訪問リハビリで起こるリスクとは?理学療法士が起こりやすい危険を徹底解説

訪問リハビリは、利用者の自宅へ伺い、その人の生活環境の中でリハビリを行う仕事です。
病院と違って「守られた環境」ではないため、想像以上に多くのリスクが潜んでいます。
この記事では、訪問リハビリで実際に起こり得るリスクを整理しわかりやすく解説します。
訪問リハに携わる人、これから訪問を始める療法士、または家族にも役立つ内容です。
目次
1. 医学的リスク(利用者の身体に関するもの)
訪問リハで最も注意が必要なのは 利用者の体調変化 です。
病院のように医師・看護師がすぐそばにいないため、“療法士が最初に気づく”ことも多いのが特徴です。
● 転倒・転落
歩行・立ち上がり・ベッド移乗など、日常動作全般に起こりやすい。
家の中は段差や狭い場所が多く、油断は禁物。
● 体調急変(呼吸苦・胸痛・意識低下)
脱水、感染症、心疾患など、急変の原因はさまざま。
「なんとなく元気がない」「息が荒い」だけでも注意。
● 血圧・脈拍の急激な変動
降圧薬のタイミングや脱水など、在宅は特に変動しやすい。
● 疼痛の増悪
ROM・筋トレ・ADL練習で痛みが増すこともある。
無理な負荷は悪化につながる。
● 誤嚥・窒息
嚥下訓練や口腔体操の場面で起こるリスク。
食事介助時の“むせ”を軽く見ない。
● 感染症の見落とし
蜂窩織炎、尿路感染、肺炎など。
足の腫れ・発赤・熱感は必ずチェック。
● 皮膚トラブル(褥瘡、皮膚剥離)
浮腫が強い人や高齢者は、皮膚が非常に脆い。
● 医療機器トラブル
在宅酸素・胃瘻・尿カテなど。
チューブ抜けや皮膚トラブルに気づけるかが重要。
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2. 環境リスク(自宅環境に潜む危険)
訪問リハは“家の中の安全性”が大きく関与します。
病院と違い、環境整備が徹底されているとは限りません。
● 段差・滑りやすい床・狭い動線
つまずき・横移動の際に転倒しやすい。
● 照明不足
夕方訪問では足元が見えず、転倒リスクが高まる。
● 家具配置の不備
机や棚が歩行の妨げになっているケースは多い。
● 不衛生な環境(ゴミ・害虫・ペット)
感染リスクだけでなく、リハビリ自体の実施が難しい場合も。
● ペットによる妨害・咬傷
犬がじゃれついて転倒した例もある。
● 室温管理不足
夏は熱中症、冬は低体温の危険がある。
利用者自身が気づけないことも多い。
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3. コミュニケーションリスク(利用者・家族との関係)
訪問はコミュニケーションの比重が非常に大きく、トラブルも生じやすい。
● 言った/言ってない問題
説明は曖昧にせず、記録も残す。
● 利用者と家族の希望の違い
「もっと歩かせたい家族」と「痛くて歩けない本人」など、方針が一致しないことがある。
● ハラスメント(暴言・暴力・セクハラ)
在宅は密室環境のためリスクが上がる。
● サービス範囲の誤解
掃除・介護・送迎を頼まれることがあるが、療法士の業務ではない。
4. 業務リスク(療法士側のトラブル)
訪問リハは一人で動くため、自己管理が重要です。
● 移動中の事故(自転車・バイク・車)
訪問が多いほどリスクが高まる。
● 個人情報の紛失・漏洩
iPad・スマホの取り扱いに注意。
● 記録漏れ・情報共有不足
訪問看護・ケアマネとの連携が遅れるとトラブルにつながる。
● 医療行為・服薬指導の誤解
“指示してはいけない領域”を越えないように注意。
● スケジュール遅延
渋滞、天候、前訪問の延長などで時間が読めないことも多い。
5. 感染リスク(療法士・利用者双方)
在宅は換気が弱く、感染管理が甘くなりやすい。
● 飛沫感染(インフル・コロナ)
密室で長時間いるため、病院以上にリスクが高い。
● 接触感染(ノロ、嘔吐物など)
嘔吐処理ができない家庭もあり、注意が必要。
● 皮膚感染症への接触(蜂窩織炎・帯状疱疹など)
特に帯状疱疹は“片側の帯状の発疹+強い痛み”が特徴。
未診断ならリハ中止が基本。
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6. 「リハをしていい・しない方がいい」の判断基準(重要ポイント)
※訪問の判断ポイントも補足として統合しました。
● リハしても良い
- 医師の診断済み
- 発熱なし・全身状態が安定
- 痛みが軽度
- 動作で悪化の兆候がない
- 感染リスクが低い(皮疹に触れない部位)
● リハしない方が良い
- 発疹が疑わしい(帯状疱疹・蜂窩織炎など)
- 痛みが強い
- 発熱・倦怠感がある
- 水ぶくれ・皮膚破れがあり感染リスクが高い
- 明らかに体調不良
- 診断前の状態が不明確
まとめ
訪問リハビリは、病院とは違う形のリスクが多く存在します。
しかし、事前に危険を理解し、観察力を高め、利用者・家族とのコミュニケーションを丁寧に行うことで、リスクは大きく低減できます。
特に重要なのは、
- 医学的リスクへの早期気づき
- 自宅環境の安全確保
- 情報共有・記録の徹底
- コミュニケーションの透明性
- 感染予防の意識
こうした点を押さえることで、“安全で質の高い訪問リハビリ” が実現できます。


