僕は、今から約8年前に回復期病院の臨床実習に行っていました。
その実習で泣きたいほど悩んだのが、「疼痛評価の目的や方法」でした。
実習では、疼痛に関する評価を実施し、そして評価したことをレポートにまとめるのですが、そもそもどうやって疼痛評価をするの?というくらい基本的なことも知らなかった記憶があります。
今となっては、臨床経験も積み、実習生を受け持つこともありますが、やはり僕と同じように悩んでいる人は多いように思います。
そこで、理学療法士や作業療法士は疼痛評価で何を確認するのかを整理してみました。
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疼痛の評価の目的は?
疼痛評価の目的は?・・・
と聞かれれば、それは「痛みを治すため、又は緩和するため」です。
なにか当たり前すぎるような気もしてきますね。
もう少し短期的な目的を挙げるとすれば、痛みを引き起こしている原因を特定していくことが疼痛評価の目的になります。
痛みを評価する上で必要な技術
ではどのように痛みの原因を特定していくのでしょうか?
疼痛評価を行う上では最も重要なのが問診技術です。
問診によって、①痛みの部位、②痛みの性質、③痛みの発生時期、④痛みの程度や経過を患者さんから聞き出していくことで痛みの正体が浮き彫りになってきます。
さらに疼痛評価の精度を上げるために、視診や触診技術も必要になります。
疼痛評価を行う上での注意点
●初めから痛む場所を触ったり、関節を動かしたりしないこと
安静時に痛いのか、運動時に痛いのかというのは非常に重要な情報になります。
最初から痛みを誘発してしまうと、余計に原因が特定しづらくなります。
疼痛評価では、まず最初に問診から実施するべきです。
●問診は一つずつ行うこと
問診では、あれこれといっぺんに質問するとかえって知りたい情報を得られなくなります。
何を知りたいのか。その目的に合わせて手段(問診や視診・触診など)を選択します。
●深追いしすぎないこと
痛みには心理的要因は少なからずあります。
深追いしすぎると今まで気にもしていなかった痛みを生んだり、痛みを悪化させる可能性もあります。
①痛みの部位
痛みの原因には・・・
皮膚、骨格筋、関節、靭帯、骨膜、内臓病変などが挙げられます。
まずは、これらの内のどこに痛みがあるのかを探っていきます。
いきなり、部位を特定するのは難しいので、表在痛、深部痛、内臓痛のどれに当てはまるかを確認しましょう。
部位 | 原因 | 特徴 |
表在痛 | 皮膚 | ※1次痛、2次痛ともに起こる |
深部痛 | 骨格筋、関節、靭帯、骨膜 | 2次痛 |
内臓痛 | 内臓病変 | 2次痛 |
※1次痛:鋭い刺すような早い痛み。2次痛:痛み刺激を加えてやや遅れて起こる痛み
質問はいたってシンプルに「痛むのはどこですか?」と聞きます。
上記のように質問すると、患者さんは「この辺が痛い」と言ってくれます。
大方痛む場所が特定できれば、実際に診たり、触ったりしてみましょう。
皮膚病変の痛みであれば、最も表層部分ですので、診たり、触ったりすれば痛みを訴えるのでわかりやすいですよね。
皮膚病変の痛みは局所であり、慣れによる痛みのブレも起こりにくいのが特徴です。
骨格筋由来の痛みであれば、圧刺激を加えたときに痛みが誘発されます。また、そこに筋の硬さがあるかもしれません。
内臓に対しても圧刺激を加えると、患部から離れた皮膚や筋肉に痛みを感じることがあり、このことを放散痛といいます。
②痛みの性質
痛みの性質には、大きく分けると鋭痛(えいつう)と鈍痛(どんつう)があります。
鋭痛
1次痛といわれ、鋭い刺すような早い痛みのことをいいます。
患者さんの訴えとしては、痛み刺激を加えたときにすぐに「痛っっ!!」という反応を示します。
特に急性期の皮膚病変によくみられますが、骨格筋や骨膜に対してもみられる場合があります。
鈍痛
2次痛といわれ、痛み刺激を加えてやや遅れて起こる痛みをいいます。
患者さんは、「じわーっと」「締め付けるような」といった訴え方をよくします。
また、疼痛部位も散在していることが多く、その場合の原因は皮膚というよりも深部痛や内臓痛の可能性が高いです。
③痛みの発生時期
いつ痛いのか・・・
特に安静時痛の有無は最初に確認しておきたいところです。
もし、安楽肢位を保持していても痛みがあるようなら、間違いなく炎症が起こっているといえます。
それは、皮膚かもしれませんし、骨格筋かもしれませんので、疼痛部位や性質と合わせて判断しましょう。
夜間に痛いのか?
朝に痛いのか?
夜間時だけ痛むのであれば、寝る姿勢に原因があるかもしれませんし、朝に痛むのであれば筋肉のこわばりが原因かもしれません。
何をすると痛いのか・・・
関節を他動的に動かしたときに痛いのか?
自動で動かしたときに痛いのか?
どのくらいの範囲動かしたら痛いのか?
荷重をかけたときに痛いのか?
を問診や実際に動かしたり、荷重をかけてみて確認します。
例えば、筋由来の痛みは収縮時痛、伸張痛、インピンジメント(絞扼性)などあります。
もし、自動運動や荷重時に痛むのであれば、同部位の骨格筋に痛みの原因があるかもしれません。
歩行時に痛みがあるのであれば、歩行時の不良肢位が痛みを生む原因かもしれません。
いつから痛いのか・・・
骨折後や外傷の急性期の場合には、痛みがあっても不思議ではありません。
しかし、3ヵ月も痛みが続くようなら明らかに異常です。
心因性の痛みもありますが、検査をせずに精神面が原因と決めつけてしまうのは危険なことです。
皮膚の治癒は進んでいるのか?
骨折であれば、骨壊死や偽関節になっていないか?
など、まずは考えられる原因を排除していく作業が必要です。
④痛みの程度と経過
評価方法として、以下の評価表を用いて痛みの程度を評価します。
引用)日本緩和医療学会
疼痛を専門にしているクリニックなどでは、上記の評価表は有効活用しやすいですが、病院においては患者さんが痛みを突発的に訴えることがは多いです。
特に病院で働いている理学療法士や作業療法士は、上記の評価表を常時持ち合わせていない場面が多いと思います。
臨床において、最も簡単に用いられているのが、NRS(Numerical Rating Scale)という評価方法です。
この評価方法は、口頭による簡単な質問に答えるだけで痛みの程度を把握することができます。
質問例 |
最も痛い痛みが10点としたとき、今の痛みは何点ですか?全く痛くなければ0点です。死にたいほどの痛みであれば10点となります。 |
痛みの程度を知る目的は2つあります。
「そんなに痛いのかぁ~。それなら無理はできないなぁ。」
又は、「痛みは自制内ということかぁ。」
と患者さんの身体または心理的負担を汲み取ることができます。
もう一つの目的は、痛みの増減や治療効果を追うためです。
ただし、認知症を呈していたり、評価の意図が理解できない患者さんでは正確に評価することは難しくなります。
その場合には、FPS(Faces Pain scale)を活用したり、日々の患者さんの訴えを参考にすると良いでしょう。
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まとめ
痛みは環境条件や精神状態の影響も受け、痛みを正確に判断するのが難しい場合があります。
僕自身、痛みの原因を特定していくことって、難しいなぁと今でも感じています。
疼痛評価の最大の目的は、痛みを消失または緩和することにあります。
時には、痛み止めを使用したり、生活習慣を返るだけでも痛みを緩和できる場合もあります。
痛みの原因を追い続けてしまうのではなく、どうすれば痛みが緩和できるのか・・・という視点も必要なのではないでしょうか。
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