てんかんは、突発的に起こることがあり、場合によっては意識消失により転倒に到るケースもあります。
実は、てんかんの約8割は適切な治療で治り、難治性のてんかんでも気をつけておくことを知っていればそれほど怖がる必要はないです。
今回は、てんかんの基礎知識から治療、対処方法までお伝えします。
是非、参考にしてください。
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てんかんとは
てんかんを簡単にいうと、突然脳が過剰な興奮状態になることで様々な症状を引き起こすことをいいます。
日本人の約1%にみられ、有病者数は約100万人といわれています。
てんかんの特徴は、
●慢性の脳疾患であること
●大脳の神経細胞に異常放電がみられること
●反復性の発作があること
が重要な条件となります。
てんかんの原因
てんかんの原因は、症候性と特発性に分けられます。
症候性てんかん
症候性とは、大脳に何らかの病変があるものをいいます。
頭部外傷、脳の先天性奇形、低酸素状態、脳腫瘍、脳卒中、脳炎などが挙げられます。
特発性てんかん
特発性とは、病変がはっきりしないものをいいます。
体質や遺伝的要素などが挙げられます。
症候性はてんかんの3割を占め、特発性は残りの7割といわれています。
てんかんの症状
てんかんにはいろいろな症状があります。
てんかんの発作は、大きく分けて部分発作と全般発作に分けられます。
異常な電気放電が、大脳の一部で起き始めたものを部分発作といい、大脳の全体で起き始めたものを全般発作といいます。
部分発作は全体の約8割であり、全般発作は残りの2割といわれています。
部分発作
部分発作は、焦点性発作ともいわれます。つまり、最初に異常放電が広がる部位を焦点といい、焦点がどこにあるかで現れる症状は変わります。
部分発作は、さらに単純部分発作と複雑部分発作に分かれます。
単純部分発作
運動発作、感覚発作、自律神経発作、精神発作などがあります。
例えば、運動発作では身体の一部分がピクピクと動くなどの症状がみられるように、脳の異常放電が起きた部位によって様々な症状がみられるようになります。
単純部分発作では、意識がはっきりしており本人も自覚があります。
複雑部分発作
単純部分発作から引き続いて、だんだん意識がなくなる発作のことをいいます。そのため、自分では気づかない行動をしてしまいます。
例えば、口をモグモグさせたり、目的なく歩き出したりします。
これらの部分発作があった後に、全身が痙攣(けいれん)する発作に移行することもあります(二次性全般化発作という)。
全般発作
全般発作は、異常放電が大脳の全体に広がるものをいいます。
特徴としては、本人の意識が消失していることです。
欠神発作、ミオクロニー発作、強直(間代)発作、脱力発作などがあります。
欠神発作では、意識消失後20~30秒後に意識が戻ることもあり子供に多くみられます。
ミオクロニー発作は、両手足が突然ピクンと反応し、少し遠くに飛ばされるほど力が入っていることもあります。
強直発作は、全身が痙攣(けいれん)したように突っ張った状態のことをいいます。また、間代とはガクガクと振るえるようは発作のことをいい、合わせて強直間代発作といいます。
脱力発作は、立っていたり座っていると、突然意識を失い倒れてしまう発作をいいます。転倒により、怪我をする恐れがあるため、保護帽などで頭部を守ることが大切です。
てんかんが疑われた場合は、何科にかかればいいの?
てんかんに関する診療科目はないので、神経内科または小さい子供であれば小児科に受診することが望ましいです。
てんかんに似た症状としては、熱性けいれん、失神、起立性低血圧、ナルコプレシー(睡眠障害の一種)、一過性脳虚血発作(脳梗塞の前兆)などがあります。
専門科でないと、てんかんとの区別をつけるのは難しい場合があるので、てんかんが疑われる場合は一度受診してみてください。
てんかん専門の医療機関(てんかんセンターなど)もありますので、難治性(治りにくい)のてんかんの場合はそちらを検討してみると良いでしょう。
日本てんかん学会が認定する専門医一覧
てんかんの治療
てんかんの治療としては、主に薬物療法、手術があります。また、ケトン療法といって低糖質・高脂質の食事が効果的な場合もあります。
てんかんは、薬で6割、手術を含めて8割は治るといわれています。
薬物療法
薬を服用して、症状が治まればそのまま継続するのが望ましい.
※薬物療法の注意点
症状が治まったからといって、自己判断で服薬量を減らしたり断薬しないことが大切です。
必ず、医師に相談するようにしてください。
また、眠気や湿疹などの副作用がみられる場合も同様に医師に相談するようにしましょう。
薬が合っていないのに、他の薬を増やすと症状を悪化させてしまう恐れがあります。
場合によってはセカンドオピニオン(他の医療機関や専門医を紹介してもらう)を検討しましょう。
手術
検査の結果、症状の焦点が確定している場合にその部位を切除します。
側頭葉、大脳皮質、脳梁、(大脳の)半球を切除する方法があります。
脳の一部を切除するので、例えば言語障害や運動麻痺などの後遺症が残る可能性もあります。
まずは、薬物療法で様子をみるのが望ましいのですが、難治性のてんかんの場合は手術を検討することも選択肢の一つです。
側頭葉や海馬は、難治性のてんかんに多くみられ、この手術で7~9割の発作は治まります。
脱力発作などの症状には、左右の脳を繋ぐ脳梁を切除することで、異常放電が脳全体に広がるのを抑えることができます。
半球離断術は、広範囲を切除するため後遺症を残すリスクがあります。ただ、低年齢の子供では健康な脳が切除部分を代償することもあります。
その他の方法としては、胸に電気刺激装置を埋め込むタイプもあります。
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発作がどのように起こるか観察しておく
てんかん発作があっても、受診時医師にうまく伝わらなければ、正確な診断・治療がしにくくなります。
てんかんの症状がみられた場合は、慌てず以下のことを観察しておきましょう。
安全を確保した上動画撮影なども有効な手段です。
●発作が起こった時間や状況
●発作を誘発するものはあったか
●前兆はあったか(例えば、いつも口をモグモグした後に発作が起きるなど)
●意識はあったか
●発作の経過(どこから発作がみられ、どのくらいの時間発作が継続し、どのように症状が治まったか)
●発作の後の様子はどうか(言語障害、運動麻痺などないか)
発作が起きたらどう対処すればいいの?
単純部分発作の場合は、意識がありますので症状を観察しておくだけで良いです。
複雑部分発作や全般発作の場合は、まずは転倒しないように十分注意してください。
頻繁に転倒している場合は、保護帽などで頭部を守ることが大切です。
本人の意識がない場合、無理に押さえつけたりすると、叩かれたりして怪我をする恐れがありますので一定の距離で見守るようにしてください。
その際、床にマットなどを敷いて転倒しても怪我をしないように備えておきます。
また、口をガクガクさせることもありますが、タオルなどを口の中に入れると窒息してしまう恐れがあります。横になり、息がし辛そうであれば顎を上に向け気道を確保することも必要です。
また、入浴中にてんかん発作が起きた場合は、先に湯船のお湯を抜き溺れないようにしてから助けるようにしてください。
てんかんがある場合に、日常生活で気をつけておくこと
てんかんは、睡眠不足やストレスなどでも発作が起こりやすくなります。睡眠の質を高めることやストレスを回避することも必要です。
睡眠の質を改善する方法)
慢性的な疲れの原因を改善する方法)
入浴では、てんかんを患っていると事故発生率が高くなります。発作が治まっていないときは、湯船は控えシャワーだけにしたり、入浴前に誰かに知らせておくなど対処しておくほうが良いです。
自動車運転は、事故の原因にもなりますので慎重に選択していただきたいと思います。
詳しくは「てんかんをもつ方の運転について」を参照してください。
運動に関しては、発作が治まり体調が戻っていれば特に制限はないですが、水泳や川・海遊びはなるべく控えたほうが良いかと思います。
読んでおきたい一冊
こちらの書籍は、一般向けに書かれているものですが専門職の人も理解しやすいと思います。
図を用いて説明しており、文章構成はとてもわかりやすく、内容もまとまっています。一読しておきたいお勧めの書籍です。
まとめ
今回は、てんかんについてまとめてお伝えしました。
てんかんは、突発的に起こり転倒の危険もありますが、そこさえ気をつけておけば、極端に恐れる心配はないです。
正しい知識と対処方法を知り、てんかんをもちながらも生活の質を高めることが何より大切なことです。
是非、参考にしてください。
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