人間は動くことで、筋力や体力などの運動能力を維持・向上させ、各臓器を活性化することで健康状態を良好に保っています。
ただし、高齢になるとある程度身体の衰えがくるのは仕方ないことで、特に70~80歳あたりから視力の衰えやバランス機能の低下により、歩行に不安を感じる人が増えてきます。
歩くことに不安を覚え始めた人が、最初に選択する歩行補助具といえば杖かと思います。
杖は歩行補助具の一種で、移動の手助けをしてくれます。
今回は、杖を使用することで得られる効果について解説します。
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杖を使用することの効果
杖を使用することで以下の効果があります。
・転倒予防になる
・姿勢を良くする
・痛みを軽減
・歩行の実用性を高める
・精神的効用
・探索機能を果たす
転倒予防になる
杖は第3の足になり、杖を使用することは転倒予防にもなります。
普通に立っているよりも、杖を使用しているとその分の支持面積を広げ、姿勢バランスが崩れにくくなります。
また、杖を地面につくことで、そこから杖を持っている手に感覚(振動)が伝わり、姿勢制御がしやすくなり転倒予防にも繋がります。
杖を使う用途は2つあり、その使用用途によって杖の高さを選択すると良いでしょう。
参考記事)
姿勢を良くする
歩行していく中ではある程度の筋力は必要でしょう。
例えば、大腿骨の骨折では中殿筋の筋力低下があると歩行の崩れがみられるようになります。
中殿筋歩行▼
トレンデレンブルグ兆候 |
デュシャンヌ兆候 |
このような歩行時の姿勢の崩れは杖を使用することで防ぐことができます。
痛みの軽減
一本杖では体重の20%、両松葉杖で両足を着いて歩いた場合80%ほど足への負担を減らすといわれています。
ですので、股関節痛や膝関節痛、腰痛のある人では杖を持つことは有効な手段といえます。
歩行の実用性を高める
高齢者や足に障害を抱えていると、屋外を歩いた際にすぐに疲れたり痛みがでて、外を歩くにも大変苦労することがあります。
杖を持つと今後も杖に頼りってしまい、生活範囲が狭くなるのではないかと配する高齢者もいますが、逆に頑なに杖を持たずに無理して生活をしていることのほうがかえって活動範囲を狭めてしまいます。
「転ばぬ先の杖」と言われているように、歩くことに少し不安を覚え始めれば、杖を使って生活範囲を保つようにしてみると良いです。
精神的効用
屋外で人ごみの多い場所を歩く際には、人の行き来や段差、傾斜などの環境が目まぐるしく変化する中を歩くことになります。
そういった場所にいくことに不安を覚える人は多いです。
杖を持つことは転倒予防や痛みの軽減、歩行の実用性を高める効果があるため、精神的にも余裕ができます。
また、他人が見ても「あの人は足が不自由なんだ」と気づいてくれるので、無茶に傍を歩こうとしなくなります。
そういった意味でも杖を持つことは相手への目印にもなります。
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探索機能を果たす
特に視力障害者の場合は、白杖(はくじょう)と呼ばれる一般的な杖よりも長い杖を使用します。
白杖(折りたたみ式)▼
足の機能や高齢者のバランス機能を補う目的で使用されるものではなく、目の見えない人が周囲の環境を把握しながら歩くことを目的に使用されます。
まとめ
「転ばぬ先の杖」
「杖は3本目の足」
などと言われ、高齢社会、長寿大国の日本においては、杖をはじめ歩行補助具を上手に使い、転倒予防に備えておくことが大切です。
高齢者の中には「杖を使うなんて年寄りくさい!」と言って、頑なに杖を使うことを避ける人もいます。
今回解説したように、杖を使用することで様々な効果が期待されます。
何も持たずに歩くことで転倒してしまったり、生活の範囲が狭くなるよりは、杖を使って生活していくほうが安全かつ活動的に生活を送ることができます。
また、杖と一言に言っても色んな種類があり、骨折や脳卒中片麻痺の方にとっても杖は重要な役割を果たしています。
リハビリで使われる杖の種類と適応。杖の選び方↓