人が動く中で、転倒しないためには、必ずバランス能力が求められます。
今回は、バランス能力とは何か?について解説していきます。
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「バランス」と「バランス能力」の定義
「バランス」と「バランス能力」という言葉を整理したいと思います。
バランスとは
姿勢や動作における見た目の安定性を表しています。
バランス能力とは
バランスを担う身体能力を表しています。
バランス能力は、運動制御に関わる神経・筋、骨関節機能に加え、実施している「課題」や「環境」も含みます。
バランスとバランス能力の関係を図で表すとこのようになります。
例えば、不安定板上で目を閉じて、片足立ちをしている際にふらついて転倒したとします。
この条件では、ほとんどの人がふらつきますよね。
そのときに観察された状況から、「バランス」が不安定といえます。
この条件下では、身体機能だけが転倒した要因というわけではなく、不安定板上といった「環境」と目を閉じていたという「課題」も転倒した大きな要因になります。
つまり、バランス能力を評価するには、身体機能だけでなく、「課題」や「環境」も評価しなければ、転倒を防ぐことは難しいといえます。
バランス能力を構成する要素と関連する症状・機能障害
以下の表では、バランス能力が低下する症状と機能障害についてまとめています。
ここでは、バランス能力の中の身体機能のみに着目しています。
バランス能力を構成する要素 | 関連する症状・機能障害 |
運動制御に関わる神経機構 | 中枢性・末梢性の運動麻痺
小脳性の運動失調 パーキンソニズム 不随意運動 |
感覚機能 | 視覚障害
体性感覚障害 前庭機能障害 |
認知機能 | 注意障害
認知障害 遂行機能障害 |
筋機能 | 筋力
筋持久力 筋の伸張性・粘弾性 |
骨・関節機能 | 全身のアライメント
関節可動域制限・変形 関節の適合性 荷重時痛・運動痛 |
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バランス能力は機能障害?能力低下?
理学療法士や作業療法士なら、バランス能力の低下は機能障害?能力低下?と悩むことがあると思います。
上で説明したことを踏まえると、バランス能力は機能障害ではなく、能力低下にあたります。
しかし、ただバランス能力の低下…とするのではありません。
例えば、バランス能力低下と一言に言っても座位ではバランスに問題なくても、立位でバランスを崩して転倒してしまう人もいます。
もしくは立位は安定しているけど歩行になるとバランスが不安定になることもあります。
つまり、身体機能だけに着目するではなく座位なのか立位なのかといった「課題」を考慮して考える必要があります。
また、座位といっても座面の柔らかさもバランス能力に影響します。固い座面なら安定しているけど、ソファーなど柔らかい座面では不安定になるなど、「環境」の影響も考慮しないといけません。
具体的には・・・
例えば、座位は全く問題ない人で、屋外歩行やトイレ動作にバランスを崩しやすい人がいたとします。
問題点は
屋外歩行のバランス能力低下
トイレ動作時の立位バランス能力低下
となります。
屋外という「環境」、トイレ動作や立位という「課題」もバランス能力に含まれます。
他にも、焦りなどの心理的要因もバランス能力に含まれます。
バランス能力を表す場合、身体機能以外も大切な要素だということです。
まとめ
バランス能力について簡単に説明しました。
転倒しないためには、バランス能力の向上は必須といえます。
バランス能力を向上させる場合、身体機能を向上させることができればあらゆる「課題」や「環境」にも柔軟に対応することができるようになります。
ただ、高齢になるにつれ身体機能の向上を目指すだけでは限界があります。
その場合、身体機能以外でもバランス能力をカバーすることが求められます。