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理学療法

パーキンソン病とは?効果的なリハビリや歩行、予防体操をわかりやすく解説

投稿日:2016年6月1日 更新日:

パーキンソン病は、病態が明らかになりつつあるものの発症原因が不明なため、予防的処置は難しい病気です。

パーキンソン病は転倒しやすい進行性の病気ですが、天寿を全うできる(つまり病気が寿命とはあまり関係ない)病気でもあります。

今回は、パーキンソン病の概要から4大症状、診断基準、重症度分類、効果的なリハビリや歩行、予防体操について詳しく解説します。

 

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パーキンソン病とは

中脳黒質や腹側被蓋野のドーパミン作動性ニューロンの変性が主な原因とされています。

有病率は人口10万人あたり100~150人といわれています。

好発年齢は50~60歳ですが、40歳未満でも発症する場合があり、若年性パーキンソン病と呼ばれています。

発症原因は不明であり、諸説ありますが遺伝子異常・遺伝的要因に加え環境因子が重なり発症すると考えられています。

ドーパミンとは

パーキンソン病を理解するうえで、ドーパミンは欠かせない知識です。

中脳黒質や腹側被蓋野からドーパミン作動性ニューロンが活性化され、線条体(尾状核・被殻)、辺縁系、前頭葉に軸索を広げます。

ドーパミンは快楽物質ともいわれ、快刺激が起こることでドーパミンが大量に放出されます。

ドーパミンは、神経のシナプス結合を強める働きがあり、記憶や学習系に深く関与しています。

恋愛においては、通常前頭葉の働きにより、「この人は見た目はいいけど、性格が良くない」などの判断がなされます。

しかし、恋愛にはまってしまうと快楽物質であるドーパミンが大量放出されるため、前頭葉が機能しなくなってしまいます。

つまり、快楽を求めてしまうわけです。これが、恋愛に溺れる人のメカニズムです。

別の例でいうと、スポーツの大事な場面で好きな人に見られていると、ドーパミンが放出されるため学習系が強化され、いつも以上のパフォーマンスを発揮したりもします。

パーキンソン病の4大症状とは

安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害の4つが主な身体症状になります。

これら4つの基本的な症状により、様々な現象が起きてきます。

安静時振戦

安静時に4~6Hzの振えがみられます。初発症状としてみられ、上肢に多くみられます。また精神的緊張により増強されます。

運動する際にはみられないことが多いので、動きを阻害する因子にはなりません。

固縮

安静にした状態で手足を他動的に動かすと筋の抵抗を感じます。

手足を動かしたときに一定の抵抗を感じる鉛管現象に振戦が加わることで、カクカクとした歯車様現象がみられます。

固縮は、共同筋と拮抗筋の同時緊張がエネルギー消費を増大させており、疲労の原因にもなります。

無動

無動は、動作開始時の遅れ、ゆっくりとした動作などが特徴です。

表情の乏しさ(仮面様顔貌)、字が小さくなる(小字症)、小さな声、歩行障害(すくみ足、小刻み、歩行速度の減少)などがみられます。

また、意思発動性の減少、抑うつ状態もみられます。

姿勢反射障害

パーキンソン病の進行度を判断する重要な所見であります。

通常、姿勢が崩れると無意識に姿勢を元に戻そうとするのですが、パーキンソン病では姿勢反射が乏しくなったり、みられなくなるため転倒しやすくなります。

下図のようにパーキンソン病の進行に伴い、四肢は屈曲位の特徴的な姿勢になります。

引用)1

また、一側上肢→反対上肢→一側下肢→反対下肢と進行していくため、左右のアンバランスにより、さらにふらつきを助長してしまいます。

4大症状以外にみられる症状

自律神経障害

自律神経には交換神経と副交感神経があります。

初期症状としては、4大徴候である運動障害が主な症状ですが、進行に伴い自律神経障害もみられるようになります。

自律神経障害の主な症状として、流涎(よだれ)、脂顔、多汗、便秘、排尿障害、起立性低血圧、性機能障害などがみられます。

精神障害

幻覚、妄想、作為体験、うつ状態、認知機能障害、睡眠障害があります。

幻覚、妄想、作為体験などはドーパミン不足による前頭葉の機能障害によるものと考えられています。

睡眠障害もみられ、ドーパミン不足によるふさぎ込み(うつ症状)や認知機能の低下、いくつかの精神障害が重なり起こると考えられています。

ちなみに、薬を投与しすぎるとドーパミンの働きが活性化され、統合失調症のような幻覚や妄想がみられる場合もあります。

逆に幻覚や妄想などの症状に対して、ドーパミンを抑制しすぎることでパーキンソン病のような症状がみられる場合もあります。

以前、薬剤性のパーキンソン病が疑われた症例をご紹介しました。

嚥下障害

進行に伴い、嚥下障害もみられるようになります。

パーキンソン病の診断基準

パーキンソン病に似た疾患もあり、パーキンソン病の診断は難しいものです。

診断基準は以下の通りです。

●主症状である安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害のうち少なくとも2つ以上が存在する

●頭部CTまたはMRI所見に明らかな異常を認めない

●感染、薬物によるパーキンソニズム(パーキンソン病のような疾患)を除外できる

●薬物療法にて明らかな症状の改善がみられる

とされています。

簡単にいうと、4大徴候がみられ、何か原因が判明したものはパーキンソニズム(パーキンソン病のような疾患)と判断されます。

4大徴候がみられるが、原因がわからず、薬を投与すると症状が改善するものはパーキンソン病と判断されます。

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パーキンソン病の鑑別疾患

パーキンソン病と似ている疾患

遺伝性疾患 遺伝性、家族性
続発性 脳血管障害、中毒性、脳炎後、薬剤性、脳外科疾患
神経変性疾患 多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、前頭側頭葉認知症、皮質基底核変性症、アルツハイマー病、ハンチントン病 ウィルソン病

パーキンソン病の重症度分類(Hoeh-Yahr)

stageⅠ

片側(主に上肢)のみの障害

stageⅡ

両側または体幹の障害、平衡障害はない

stageⅢ

姿勢障害がみられる。日常生活には介助を必要としない

stageⅣ

症状は進行しており、高度の機能障害を呈する。介助なしで起立や歩行は何とか可能

stageⅤ

全面的な介助が必要。ベッド上臥床、もしくは車いすの生活

パーキンソン病は薬の把握が大切

パーキンソン病の主な薬として、Lドーパ製剤、ドパミンアゴニスト、抗コリン剤、アマンタジン、モノアミノ酸化酵素阻害薬、ノルアドレナリン前駆物質などがあります。

薬の効果として、ドーパミンの補充や受容体の感受性亢進により、ドーパミンの伝達効率を良くすることが期待されます。

副作用としては、吐き気や嘔吐、食欲不振、妄想・幻覚など統合失調症様の症状もみられることがあります。

薬の効果は必ずしも一定ではなく、しかもだんだん効果が薄れる特徴があります。

以下のような変動が多くみられます。

●薬の効果時間が短縮(ウェアリング・オフ)

●服薬の時間に関係なく症状が変動(オン・オフ)

●薬を服用しても効果がみられない(ノー・オン)

●効果が出るまでに時間がかかる(ディレイド・オン)

薬物以外の治療方法

定位脳手術

視床手術、淡蒼球手術、視床下核電気刺激療法があります。近年では脳深部刺激療法(deep brain stimulation:DBS)といわれ、直接脳に電極と胸部に刺激発生装置を埋め込む手術が行われており、すべての運動症状に効果が期待されています。

細胞移植法

細胞移植法は線条体のドーパミン補正を目的としたものと、黒質ドーパミン神経細胞の再生を目的としたものに分けられます。

その他の方法として、遺伝子治療や経頭磁気刺激法などもあります。

大脳基底核の役割とは?

基底核とは、尾状核、被殻、黒質、視床下核などから構成されています。

基底核は、視床を介して大脳へフィードバックをすることで、運動の順序を組み立てたり、新しい運動を学習する際に関与しています。

これを大脳皮質-基底核ループといいます。

引用)2

 

わかりやすくいうと、大脳は運動、視床は情報収集、基底核は微調整を行う役割があります。

大脳へフィードバックされた情報は、皮質脊髄路により意識的な運動が開始されます。

また、基底核は脳幹にも働きかけ、自動歩行も調節しています。

大脳-基底核ループは、補足運動野、運動前野、前頭眼野、前頭前野、辺縁系にも関与しています。

補足運動野 運動の企画・自発的な運動の開始
運動前野 感覚情報から運動を企画・実行
前頭眼野 行動の決定や切り替え
前頭前野 意思決定・注意・社会行動
辺縁系 快・不快など情動に関与

パーキンソン病では、基底核のドーパミン量が減少してしまうため、基底核を介したループに不具合が起こってしまいます。

3つの行動学習

行動学習には以下の3つがあります。

教師なし学習、教師あり学習、強化学習と呼ばれるものです。

教師なし学習

教師なし学習とは、例えば手の動かし方や物の掴み方など、実際にやってみないと習得できないような学習をいいます。

正常では、大脳皮質の補足運動野や運動前野に組み込まれた情報が意図した際に無意識に運動することができます。

パーキンソン病では、この無意識にしてきた学習過程が障害されます。

他者からあーだ、こーだ指導されるよりも、実際場面で繰り返し繰り返し練習することで習得されるものです。

教師あり学習

例えば、バスケやサッカーなどのドリブルで始めは上手くいかなくても、練習していくうちにだんだん上手くなっていきます。

これは目標としている動きを常にフィードバックし、誤差情報を埋めていくために上達していきます。

この過程においては小脳が関与しています。

他者からの声掛けや鏡を使ったフィードバックが効果を成します。

強化学習

強化学習とは、良い行動ができた際の報酬により強化される学習をいいます。

これは、辺縁系から快・不快情報が基底核に送られ、行動の評価が成されます。

後述する直接的アプローチでも紹介していますが、快刺激はドーパミン量を増やし行動が強化されるのです。

薬が効いている、調子の良い時間にリハビリをするのがポイント

パーキンソン病は薬の影響もあり、調子に波がみられます。

健康な人でもそうですが、熱があるときは運動しませんよね。熱があるときに一生懸命リハビリをしたところで調子を崩すだけです。

パーキンソン病の人も同じで、やる気がなかったりするわけでなく、調子が悪いときはドーパミンがちゃんと伝達されていないだけなのです。

つまり、体が動きやすくなるにはドーパミンが伝達されればいいのです。

ドーパミンがしっかり伝達されていている調子の良い時間にリハビリを行うことで、二次的に起こっている筋力低下などを効果的に予防・改善することができます。

リハビリでは、歩行時に視覚・聴覚刺激を与えるのが効果的!

パーキンソン病の患者さんに対して、歩行時に下の図のように視覚情報を離床したり、「イチ、ニ、イチ、ニ」聴覚刺激が有効というのは聞いたことがあると思います。

引用)3

なぜこのように視覚や聴覚情報が有効なのか?

そのメカニズムを解説します。

下の図のように、視覚・聴覚情報は基底核を介さず、運動前野から直接大脳へ情報が入り運動が起こります。

引用)3

元々組み込まれていた運動企画以外でも適切な運動が起きるわけです。

ただし、視覚・聴覚情報がなくなると適切な運動が行えなくなるため代償的アプローチともいえます。

直接的アプローチ

アプローチの順番としては、意識下→無意識下へと進めていきます。

意図する動作を繰り返し繰り返し行う(教師なし学習)ことで、フィードバックを与えていきます。

ここで大切なのが、快刺激を与えることです。

引用)4

成功体験を積ませ、褒めまくることで、強化学習が図れるのです。

パーキンソン病は、ただでさえ運動の企画が上手くいきませんので、難しい課題をさせて「上手くいかないなぁ~」なんて感じさせてはダメです。

難しい課題であれば、道具を利用したりして、快刺激を与えると効果的です。

固縮に対するアプローチ

固縮は、α運動ニューロンの興奮性が亢進しているために起こるとされています。

簡単にいうと、共同筋と拮抗筋が同時に緊張してしまっている状態です。

なので、他動的に動かした際には、筋の同時収縮が起こるため、うまく力を抜くことができません。

自動運動もしくは自動介助運動が効果的です。

これは、主動作筋が働けば拮抗筋は緩むといった相反神経抑制を利用しています。

細かい運動よりは、全身を使ったダイナミックな運動のほうが筋が緩みやすいです。

パーキンソン病と他の疾患が合併した場合の予後予測は?

パーキンソン病だけで入院してくる患者さんって意外と少ないです。

転倒して骨折したり、肺炎などの病気を発症して入院したら「元々パーキンソン病を患っていた」というケースが多いです。

能力的な予後を予測するにあたり、まずは入院前のHoeh-Yahrの重症度分類からstageがどのくらいなのかを把握しておく必要があります。

経験測になりますが、転倒して骨折した場合を考えると、stageⅢ以上のことが多いです。

なぜかというと、すでに姿勢反射障害があり、ふらつきやすくて転倒しているわけです。

また、肺炎などの病気にかかってしまった場合も自律神経障害や肺の機能低下がみられることが多く、stageがⅢ~Ⅴになっている可能性が高いといえます。

パーキンソン病の進行度を把握した上で、現疾患をプラスで考慮すると予後が予測できます。

自宅でできる体操(Hoeh-YahrⅠ~Ⅱ)

Hoeh-YahrⅠ~Ⅱは姿勢反射障害がみられないので、転倒の危険は少なくご自身で運動することができます。

引用)3

Hoeh-YahrⅢ~Ⅴの運動と生活

姿勢反射障害がみられるので、お一人で運動するにも転倒する危険があります。

必ず何かにつかまる、もしくは見守りを依頼するなどのリスク管理が必要です。

また、生活を考えると、導線上に手すりを設置したり、歩行が難しいのであれば車いすを用意するなど生活の質(Quality Of Life:QOL)を落とさないような工夫も必要です。

覚えておくべきポイント

●ドーパミン不足により様々な症状が出現している

●一側(特に上肢)から症状が出現する

●stageⅢから姿勢反射障害により、ふらつきやすくなる

●stageⅣ以降は身体機能だけでなく、自律神経障害も顕著に出現してくる

●パーキンソン病は進行性であるが、天寿を全うできる

おすすめ書籍

こちらの本は解説図もあり、メカニズムもわかりやすく書かれています。

僕もこの本でパーキンソン病を勉強しました。

 

まとめ

かなり専門的な話になっていますが、特に若手の理学療法士の方は是非とも参考にしてください。

パーキンソン病は、直接の死亡原因にはなりませんが、寝たきりによる肺炎や感染が死亡原因になることが多いです。

また、ふらつきから転倒に到ってしまい、寝たきりの原因にもなりえます。

パーキンソン病に対する正しい知識を身につけることで、病気を抱えながらでも生活の質(Quality Of Life:QOL)を保つことができるようになります。

教科書に載っている方法をそのまま患者さんに実施する前に、当ブログを参考にメカニズムをおさらいしてみてはどうでしょうか。

メカニズムを知っておくだけで、アプローチの幅はかなり広がると思います。

引用画像

1)山永裕明ら:パーキンソン病の理解とリハビリテーションp22.2010.5

2)山永裕明ら:図説パーキンソン病の理解とリハビリテーションp48.2010.5

3)理学療法 第25巻 第11号p1518~1534.2008.11

4)坂井達雄ら:ぜんぶわかる 脳の辞典p126.2011.9

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