)http://metalogue.jugem.jp/?eid=2518

三半規管の働き

三半規管は、身体の回転加速度を感知しています。

頭が回転すると、運動と同じ平面にある半規管内のリンパ液は、慣性により頭の回転とは逆方向へ流動します。

すると有毛細胞が脱分極(興奮)し、後述する前庭に関わる反射がみられるようになります。

下の図を例にすると、頭部を左回旋させると左の外側半規管(左H)内のリンパ液は運動とは逆方向(右回旋の方向)へ流れます。すると、半規管膨大部(半規管の根本)にある有毛細胞を刺激し、前庭神経へ伝達されます。

逆に相対する位置にある半規管は抑制されるという仕組みです。

もう一つ例を挙げると、左の前半規管が興奮した場合は、右の後半規管が抑制されます。

引用)内野 善生・古谷信彦:日常臨床に役立つめまいと平衡障害p2.2009.5

前庭に関わる主な反射

前庭器から入った刺激は、脳幹の前庭神経核を経由し、小脳・頸部・脊髄・眼球へと投射されます。

また、第2・3頸椎は感覚受容器が多数存在し、頸部からも求心性に刺激が入り、前庭神経核を経由し眼球の動きを調節しています。

 

※クリックで拡大してご覧ください。

前庭眼反射と眼振について

頭部を一側に回旋し、半規管に刺激が加わると、眼球は緩徐に(緩徐相)頭部とは反対側に偏位する反射のことを前庭眼反射といいます。これは正常の場合にみられる反射です。

 

 

もし、一側の前庭機能が低下していると・・・

緩徐相の後、反対方向へ急速に(急速相)眼球が偏位します。つまり、眼球が正中位に戻ろうとします。

このような眼球の動きが繰り返されることを眼球振盪(眼振)といい、めまいとして現れます。

めまいとは

めまいを定義するのは難しく、例えば貧血症状も人によってはめまいと訴える人もいるくらいです。

 

めまいを定義するとすれば・・・

めまいは「自分や周囲が動いていないのに、動いているように感じる異常感覚」

(東邦大学名誉教授 小田 恂)

となります。

めまいには、大きく分けて回転性めまいと非回転性めまいがあります。

回転性めまい

周囲の情景がグルグル回る感じをいいます。これがいわゆるめまいにあたります。

非回転性めまい

酒に酔ったようなフワフワしたり、目の前が真っ暗になったり、自分の体が揺れる感じをいいます。

これは、歩行時のふらつきとして現れます。

めまいの原因

めまいは、前庭性のものとそれ以外(非前庭性)に分けられます。

 

※クリックで拡大してご覧ください。

非前庭性は、貧血や低血圧、低血糖、自律神経失調症などを指します。

前庭性は、中枢性と末梢性に分けられ、これらは眼球運動でも違いがみられます。

末梢性眼振と中枢性眼振で症状の違い

・末梢性眼振

回旋性、水平性、垂直性の混合眼振がみられます。

・中枢性眼振

純粋な垂直性眼振や純回旋性眼振がみられます。

末梢性の眼振は緊急を要さない場合が多いのですが、中枢性の眼振は脳卒中を示唆する重要なサインですので、直ちに検査を受けるべきです。

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めまい平衡医学会が定める診断基準化疾患

①慢性中耳炎由来の内耳障害、②メニエール病、③遅発性内リンパ水腫、④めまいを伴う突発性難聴、⑤外リンパろう、⑥前庭神経炎、⑦良性発作性頭位めまい症、⑧中枢性頭位めまい、⑨薬物による前庭障害、⑩内耳梅毒、⑪ハント症候群、⑫聴神経腫瘍、⑬椎骨脳底動脈循環不全、⑭血圧異常によるめまい、⑮頸性めまい、⑯心因性めまい

前庭機能障害でなぜめまいが起こるの?

めまいが起こるのは・・・

①視覚・体性感覚(特に上位頸部)・前庭感覚の情報が不一致

②前庭系の左右不均等

これらによってめまいが起こります。

高齢者の前庭機能と転倒の関係性

高齢者の転倒にはめまいが大きく関わっています。

60歳以上では前庭神経核の神経細胞は約20%減少しており、70歳以上では半規管の有毛細胞は約40%減少、耳石器の有毛細胞は約25%減少しています。

転倒原因が不明な高齢者の80%に前庭障害が認められたと報告されており、転倒により骨折した高齢者は、転倒したことのない高齢者に比べ、前庭機能の非対称性が大きいようです。

また、高齢者は加齢により体性感覚系も低下し、視覚優位のバランス戦略に変化する傾向にあります。

視覚に頼ったバランス戦略をとる高齢者ほど転倒のリスクがあり、体性感覚系や前庭系のトレーニングはバランス能力向上において重要といえます。

まとめ

前庭機能について基礎的な内容をお伝えしました。

臨床では体性感覚系の訓練はよく行われていますが、前庭機能の重要性を認識している理学療法士は意外と少ないように思います。

たまにめまいを訴える患者さんがいますが、そのほとんどが起立や歩行時不安定でふらつきやすい傾向にあります。

高齢者で、転倒の原因を伺うと「振り向いたときに、ふらっとして倒れた、何であんなんでこけるんやろ?」などと言われる場合は、もしかすると前庭機能の低下があるかもしれません。

 

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