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理学療法

理学・作業療法士が行う検査・測定の意義や目的について考察

投稿日:2016年8月26日 更新日:

理学療法士や作業療法士の実習生の人は、バイザーからこんなことを言われたことはないでしょうか?

「明日、患者さんのROM‐T(関節可動域検査)をしてもらうけど、その目的を考えて来て!」

そう言われた実習生は、教科書に書いてあることを暗記して、翌日バイザーにROM‐Tの目的を伝えますよね。

そして、バイザーから「それは、教科書レベルの話でしょ!」とか言われたりします。

これは、どこの実習先でも普通にされているやりとりだと思います。

確かに教科書に載っているはずなのに、なんで「それは違う!」みたいなことを言われてしまうのでしょうか?

今回は、理学療法士もしくは作業療法士が行う検査・測定の意義や目的について、こう考えてみたらどうかというのをお伝えしたいと思います。

 

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検査・測定は手段であることを知ろう

検査・測定というのは、何かの目的があって行われるものです。

例えば、検査の1つにレントゲン撮影がありますよね。

レントゲン撮影は何かを調べるための手段です。

「足が痛い」と来院してきた患者さんの、その痛みの原因を調べるためにレントゲン撮影が行われます。

レントゲン撮影(手段)は、骨が折れてないのかを調べることが目的となります。

つまり、目的→手段(検査・測定)の順番で考えるものです。

理学療法や作業療法の検査・測定も、本来は目的があって手段を選択するべきなのです。

ROM-Tの意義や目的について考察

先日、僕は実習生にお願いして、人工膝関節置換術をされた患者さんの膝の角度を測ってもらいました。

僕は、「何で膝の角度を測ってもらったと思う?」と実習生に質問しました。

第一声に実習生は「膝の角度を制限している因子を探るためです。」と言いました。

確かに、教科書にはROM-Tの目的のところにそう書いています。

僕は続けてこう聞いてみました。

「それでほんとに制限因子がわかると思いますか?」

実習生はしばらく考えてから「・・・わからないです・・・」と答えました。

文章だとイメージしづらいかもしれませんね。

その実習生は、一方の手で患者さんの膝を動かし、もう片方の手でゴニオメーターを操作しているのです。

そのような状態で皮膚や筋肉の突っ張り、エンドフィール(終末感)を感じることができるはずがないのです。

単純に手が足りません。

ほんとに制限因子を探ろうと思ったら、ゴニオメーターは横に置いて、両手でしっかりと皮膚や筋肉の突っ張りを感じたり、エンドフィールを感じる必要があります。

ROM-Tを実施する意義や目的は?

ROM-Tの目的は、今現在どのくらいの可動域を有しているのかを調べるために行われます。

何も難しく考える必要はないんです。

これから治療を展開していきますが、治療後再評価するために前回の検査値が活かされるのです。

つまり、自分が行った治療が正しかったのかを探る手助けになります。

 

ROM検査の意義・目的の詳しい解説)

脳卒中片麻痺の運動麻痺を知るために行う検査・測定は?

もし、実習生がこの記事を見ているとしたら、一緒に考えてみてほしいと思います。

どのような検査・測定が必要なのでしょうか?

脳卒中片麻痺の運動麻痺で知りたいこと(目的)

●運動麻痺があるのか

●運動麻痺があるすれば、どの程度なのか

●今後どのような経過を辿るのか

それらを知るため(目的)に、さまざまな検査・測定(手段)を駆使します。

まずは病理を理解しておくべき

病理とは、病気の原因・過程に関する理論的な根拠のことです。

脳卒中片麻痺の運動麻痺を考えるならば、運動麻痺が起こる機序を理解しておくことが大切です。

細かい内容を知ってることに越したことはないですが、より臨床で使える知識は持っておくべきです。

錐体路(皮質脊髄路)の経路を知っておこう

錐体路(皮質脊髄路)の経路は、

大脳前頭葉の中心前回(一次運動野) → 内包後脚 → 中脳大脳脚 → 橋 → 延髄錐体で交差 → 外測皮質脊髄路(脊髄側索を下行)と前皮質脊髄路 (脊髄前索を下行)に分かれた後、前角にニューロンを変えて末梢神経へと繋がります。

この経路のどこで障害が起きたとしても、運動麻痺が起きます。

片麻痺の運動麻痺を知ろうと思えば、錐体路の経路は必須の知識といえます。

急性期や回復期の病院に勤めている人であれは、画像所見は必ずあるはずです。

画像所見や医師の意見などを参考にして、運動麻痺が起きる可能性を探ります。

もし、画像所見から錐体路が障害されている可能性があるとすれば、運動麻痺が起きる根拠にもなりえます。

※注意:あくまでも根拠の一つとして捉え、他の神経学的検査や患者さんの症状などから総合的に運動麻痺の程度を判断していくべきです。

Brunnstrom  Recovery Stage Test(ブルンストロームテスト)

片麻痺運動機能検査の中で、よく行われるのがブルンストロームテストです。

このテストは何のために行うのでしょうか?

これもあまり難しく考える必要はなく、シンプルに今の上肢や下肢の運動機能を診るために行われるものです。

ブルンストロームテストは、StageⅠ~Ⅵまであるので、今どの段階なのかを判断するために検査します。

そして、今後どのような経過を辿るのかを知るためには、予後予測の知識が必要になります。

Brunnstrom  Recovery Stage Testの詳しい解説)

二木の予後予測を参考に

予後予測をする際、①機能障害、②ADL、③年齢の3つがポイントになります

①機能障害

下肢の回復を考えると、発症後2週間で47%、1ヵ月で72%、2ヵ月で86%、3ヵ月で94%、それ以降ではわずかに回復していくとされています。

②ADL

入院1ヵ月後にベッド上生活が自立すれば最終的には歩行が可能、入院2ヵ月後までにベッド上生活が自立すれば歩行は可能だが、ほとんどが屋内歩行にとどまるとされています。

③年齢

80歳以上:運動障害が重度なだけでそれ以外に重大な障害が無くても歩行自立は不能

70歳以上:発症時2・3桁の意識障害では、下肢Stage4以上でない限り歩行自立は困難

60歳代:運動障害が重度でも、それ以外に機能障害がなければ歩行自立

50歳代:重度運動障害 + 重度機能障害でも長時間のリハビリで歩行自立

二木の予後予測をすべて記載すると膨大な量になるので簡単に書きました。

ブルンストロームテストやADL評価で、現在どの程度の機能や能力なのかを知ることができれば、二木の予後予測を参考にすると未来の患者さんの姿が想像しやすくなります。

予後は年齢の影響を大きく受け、さらに運動麻痺以外にも他の機能障害があると能力の回復に差があることを知っておくと良いでしょう。

深部腱反射や病的反射の意義・目的

上位運動ニューロンの障害、つまり錐体路障害があると、深部腱反射は亢進、病的反射は陽性を示します。

特に運動麻痺が強い場合には、これらの所見が顕著に表れます。

逆に、ごく軽度の運動麻痺ではこれらの所見がみられず、正常の場合もあります。

深部腱反射や病的反射だけで、錐体路の障害が判断できるわけではありません。

特に脳卒中でない人でも、深部腱反射が亢進していることもあります。その場合は、左右差を比べれば良いです。

反射検査の詳しい解説)

 

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患者さんへの質問は1つに絞ること

検査・測定が上手くいかない原因に「質問の目的が明確でない」ことが挙げられます。

検査・測定の中でも、難しいものが感覚検査です。

実習生では、この感覚検査がどのように行えば良いのか非常に悩むと思います。

なぜ、難しいと感じてしまうのでしょうか?

その理由は、あれもこれも探ろうとしてしまうからです。

 

感覚検査の詳しい解説)

痛みの検査で考えてみよう

痛みの検査で聞くべきポイントには、以下の5つが挙げられます。

①痛む場所、②痛む時間、③程度、④質(鋭痛なのか鈍痛なのか)、⑤痛みの誘発動作など。

痛みを訴える患者さんには、どんな質問をしていますか?

「痛みがあるんですね。何をしてるときに、どこがどのように痛むのですか?」とあれもこれも聞こうとしていませんか?

このように聞かれた患者さんはどう答えるでしょうか。

痛みのことを質問されているのはわかるけど、具体的じゃないから患者さんはどう答えたらいいかわかりません。

よって、患者さんは「ここら辺が痛いんのよ。昨日歩きすぎたからかなぁ。先生に痛み止め頼んでるんです。」と、このように知りたい情報とは関係ない話をし出したりします。

これでは、上手く知りたい情報が得られないですよね。もしくはものすこく時間がかかってしまいます。

代表的な質問方法には、Closed Question(クローズド・クエスチョン)やOpen Question(オープン・クエスチョン)があります。

クローズド・クエスチョンとは、相手の考えや事実を明確にする場合に使われる質問方法です。

例えば「楽しかった?」などのように、「はい」や「いいえ」で答えやすいほうに質問する方法です。

つまり、クローズド・クエスチョンは事実を絞っいくときに活用されます。

「今日の気分はどう?」のように話を広げたい場合は、オープン・クエスチョンを活用します。

もし、知りたい情報が明確になっている場合は、クローズド・クエスチョンを活用したほうが良いです。

こう質問してみたらどうでしょうか?

「痛むのはどこですか?」と。

そうすれば、患者さんは痛みの場所だけ教えてくれますよね。

(安静もしくは歩行時などで)「今は痛みますか?」と。

患者さんは痛いのか、痛くないのか答えてくれます。

「いつ痛むのですか?」

このように質問を1つに絞れば、答えは1つで返ってきます。

1つの返答を求めるためには、こちらが何を聞きたいか(目的)を明確にしておかないといけません。

疼痛評価の詳しい解説)

まとめ

いくつか例を挙げて、理学・作業療法士が行う検査・測定の意義や目的を説明しました。

もし、僕が実習生に圧倒的に足りないものを1つ挙げるとするなら、それは病理の知識だと答えます。

検査・測定は手段であって、病気や症状の機序を調べるために行われるものです。

病理さえ理解していれば、何を知るべきなのかが見えてきます。

ただ、学生の間から病理を網羅するのは、僕の今までの経験上難しいと思いますね。よっぽどできる人だけだと思います。

今まで、教科書を丸暗記をしていた人はまずは病理を理解してみてください。

そこに検査・測定の意義や目的が隠れています。

 

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