理学療法

【例を用いて】筋力トレーニングの原則「過負荷の原則だけ意識しても逆効果!?」

投稿日:2017年9月1日 更新日:

リハビリやスポーツの場面で行われる筋力トレーニングですが、その普遍的原則としてあるのが「過負荷の原則」です。

つまり、筋力を増強しようとするなら、負荷量を上げる(過負荷の原則)ことです。

これは当たり前すぎて言うまでもないかもしれませんね。

 

ただし、負荷量を上げるだけでは不十分であり、逆効果になる危険性もあります。

今回は、筋力トレーニングの原則すべてを解説しますので、参考にしてください。

 

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過負荷の原則

筋力を増強させようと思えば、重たい負荷量で筋トレをしますよね。

このことを、過負荷の原則(オーバーフローともいう)といいます。

 

一般的に筋力増強とは、筋張力や瞬発力の向上のことを指します。

筋持久力(筋肉が働き続ける能力)を鍛える場合にも、この過負荷の原則に基づきトレーニングをしていくことが大切です。

 

筋肉は太いほど筋力はあるの?

単純な力比べだけでいえば、筋肉は太い方が筋力は発揮できるといえます。このことを絶対筋力といいます。

絶対筋力は、最大筋力と断面積との比(単位面積当たりの筋力)で表し、統計上は4~8kg/cmといわています。

つまり、筋線機が太くなればそれだけ発揮できる筋力も大きくなるということです。

 

どのくらい筋力を発揮すれば、筋力は向上するの?

Hettingerの提言が有名ですが、日常生活においては、自分のもっている最大筋力の20~30%の力しか使っていないといわれています。

つまり、筋力を増強するなら最大筋力の30%以上の負荷を与える必要があります。

ただし、寝たきりの人の場合では、20%以下でも過負荷になる危険があるので注意が必要です。

可塑性の原則

可塑性とは、個体に力を加えた際に形が変形することや力を取り除いてもそのままの状態を保つことをいいます。

可塑性の原則とは、簡単にいってしまえば、負荷を与えれば筋力は向上しある程度は維持できるが、負荷を与えなければ筋力は徐々に衰えるというものです。

 

筋力トレーニングをすれば、一時的に筋細胞や筋線維が傷つき、それが修復する過程で以前よりも筋線維が太くなります。

このような現象を、超回復といいます。

 

超回復を図るには・・・

もちろん、傷ついた筋線維を修復するための栄養摂取(特にタンパク質)も重要になります。

 

超回復は、トレーニングから2~3日の間に起こり、その後に筋力が向上するといわれています。

ただし、これはあくまでも目安であると思っておいてください。

鍛えた部位によっても超回復の時期は異なります。例えば、体幹部などは1日程度で回復することもあります。

また、運動強度によっても超回復の時期は異なりますので、トレーニング後の反応をみながら負荷量を調節してくのが望ましいです。

漸進性(ぜんしんせい)の原則

漸進性とは、過負荷の原則に基づき徐々に負荷量を上げていくことをいいます。

いきなり過度な負荷を与えてしまうと、筋の可塑性を阻害し、逆に元に戻りにくくなってしまう恐れもあります。

そうならないように注意しながら、身体に合わせた適切な運動強度を設定していきます。

 

DeLormの漸増抵抗運動

負荷量を決定する際にRMepetition  aximum:反復最大負荷)を用いることが多いです。

 

例えば、1RMとした場合・・・何とか1回は耐えうる負荷量(それ以上は無理!!)という意味です。

10RMだと、何とか10回は耐えうるけど、11回は無理ということです。

 

反復最大回数に対する主な効果と運動強度(※目安)

最大負荷に対する割合 最大反復回数 主な効果 運動強度
100~95% 1~2 大脳の興奮、筋力 最大負荷
90% 4~5 大脳の興奮・筋肥大・筋力 ほぼ限界
80~85% 6~7 筋肥大・筋力 大きい負荷
75% 10~12 やや大きい負荷
65%以下 13以上 筋持久力 中等度以下の負荷

 

初心者から中級者までは1RMの60~70%に設定し、上級者では80~100%でのトレーニングが推奨されます。

目標としては、2~3分の休憩を挟み、1~2セットが実施できるようになれば、2~10%刻みに負荷量を上げていきます。

 

目的に合わせて負荷量を決定していく

筋力増強が目的なら、負荷量を上げ回数を減らしていく。(高負荷低頻度)

筋持久力が目的なら、低負荷で回数を増やしていく。(低負荷高頻度)

 

慣れないうちから、高負荷の筋トレをしてしまうと、筋断裂や高齢者であれば膝痛や腰痛の原因にもなるため、徐々に負荷量を上げていくのが望ましいです。

反復性(継続性)の原則

前述したように、日常生活レベルの筋力を維持するのであれば、毎日最大筋力の30%以上の筋力を発揮することは欠かせません。

日常生活以上の筋力を発揮できるようになろうと思えば、毎日トレーニングをしていては超回復を阻害してしまい、筋力は向上してきません。

 

筋トレの適切な頻度

初心者 2~3回
中級者 3~4回
上級者 4~6回

 

初級者や中級者の場合は、超回復の期間も加味して3回/週程度が望ましいです。

ウエイトリフティングの選手にような上級者では、4~6回/週を目安にすると良いでしょう。

 

逆に筋力トレーニングをさぼると、可塑性の原則に基づき筋力を維持することは難しくなります。

Mullerは、運動したときの効果を1とすれば、週1回実施した場合の効果は約40%となると報告しています。また、2週間では効果は0、それ以上間隔を延ばすとマイナスになると説明しています。

ですので、少なくとも週に2回は実施しなければ筋力を維持することもできません。

 

筋力トレーニングを継続するためには・・・

「継続は力なり」といわれもしますが、継続するのは案外難しいものです。

筋トレを継続するには、「何のために筋トレをしているのか(目的)」を明確にしておくことが大切です。

そうすると、モチベーションも維持しやすくなります。

 

例えば、

・魅力的な身体になりたい

・スポーツで活躍したい

・高齢者であれば自立した生活ができるようになりたい

など・・・

目的をもって、筋トレに取り組むと継続しやすくなります。

 

また、一人で取り組めない場合には、周りがサポート(トレーナー、家族)するのも効果的です。

特異性の原則

特異性の原則とは、同じトレーニングをしたほうが筋力は向上しやすいというものです。

 

短距離選手は瞬発系の運動は得意ですが、逆に持久力系の運動が不得意であるのは、何となくお分かりかもしれませんね。

 

筋トレをする場合にも、この特異性の原則を意識することが大切です。

例えば、瞬発力を鍛えたければ瞬発系の筋トレを、筋持久力をつけたければ少ない回数で何回も実施します。

 

また筋の収縮様式には、求心性収縮、等尺性収縮、遠心性収縮があります。

求心性収縮 筋が短縮しながら収縮
等尺性収縮 筋の張力が一定のまま収縮
遠心性収縮 筋が伸張しながら収縮

 

例えば、求心性収縮で筋力を発揮できるようになろうと思えば、これも特異性の原則に従い求心性収縮の筋トレをしたほうが効果的は高まりやすくなります。

 

(例)高齢者のリハビリにおいて・・・

歩行時の立脚期に、骨盤が反対側へ傾斜するトレンデレンブルグ兆候が出現していた場合。

 

トレンデレンブルグ兆候▼

 

骨盤の傾斜を止めるのは主に中殿筋の働きによるものですが、この際の中殿筋の収縮様式は等尺性収縮または遠心性収縮になります。

中殿筋の筋力を向上しようと思えば、等尺性または遠心性収縮でトレーニングをするほうが効果的ということになります。

 

ただし・・・

筋への負荷量としては「求心性 < 等尺性 < 遠心性」の順で高くなります。

なので、全く筋力を発揮することもできない人に対しては、求心性の筋トレから始めて、ある程度重力に抗することができるようになれば、等尺性または遠心性のトレーニングへと切り替えていきます。

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個別性の原則

個別性の原則とは、その人に合った筋トレのプログラムでなければ効果は乏しいどころか、かえって危険な場合もあります。

 

・目的(筋力アップなのか、筋持久力向上なのか)

・どこを鍛えたいのか

・どういう運動をするのか

に加えて、個人の

・年齢

・性別

・栄養状態

・モチベーション

・運動歴

など・・・

さまざまなことを加味して、運動プログラムが組まれていきます。

 

運動強度や運動の頻度に関しては前述した通り(※漸進性の原則、反復性の原則を参照)ですが、同じ年齢、性別の人でも運動効果に差が出る場合も多いです。

つまり、超回復には個人差があります。

ですので、前述した負荷量などを目安にして、どういう効果(変化)があったのかを個別に追ってみていくことが非常に重要になります。

意識性の原則

意識性の原則とは、「今、どの筋肉を鍛えているのか」「何を目的に筋トレをしているのか」を意識して筋トレに取り組むことをいいます。

 

例えば・・・

大腿四頭筋(大腿前面にある筋肉)を鍛えている際に「狙った筋肉がちゃんと収縮しているな!」「この筋トレは階段を昇るときに必要な筋肉」というように、しっかり意識して行うことが大切です。

筋肉が収縮しているかを触診し、確認しながら筋トレをするのも効果的です。

意識しなければ、間違った筋肉を使ってしまうかもし、動作においてもせっかく鍛えた筋肉が働かなければ意味がありません。

 

身体と脳の関係性

 

身体と脳は密接に関係しており、意識下で行うことで脳が学習してくるため、最終的には無意識下でも意図した運動が行えるようになってきます。

このことを運動学習といいます。

 

まずは意識下から開始するのが望ましい筋トレのやり方です。

ただし、運動が学習されれば、運動学習理論に基づき無意識下での運動に切り替えていくのが良いでしょう。

全面性(全身性)の原則

全面性の原則とは、簡単にいえば一カ所ばかりを鍛えるのではなく、バランス良く全身的に鍛えましょうということです。

何を目的に筋トレをするかにもよりますが、「腕だけ」「右の太ももだけ」鍛えたい、太くしたいっていう人はあまりいませんよね。

見た目的にもバランス良く筋肉がついてるほうが魅力的です。

 

見た目だけの話ではなく、リハビリ、スポーツにおいても全面性の原則は非常に重要です。

 

例えば・・・

ウエイトリフティングの選手では、重たいバーベルを持ち上げるのが主な運動になります。

腕や太ももだけ鍛えていれば良いというわけではなく、腹筋や背筋などの体幹部もしっかり鍛えておく必要があります。

腕や足は、中枢部である体幹が強固であるほど筋力を発揮しやすくなります。

いわば、体幹は土台ともいえます。

 

競輪選手は太ももを重点的に鍛えるイメージがあるかもしれませんが、実はハンドルを握る手や腕、身体がブレないように体幹もしっかりと鍛えています。

 

各スポーツや動作においてキーとなる筋肉はそれぞれでありますが(意識性の原則に倣う)、運動というのは身体全体の動きで作られるため、まんべんなく鍛えておくのが運動パフォーマンスを向上するポイントになります。

バリエーションの原則

「筋力トレーニングの原則」の中でも、バリエーションの原則は比較的新しい考え方です。

(※バリエーションの原則:理学療法 第30巻  第9号  これからの筋力トレーニングのあり方p953~954を参考)

過負荷の原則や漸進性の原則のように負荷量を徐々に上げたり、回数を増やしたりするだけでなく、さまざまな負荷量や回数を取り入れる筋トレがバリエーションの原則に基づく方法です。

 

例えば、高負荷(3~5RM)、中等度負荷(8~10RM)、低負荷(12~15RM)をランダムに繰り返していきます。

いろんなバリエーションで筋トレをするほうが、トレーニング効果は優れているといわれています。

まとめ

筋トレはただ闇雲に行うだけでは効果は乏しいばかりか、無理に行うと超回復を妨げたり、筋細胞を痛めてしまう危険もあります。

筋トレの効果を最大限に引き出すためにも、今回ご紹介した「筋力トレーニングの原則」を意識するようにしましょう。

また、筋力が向上する負荷量や頻度、期間なども個人差があることを念頭に置きながら、各個人に合わせたトレーニング方法を考案していくのが良いかと思います。

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