理学療法

寝返り・起き上がりの動作分析。6つの評価ポイントとリハビリ方法を解説

投稿日:2017年5月3日 更新日:

理学療法士のための寝返り・起き上がりの動作分析の6つの評価ポイントを記載しています。

患者さんの寝返り・起き上がり動作の何を観察すれば良いのか、またどのようなリハビリ方法が良いのかも解説しています。

 

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寝返り動作のパターン

寝返り動作のパターンは多様であり、健常人でも決まっパターンはありません。

例えば、上肢が先行して動き出す場合もあれば、頭部または骨盤が先行する場合もあります。

ただし、寝返り動作には体軸内回旋という普遍的特性があります。

体軸内回旋とは、体幹や肩甲帯、骨盤帯が連動して回旋することをいいます。

 

体軸内回旋に着目すると、寝返り動作には以下の2つに大別されます。

体幹の

●伸展・回旋パターン

●屈曲・回旋パターン

伸展・回旋パターン

運動の開始は骨盤の回旋で始まり、その動きが体幹、頭部の回旋へと波及していきます。

このとき骨盤に対して、体幹は後方へ残っており、体幹・頭頸部は伸展しながら回旋することになります。

屈曲・回旋パターン

頭部の屈曲・回旋から運動が開始し、その動きが体幹・骨盤へと波及してきます。

また、上肢の寝返り側へのリーチ動作も加わり肩甲帯と骨盤の回旋運動が起こります。

屈曲・回旋パターンが良い理由

寝返りだけで考えるなら、伸展・回旋パターンでも問題はないですが、起き上がりにつなげていくには屈曲・回旋パターンを習得してくことが非常に重要になります。

起き上がりのポイントは、下側にある上肢で支点をつくり、その上肢に体幹を乗せていくことです。

そのため、起き上がり動作を可能にするには、寝返り動作で屈曲・回旋パターンを意識して訓練をしていくことが大切です。

 

以下に、屈曲・回旋パターンにおける評価のポイントを記載しています。

評価ポイント①【頭頸部の屈曲】

まずは、頭頸部の屈曲が可能かをみておきます。

先行して頭頸部の屈曲運動が起きることで、腹筋群や股関節屈筋群の身体前面筋の緊張を高め、屈曲・回旋パターンの動きを可能にします。

 

頭頸部の屈曲が困難な原因

●拮抗筋の緊張

●頭頸部屈筋の筋力

拮抗筋の緊張

頭部後面に付着する後頭下筋群の緊張の高まりは、頭頸部の屈曲運動を阻害してしまうので、それらの筋群の緊張や硬さを確認します。

具体的には外後頭隆起の下あたりを触診し硬さを確認するか、背臥位で頭部を持ち上げてみるとわかりやすいです。

 

 

その部位に緊張や硬さがあるなら、マッサージやストレッチなどで関節の可動域を確保しておきます。

頭頸部屈筋の筋力

頸部屈曲は頸長筋、頭部屈曲は頭長筋の作用で運動が起こります。

これらの筋力低下があると、屈曲・回旋パターンを作りだすことが難しくなります。

 

訓練としては、背臥位であごを引きつつ(二重あごのように)頭部を床から浮かしていきます。重力に抗するのが難しい場合は介助をしながら頭を持ち上げていきます。

評価ポイント②【肩甲骨の前方突出と上肢のリーチ】

寝返る際には、体幹の下側にある上肢は前方へ張り出し、上側の上肢は寝返る方向へリーチしていくことでスムーズな動きを実現します。

その際に見ておきたいのが、肩甲骨の前方突出です。

肩甲骨の前方突出

肩甲骨の前方突出があることで、下側の上肢が挟み込まれ動きを阻害することもなくなります。

また、上側の上肢を寝返り側へリーチすることで、その後の体幹・骨盤の軸回旋を可能にします。

肩甲骨の前方突出を可能にする筋

ここで重要な筋が前鋸筋と僧帽筋中部線維です。

前方突出の主動作筋である前鋸筋と、肩甲骨を胸郭に押し付ける僧帽筋中部線維が協調的に作用することで動きを可能にします。

もし、筋力低下が疑われる場合には、これらの筋を鍛えていく必要があります。

方法はいくつかありますが、例えば左下の図のように座位で反対側手に向かいリーチしていきます。

その際、右下の図のように肩甲骨上を胸郭が転がるように運動することを意識します。

座位でリーチ訓練

胸郭と肩甲骨の動き

肩甲骨の前方突出を阻害する筋

前方突出と拮抗する作用のある筋は菱形筋群と僧帽筋下部線維です。

肩甲骨の動きを確認し、可動性がないようなら上記筋群のマッサージやストレッチをしていきます。

評価ポイント③【体軸内回旋】

寝返りの屈曲・回旋パターンでは、体軸内回旋が重要になります。

前述した肩甲骨の前方突出により、その動きが上部体幹、さらに下部体幹の回旋を誘発します。

主動作筋は、外腹斜筋と内腹斜筋です。

上部体幹の体軸内回旋

骨盤を固定しながら、寝返る側とは外腹斜筋の働きで上部体幹が回旋し、遅れて寝返る側の内腹斜筋が働きます。

上部体幹の回旋

下部体幹の体軸内回旋

今度は、上部体幹を固定しながら寝返る側とは逆の内腹斜筋の働きで下部体幹が回旋し、その動きが骨盤の回旋へと波及していきます。

下部体幹の回旋

 

評価ポイント④【骨盤と下肢の固定】

体幹を屈曲・回旋させていくためには、下側にある骨盤と下肢が固定されている必要があります。

骨盤・下肢が固されていないと、たとえ体幹が持ち上がったとしても、同時に骨盤や下肢も持ち上がり、体幹は後方へ倒れてしまいます。

骨盤・下肢の固定に働く筋が大腿直筋長内転筋です。

大腿直筋により膝関節伸展位で股関節屈曲を、長内転筋は腹直筋や内腹斜筋とも筋連結しており、体軸内回旋の際の「下肢の重り」として働きます。

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起き上がり動作を可能にするために

寝返り同様に起き上がり動作も決まったパターンはなく、いくつものパターンが存在します。

起き上がりを意識するのであれば、寝返り動作では体幹の屈曲・回旋パターンを習得することは前述しました。

起き上がり動作は、体幹屈曲・回旋パターンに加えて、今度は浮き上がった体幹の重みを上肢へと移動させていきます。

上肢へ体重を移動させ、on elbow(前腕支持)、on hand(手掌支持)へのスムーズな動きが要求されます。

on elbow

on hand

評価ポイント⑤【肩甲骨と胸郭の固定】

on elbowでは、上腕骨の先端にある肩甲骨が胸郭にしっかり固定されていることが重要になります。

前鋸筋による肩甲骨の前方突出に拮抗して菱形筋群や僧帽筋中部・下部線維が協調して働くことで、肩甲骨を胸郭に固定することができます。

評価ポイント⑥【on elbowからon handへ、小指球で支持】

次にon elbowからon handへ移行していくのですが、この際肘関節を伸展するための上腕三頭筋の働きが重要になります。

また、支える手の位置は小指球がポイントです。

 

この構えは、例えるなら柔道の受け身のような姿勢になります。

小指球で支えることで、筋連結により手関節背屈筋群をはじめ上腕三頭筋や大胸筋、広背筋が働きやすくなり、肘関節を伸ばしつつ肩甲骨と上腕骨を強く固定してくれます。

片麻痺で多い寝返り・起き上がり動作と対処方法

脳卒中などで片麻痺を呈した際に、困難になりやすい動きが寝返りや起き上がり動作です。

重度の片麻痺の場合、肩甲帯の前方突出が不可能であるため、体幹の屈曲・回旋パターンが起こりにくくなります。

そのため、ベッド柵などを上肢で引き込み寝返りをするケースが多々あります。

この際に、前腕を回外位でベッド柵を引き込むと麻痺側上肢の連合反応を誘発してしまいます。そうなると麻痺側肩甲帯は後退し、かえって屈曲・回旋パターンを阻害してしまいます。

また、上肢の引き込みがよくないもう一つの理由は、on elbowへのスムーズな移行が困難なことです。

on elbowへスムーズに移行するには、ベッド柵を掴む手は前腕回内位にしておき、上部体幹の屈曲・回旋に合わせて、速やかにon elbowへ移れるようにしておきます。

寝返りから起き上がりの一連のリハビリ方法

上記で説明した評価ポイントを一つずつ確認しながら、相別で問題となるところに対してアプローチしていきます。

個別に筋へのマッサージや筋トレなども良いですが、寝返り・起き上がり動作を介して動きを誘導しながら訓練を進めていくと効果的です。

 

on elbow以降の動きに問題があるときは、座位からon hand、on elbowへ逆戻りする動きを練習することで、手や前腕に対して体幹を乗せていくことを学習させていくもの良いです。

 

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