リハビリにおいて、自主トレーニング(自主トレ)の重要性を認識している理学療法士は多いと思います。
そして、個々の患者さんに合わせた自主トレを考え、患者さんに教えていくことも多いと思います。
しかし、実際に自主トレを実施している、または継続している患者さんはほとんどいないのではないかというのが僕の印象です。もちろんちゃんと実施し、継続している人もいます。
では、両者の違いはどのようにして生まれるのでしょうか?
今回は、リハビリにおいて、高齢者が自主トレを継続する方法を解説します。
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自主トレは、目的を達成するための手段にすぎない
最近は、理学療法士の方々が自主トレメニューをイラストで作ってネットで公開してくれたり、イラスト本なども販売されています。
リハビリテーション・ホームエクササイズ CD-ROM付―患者さんに渡せる自主トレーニング127―
自主トレを患者さん個々に合わせて作成するのはとても大変です。
こういったイラスト本を活用すれば、患者さんに合った自主トレ方法を組み合わせるだけで良いのでとても便利だなと思います。
ここから、あなたに考えていただきたいことがあります。
もし、あなたが他人から自主トレのメニューを渡されたとすれば、あなたは実施し継続しますか?
素直に「いや~やらないな~」という人が大半でしょう。僕だったらやらないと答えます。
あなたが自主トレのメニューを他人から渡されても実施し継続しないなら、高齢者の患者さんが自主トレをやらないのは普通のことのように思うんです。
自主トレの重要性が謳われてはいますが、自主トレはあくまでも手段のはずです。
つまり、何かの目的を達成するための一手段なのです。
そう考えてみると、自主トレのメニューをやってるかやってないかが重要なのではなく、目的が達成できたのか、そして目的に近づくための効果があったのかを継続して見ていくことのほうが大切なのではないでしょうか。
自主トレする目的がないと普通はやらない
先ほど、僕の場合は他人から自主トレを渡されてもやらないと書いてますが、別に僕自身が運動嫌いということではないです。
むしろ運動は好きなほうです。
そんな僕でも、自主トレのメニューを渡されてもやらないのは、目的がないからです。
僕はスポーツが好きで、たまにマラソン大会に参加するのですが「大会に出る」と決めると結構ストイックに練習を重ねます。
「大会に出る」という目的がある場合には、マラソン関連の良さそうなトレーニング方法を本やネットで調べて実践したりします。
今現在は、マラソン大会に出る予定はありませんので、目的がないわけで、必然的に自主トレもやらないということです。これが普通です。
おそらく目的がなくても自主トレができる人は、筋トレないし運動が好きで、そこに快感を覚えている人ではないでしょうか。
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自主トレの効果がないと、継続する意味を感じない
マラソン大会に出るという目的があって、他人から自主トレを提示された場合。
僕の場合ですと、運動効果はすぐに現れないことを知っていますので、しばらくは継続してみます。
しばらく継続してみて「何か効果ないなぁ~、他の方法が自分に合ってるかもしれないなぁ~」と思えば、提示された自主トレはボツとします。
つまり、やらなくなります。だって、効果がないんですから・・・
これは、患者さんでも同じことです。
理学療法士の人から「はい、これは自主トレのメニューです。これを1日に○○回毎日実施すれば、足の筋力がついてきます。」と言われた患者さんは、一応言われた通り実施してみます。
やってはみたものの「何か効果あるのかわからんし、めんどくさいなぁ~、やめよ。」となって結局続けなくなるのです。
高齢者が自主トレを継続する方法
自主トレはあくまでも手段の一つであり、何かの目的を達成するためにあります。
僕みたいにマラソン大会に向けて自主トレをするのであれば、一時的な自主トレでも良いでしょう。
一方理学療法士は、高齢の患者さんには日常生活に焦点を当てた自主トレを提案するかと思います。
ですので、尚更継続することが重要になってきます。
先ほども説明しましたが、効果がないもしくな効果を感じない自主トレは100%継続しません。
では、どのように自主トレを取り入れていけば良いのかを解説します。
リハビリ時間に自主トレのメニューを取り入れる
先ほどから何度も説明していますが、まずは「目的」を提示することです。
例えば、腰痛があり動くのがおっくうになっている患者さんがいるとします。
この場合の目的は「腰痛を気にせず動くことができる」となります。
腰痛は安静にすればするほど慢性化することが知られています。
(※注意:骨折などしていれば安静にしないといけません。)
つまり、とにかく動くことが大事なのです。でも痛いから動けない・・・
そこで、手段として自主トレを提案するのです。
まずは痛みのない範囲で動くことができる自主トレメニューを患者さんと共有します。
理学療法士は自主トレの効果を確認し、必要あればメニューを修正していく
患者さんは医学の知識を持っていないのが普通ですので、理学療法士から言われた自主トレを真面目にやる人は多いです。ただ継続できないだけなんです。
理学療法士は、自主トレをやったかどうかの過程よりも、目的としていたものに近づくための効果があったのか、なかったのかを確認します。
× ダメな確認方法→「○○さん、この前渡した自主トレの内容は継続してやっていますか?」
これは、もう手段が目的化した典型例でしょう。
○ 良い確認方法→「○○さん、以前腰が痛くて動けないっておっしゃってましたが、自主トレを1週間継続してみて楽に動けるようになりましたか?」
このように、目的を達成するために自主トレがあるという視点で継続できているかを確認します。
患者さん自身に効果があったかどうかを定期的に確認することで、提供した自主トレが合っていたのか、修正したほうが良いのかが見えてきます。
目標が高すぎて達成できない場合には目標を変え、それに合わせた自主トレを提案していきます。
自主トレをしても効果が出るには一定期間を要します。なので、入院早期から患者さんの状態に合わせて自主トレ取り入れていくこと大切です。
最終的には患者さん自身で自主トレを行う、セルフコーチングを目指す
入院中であれば理学療法士がいますが、退院し自宅に戻ると教えてくれる人はいません。
患者さん自身で自己の身体を管理していかないといけません。
これをセルフコーチング(自分自身がコーチとなり、課題を実践すること)といいます。
未来志向型で自主トレに取り組むと継続しやすい
課題に取り組む過程として、問題解決型と未来志向型があります。
問題解決型は、問題を解決するために課題に取り組むことをいいます。
未来志向型は、「もっとこうなりたい」という希望を叶えるために課題に取り組むことをいいます。
前者は、欠点を補うために課題に取り組でいきます。もし、欠点が残存すれば課題への義務感が生まれ、継続するのが難しくなってしまいます。
しかも問題が解決してしまえば、課題に取り組む動機がなくなってしまいます。
一方、後者の未来志向型は、「もっとこうなりたい」という意欲の下課題に取り組んでいきます。
先ほどの腰痛の例で言うと「腰痛を治すために自主トレをする」は問題解決型です。
未来志向型は「外出することを目指し、少しでも腰痛が楽になれば外出できるので、そのための手段として自主トレをする」となります。
このように何かの目標があるから、自主トレにも前向きに取り組むことができ、継続もしやすくなります。
「なりたい自分に近づくため」に自主トレを続けるようになります。
こちらは、セルフコーチングを学ぶための書籍です。良書ですので是非読んでみてください。
まとめ
自主トレはあくまでも手段であることを忘れてはいけません。
正しい方法で行う自主トレは、身体を良くし生活がしやすくなることは間違いありません。
生活がしやすくなるために、自主トレを取り入れていく。という視点で患者さんに勧めてみると良いのではないでしょうか。