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理学療法

リハビリで使われる杖の種類と適応。杖の選び方を理学療法士が解説

投稿日:2017年5月18日 更新日:

リハビリでもよく使われる杖の種類と選び方について詳しく解説します。

杖を使用することで得られる効果についてはこちら↓の記事を参考にしてください。

 

杖には色んな種類があり、どのような人にどの杖を選べば良いのかを理学療法士の視点でお伝えします。

 

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杖の基本構造

杖の基本構造は、①握り手(グリップ)、②支柱、③杖先の3つから構成されています。

①握り手(グリップ)

杖の種類は後で詳しく解説していますが、一本杖や多点杖には色んな種類の握り手があります。

よく使われるのがT字型や逆L字型です。他にもオフセット型杖もあります。

T字型杖

逆T字型杖

オフセット型杖

引用画像)移動補助具〔第2版〕 杖・松葉杖・歩行器・車椅子p27

 

一般的に普及している一本杖のことをT字杖とよく言われますが、カタログなどでは逆L字型杖が多い印象です。

また、フィッシャー型もあり、手掌全体にフィットさせて握ることができるので、手の負担を軽減できます。

フィッシャー型杖▼

 

男性では、握り手部分が太い方がしっくりくることが多いです。

手指や手関節に負担がないようにと考えるのであれば、フィッシャー型の握りの面積が広いタイプのものを選ぶと良いです。

②支柱

支柱にも様々な種類があります。

・長さを調節できるタイプ

・長さを調節できないタイプ

・折りたたみ式

 

一本杖や多点杖の支柱はアルミ製のものが多く、杖の重さは支柱によって決まるといってもいいくらいです。

市販の杖では、長さが80~120cm、直径16~25cm程度です。

一本杖の重さは300g前後、多点杖では400~600gになります。

 

杖は重くて太いほうが床に着いた際に安定するため、身体をしっかり支えたい場合は、重めの杖を選ぶと良いです。

身体の支えはそんなにいらないけど、バランスを補う程度で良いなら、杖は軽くて細いタイプのものを選ぶと良いです。

折りたたみ式の杖の用途ですが、室内や外出時に必ず杖を使用するという人は、折りたたみ式を選ぶ必要はありません。

よく旅行に行く、自転車に乗るなど比較的活動性の高い人は折りたたみ式を選ぶと便利です。

③杖先

杖先は単脚や多脚のものがあり、前者は一本杖、後者は多点杖(多脚杖)といいます。

杖先はゴム製のものが多く、使い続けているとすり減ってきます。

杖先のゴムは定期的に確認して、すり減ってきているようだとゴム先だけ交換することをお勧めします。

杖によりますが、300~400円程度の値段で交換できます。

杖の種類

杖には色んな種類がありますが、日常生活やリハビリ場面でよく使われる杖にはこの6つがあります。

・一本杖

・多点杖(三点杖、四点杖)

・ロフストランド杖

・松葉杖

・サイドケイン

・白杖

 

以下にそれぞれの機能と適応を記載しています。

一本杖(T字杖・逆L字杖)

逆L字型の杖のことを一般的にはT字杖と称されることが多いかと思います。

適応

T字杖は、それほど荷重を補える杖ではありません。(体重の約20%を免荷)

ですので、下肢の機能が比較的安定している高齢者やバランス機能が低下している人によく処方されます。

あると便利な付属品「転ばぬ杖」

T字杖の付属品としては、杖の転倒防止があります。

転ばぬ杖は、テーブルやカウンターなどに引っ掛けたり、磁石で金属家具にくっ付けたりできます。

杖の転倒防止▼

多点杖(三点杖、四点杖)

多点杖は、杖先が三脚または四脚になっている杖のことをいいます。

 

三点杖▼

 

四点杖▼

 

多点杖の使用目的は、下肢の痛みや筋力低下などで身体の支えるを必要とする場合です。

何となくわかると思いますが、三点杖よりも四杖杖のほうが安定性は増し、下肢の支持性を補うことができます。

多点杖の杖先は、幅広のタイプもあればスモール型といって支える面積が狭いタイプのものもあります。より身体の支えるを必要としている場合には幅広のものを選びます。

適応

多点杖の使用用途ですが、骨折や片麻痺などのリハビリの経過期間、または室内でよく使われます。

デメリットですが、多点杖は床面がフラットなところで安定するものですので、屋外の凸凹道には不向きです。

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ロフストランド杖

ロフストランド杖は、「前腕部支持型杖」とも呼ばれ、カフに手を通して前腕部でも支えられるような構造になっています。

適応

関節リウマチで手指の変形が強い場合や握力が低下している人が適応になります。

松葉杖

松葉杖は、脇当て(腋窩受け)という部分があり、そこに体幹を密着させることでより安定させることができます。

適応

松葉杖は体重支持の効果が大きい(両手支持で体重の約80%を免荷)ので、骨折などで下肢の免荷期間を要する際によく用いられます。

日常生活で使用している人は少ないですが、片足切断や両下肢の強い麻痺では日常でも使用されています。

その他の松葉杖

一般的な松葉杖は上記のものですが、他にもプラットホーム型やカナディアンクラッチ(三頭筋杖)などもあります。

プラットホーム型

プラットホーム型は、肘を90°に曲げ、前腕で支持できるようになっており、手の変形が強い人は握力が低下している人に使用されます。

カナディアンクラッチ(三頭筋杖)

ロフストランド杖にも似ていますが、カナディアンクラッチはカフの位置が上腕部にあるため、肘を伸ばす筋(上腕三頭筋)が弱い人が適応になります。

サイドケイン

サイドケインはほぼ手すりに近い感覚なので、使用目的は体重支持になります。

適応

両手が使える場合は歩行器を使用するほうが良いのですが、片麻痺などで多点杖でも体重支持ができないような場合にはサイドケインを使用します。

平行棒の歩行訓練から杖歩行へと移行する際によく使われます。

白杖

主に視力障害を有する人が使い、白杖にはロングケインや折りたたみ式などがあります。

 

杖の高さの合わせ方ですが、ロングケインはグリップが乳頭にくるように合わせ、折りたたみ式は胸骨剣状突起と臍(へそ)との中間点に合わせます。

適応

体重支持やバランスをとるために使われるのではなく、視力障害者が周りの環境を杖を使用することで探索するために使われます。

杖の種類と適応。選び方 まとめ

杖の選び方を簡単に表にまとめました。

杖の種類 適応
一本杖 少しの支えが必要な人、バランスの悪い人
多点杖 片足の支えが弱い人
ロフストランド杖 手の力が弱い人
松葉杖 免荷中の人、体幹・上肢で支えられる人
サイドケイン 多点杖でも片の支えが効かない人
白杖 視力障害のある人

 

理学療法士は患者さんのリハビリを進めていくにあたって、足りない機能を見極め、それを補う形で杖を選択していきます。

杖は基本的に片方の手で持ちますが、両足に痛みがある場合は両手で杖を持つのも良いです。ただ、両手が自由に使えるのであれば、歩行車や押し車を選択することが多いです。

理学療法士はどの機能を補いたいのかをある程度想定した上で、身体機能を補えそうな杖を選択してくと良いかと思います。

あとは実際に使用してみて、患者さんの反応をみながら適切な杖を決定していきます。

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